美唄駅の跨線橋


美唄駅に初めて降り立ったのは昨年1月の3日のこと

21世紀があけて早々の北海道旅行の2日目

小樽、札幌をまわりその日の宿のある追分へ行く途中

室蘭本線に乗るため岩見沢へ行くが接続に時間があり

美唄まで行き折り返しても間に合うのでここ美唄にやってきた


折り返す列車を待つ時間を待合室で過ごす

かつて炭鉱で賑わった町の玄関だけあり歴史の重みというものを感じる

列車の到着時刻が近づいてきたのでゆっくりと腰をあげた

上りホームへは跨線橋を渡るのだがどうも何かが違う

改めて見ると階段部分の窓がどうも変なのだ

今まで跨線橋を注目して見たことがなかったので確証は持てないが

この窓のつけ方には違和感を覚えるのだ

なんだか不思議なものを見た

やってきた満員のオホーツクに乗り込んだあとも

その奇妙な興奮を感じていた



ふたたび美唄駅を訪れたのはその年の8月24日

ふたたびあの不思議な空間に出会うためにここへやってきた

時刻は午前五時、特急利尻を見送る

夏の終わりの北海道、太陽が朝日を浴びせかける

あの不思議な空間が目の前にぱっくりと口をあけていた

ふたたびこの不思議な空間に出会えたことに

この場所に変わらずにあったことに

少しの安堵とたまらない嬉しさを感じていた

興奮のままにシャッターを押しつづけた



  


湧き上がる興奮が収まるとすぐに気が付いた

二股の階段の片方が封鎖されていた

巨大な赤い鉄の骨組みが駅を跨ぎ

斜めの骨組みが封鎖された入り口の前に突き刺さっていた

それがなんであるかその時はわからなかった

ただ、あまりいい予感はしなかった

5時36分オホーツク10号が到着

ぼくは美唄駅を後にした

ふたたびこの異空間を味わえた喜びと

一抹の不安を感じながら





あれから半年が過ぎた

年も明けた1月の末

一つのニュースを耳にした

“美唄駅の新駅舎2月5日から供用開始”

あの一抹の不安は現実になった

この不思議な空間を生み出す跨線橋は

炭鉱の町の重みを残す駅舎と共に姿を消す







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