牛島達治展を訪ねました(98.11.23)

牛島君インタビュー 11月23日 渋谷「牛島達治展」にて

作品を語る牛島君

今回は、渋谷ゼクセルで開催中の牛島君の個展「水にまつわる埋もれた記憶から」を取材しました。
 ゲストインタビュアーとして平野先生(平野先生写真)に参加していただきました。同席者は、梶、広瀬、栗山です。

開催要領は下記のとおりです。

 ゼクセル社のホームページにも牛島達治展の案内が掲載されています。ゼクセルビルは、六本木通り沿いで渋谷駅から歩いてすぐです。

 会場の様子は、日本経済新聞98年11月17日夕刊に掲載された「機械がアートに大変身」から引用します。(写真は広瀬君撮影)

 牛島達治さん(40)も様々な機械を駆使した表現で知られる美術作家。「メカが大好きな工作少年だった」というように、作品は手が込んでいる。東京・渋谷のZOOMで個展(来年1月27日まで)を開いているが、新作もビデオのような今風の素材を組み合わせながらも、これまた機械仕掛けが絶妙だ。
 大きさの異なる七つの車輪(車輪の写真1車輪の写真2車輪の写真3)が、アームと連結して床を回転している。車輪には小型のビデオカメラ(ビデオカメラの写真)が装着され、中心軸の上に取り付けられたモニター(モニターの写真)にその映像が映る。車輪の直径はまちまちだから、当然映像も違う。「車輪は人間の象徴」(牛島さん)で、個性の違いを浮き彫りにしている。
 また、興味深いことに、会場中央にあるやぐら状の建物(階段の写真)に上がると、車輪は止まり、下りると再び動き出す。まるで下界はあくせくとした日常を、建物の上は反対に日常から離れた静かな世界を物語っているように思える。牛島さんにとって「機械はなじみの深い素材だし、しかも人間と文明のかかわりをテーマとするうえで格好の素材」なのだ。

 牛島君自身のコメントを入手しましたので、全文を掲載します。

牛島達治展 水にまつわる埋もれた記憶から
 私の表現活動は、私自身の内面を見つめることを通して、人と文明を考察して行くことに始終しています。それは、一つの点としての自分と、その廻りにある様々な事物との距離や方角を検証することと言い換えることができます。そして、その検証の為に様々な方法を用います。石や土や風といった自然の要素と自ら制作する装置が、対峙したり時に協調したりといった関係で展開しています。
 今回は水とその物性を一つのキーワードとして構成しました。作品の装置一つ一つは、それぞれに役割を持たせてあります。たとえば、車輪の装置一つ一つは、人とその生活のイメージを投影したものです。また、階段状の装置と水は、文明を成り立たせている原理の存在を意味します。
 車輪の装置のモニターは顔であり、常に人を求めて旋回しています。そして個々のモニターの動き方には、個性がつけられてあり、車輪に取り付けられたビデオカメラからの映像を他者からは理解しがたいその内面として、表出しています。車輪は、モニターの取り付けてあるコラムを中心にして床面をゆっくりと旋回していて装置(=人)の時間の流れを意味しています。一方車輪の大きさやそれを支持するアームの長さは、動物的な意味合いのテリトリーとして位置付けてあります。
 会場中央にある階段状の構造物は、水の為の装置としてそこにあります。この構造物の階段を昇った踊り場の中央には、垂直にパイプが固定してあり、そこからパイプの中を覗き込むことができるようになっています。パイプの下には、水のはいったタンクがあり、水がタンクの中に滴下するのがパイプの中を覗き込むことによって直接見ることができます。タンクは、少し離れた所にあるシリンダーとチューブで通底されています。水はそこからもう一度滴下して、今度は冷却装置(冷却装置の写真)によって冷やされ凍ります。そして溶けた水は、ポンプによって構造物の縦パイプへと戻って行き、パイプの内側からタンクの中へと再び滴下するという循環をします。
 鑑賞者が、この構造物に昇ることによってこの水の為の装置と、車輪の装置とが結びつきます。すべての車輪の装置は、動きを停め、モニターもタンクの中に水がしたたり落ちる様子を捉えるリアルタイムの映像に切り替わります。これは、日常的には意識することなく埋もれている共有の記憶を呼び覚ました瞬間をイメージしています。その物性をとおして原理の一つとしての自ら鑑賞者(体験者)一人一人がこの空間で、固有のあるいは、普遍的な記憶、どこかに置き忘れたような記憶ともう一度出会っていただけたらと思います。また、そこから一人一人が何等かの「問い」を持っていただけたらと思います。牛島達治

平野先生、牛島君、スタッフ  この後、平野先生、牛島君、スタッフ一同で近くの喫茶店で話をしました。
牛島君の作品は、個展・グループ展だけでなく既にパブリックアートとして下記の場所に常時展示してあります。

 一つの作品を作るのに最低でも3年、長いものは10年かかるそうです。現在は、新潟県十日町市で作品を作る準備をしています。


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