牛島達治ーぬけてゆくこと展

2006年10月7日、東京茅場町「GALLERY MAKI」にて開催中(10/14(土)まで)の牛島くんの個展を取材に行きました。

 前日の大嵐がウソのように晴れ渡った10/7(土)の昼下がり、地下鉄茅場町駅を降り立つと微かに香る潮の匂いがここは海に
近い地なのだとビルの谷間から早くもメッセージを送られてきたようです。
永代通りをまっすぐ歩いて行くと会場である「GALLERY MAKI」は永代橋のふもとに建つマンションの4階でした。

 
永代橋 フローリングにすべて真っ白に塗られた壁、そしてここを会場にしたポイントは
なんといってもこの景色!でしょう。
なぜなら、この部屋のベランダからは永代橋がかかる隅田川が
眼下に広がり、
おりしも前日の雨で増水した川はあふれんばかりに
満面の水を湛えていて普段しょぼい川しか見ていない私たちには、
ちょっとした観光地に来たくらいの感動を与えてくれます。
この雄大な景色から牛島くんはインスピレーションを受けたようです。

 

ベランダから左方向を望むと永代橋が・・・
船も行き来をしている。

右方向の眺望
画面左上には水門が見える
右手眺望
 
橋の装置全容

この辺り一体は大震災で多くの橋が落橋し、その後の震災復興事業で、
次々と丈夫で優美な形の橋に架け替えられました。こうして生まれた、
この街のランドマークというべき数々の橋の中で、牛島君がひとめぼれ
したのが【豊海橋】
この橋を彼なりに表現したのがこちら。


これが日本橋川にかかる【豊海橋】
この橋の模型がふらりふらりと
不思議な動きをします。

さて、これがどのようにして動くのでしょう?
そのしくみをお尋ねしてみると・・・

豊海橋模型

ベランダに取り付けられたプロペラから工業用PCにパルスが送られ
そこで収集されたデータが橋に送られ、このような動きをする。
彼曰く、【なさけない動き】!?
うん、確かに情けない動き、規則があるわけでもなく、ゆらゆらと風に
なびくススキのようでもあり、
機械で制御されたようなぎごちない動きをする時もある。
私は、自然や記憶にある原風景がプロペラの動き、そこから送られた信号を
PCという彼の仮の姿の中に取り込み、彼自身の個性が電子という形になって
橋の模型が動かされ表現されている?、そんな印象をうけたのですが。。。

工業用コンピュータ
工業用コンピュータ

4本のプロペラ
4本のプロペラ

吹いてくる風により、それぞれに回るプロペラ
その動きが信号としてPCに送られる。

   

その情けない動きを作り出す元がこの部分、電磁石で動くモーター
そういえば、そんなのを理科の実験でやりましたよね。
3方を壁から繋いでいるこのコードは、なんとバドミントンのガット!
程よい弾力が、ビミョウな動きの効果をさらに上げている


モーター

電磁石

そして次はまた趣きのまったく異なった作品。
ガラス管とチューブ(点滴に使われるようなやつ)
そして黄色の顔料を溶かした水が400ワットのヒータで沸騰され、このチューブを伝って循環していく装置。
これは彼の中の理性的なものを表したものだと言う。
ガラス管下部
黄色い顔料が所々に溜まっている
ガラス管上部
ヒーター

この部分に小さなヒーターが取り付けられていて
ポコポコ沸騰している様子が見てわかる。
そこで、質問コーナー

Q:どうして顔料の色は黄色なの?

A:自分の記憶の色が黄色って感じだったから

Q:途中でまったく色が付いていない箇所があるのは狙いどおりなの?

A: 作ってから実際、どういう展開になるのか
予想がつかなかったけれど
これはこれで自分の脳の中でいろんな記憶が
滞っていたりざわめいていたり、立ち止まっていたり
ということ等があるわけで黄色の顔料が溜まっていたり、
少しづつ動いていたりしているのが
まさに自分の理性的な部分の記憶、として表現できていると思う。

 
 

最後にかわいらしい作品を拝見。
『シャリリン』という名前がついていました。
まるでリスの運動器具みたいな形でクルクルと回り、中に入っている
玉がシャリリ〜ンときれいな音を奏でます。
材料は水道の配管材だったりするのですが、
渋めの金メッキされたネジが
アクセントとなってビジュアル的にも美しいオブジェ。
呼び鈴として使えたりするかも。
これはずいぶん売れたそうです!
打ちっぱなしのコンクリート造りのおうちなんかに
似合いそう〜

シャリリン
シャリリン

*この日、先客に牛島君の教え子のカップルが訪れていました。というのも、
牛島君はなんと、「武蔵野美術大学と明星大学」の講師なんです!
以前に見せてもらった作品からはずいぶんと雰囲気が優しくなって、これはもしや彼の心に何か変化が起きたのかしらん?
と質問を投げかけてみると・・・
武蔵美の先生になってはいても、学生たちとは同じ目線、気持ちでいたつもりなんだけど、どうも彼らに言わせると友達には
ムリがあるらしい。
そうなってくると、恋愛ではなく、父性愛にも似た感情が最近沸き起こっているのだとか。
そうですよねぇ〜どうみても親子くらいの隔たりがあるものねww


☆この日の夜、ギャラリーのベランダからは、このような美しい夜景が!☆
後日送ってくれた、牛島君撮影の写真から

「先日、来ていただいた後、6時前後からさらに水かさが増して、屋形船は、しばらく通過出来ずに往生するし、
満月が対岸の屋上から昇り始めるしで、
ダイナミック、ドラマチックな展望を楽しみました。」By牛島君

今後もアーティスト牛島氏がどんな作品を見せてくれるのか?ますます彼の活動に目が離せませんね。
 

 

 




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