アルゼンチン駐在報告(第3便:完結編)

アルゼンチンでの生活を振り返って

ペリト・モレノ大氷河1  11中48年度卒の同窓生の皆様、お元気ですか?
 「5年の覚悟」のアルゼンチン駐在でしたが、急に帰国する事となり、今年(2000年)1月4日真夏のアルゼンチンから真冬の日本へ慌ただしく帰ってきました。
 駐在も2年目に入り、あちらでの生活にもすっかり慣れ、楽しんでいたところだったので、帰国が決まった時は、家族皆「えー!!まだ帰りたくない!!」と口を揃えて言ってしまいました。特に子供達はせっかく仲良くなったお友達と別れねばならず、また淋しい思いをしなくてはなりませんでした。
 アルゼンチンは駐在員の数も少なく、その分つながりも親密だったので、別れが大変つらかったようです。でも日本のお友達は皆いつか必ず日本に帰るのだから、と話し、日本での再会を約束してアルゼンチンを後にしました。(写真はクリックすると大画面になります)

ペリト・モレノ大氷河2  急に帰国する事になってしまった私達ですが、アルゼンチンの二大観光スポット(一つはイグアスの滝)の一つ、ペリト・モレノ大氷河には是非行きたいと思っていたので、急いで旅行会社に予約をし、行ってくることができました。
 ブエノスアイレスからリオガジェコスというところまで飛行機で約2時間半、その後カラファテという小さな町を経由し、延々パンパという大平原をバスで走ること約5時間・・・という所にその大氷河はありました。
 高さ60〜100メートル、幅5km位だそうですが、実際その氷河を目のあたりにし、そのスケールの大きさに、ただただ驚くばかりでした。
 シーンと静まりかえった中で、時々その氷河の一角が崩れ落ちます。氷河全体がとてつもなく大きいので、崩れ落ちるその氷の一角は小さく見えるのですが、実際には30階建てビルと同じ規模の氷のかけらだそうです。
 それがドドーンとお腹に響く雷にも似た轟音と共に崩れていくのを数回見ることができました。イグアスの滝を見た時同様、大自然に息を呑み、とてもとても感動しました。

 ・ペリト・モレノ大氷河3:大きさもさることながら氷の青さがとても感動的でした。

アルゼンチン・タンゴの夕べ  アルゼンチンは広く、大きな国、大自然のある国です。そしてタンゴというすばらしい文化も持っている国です。
 今、日本でもタンゴはブームになっている様ですね。本場アルゼンチンでは観光客用のタンゴショーから地元の人で賑わう劇場まで毎晩たくさんのタンゴショーが繰り広げられていました。時間はだいたいのところが夜の10時から夜中の0時過ぎまで。時間が遅いので、主婦はなかなか見に行きにくかったのですが、それでも7〜8回は行ったでしょうか。ワインを飲みながらタンゴの踊りや演奏を堪能します。一流ダンサーの足さばきはいつ見てもすばらしく、釘付けになってしまいます。
 また踊りだけでなく、演奏も私は大好きで、特にバンドネオンの音色が好きでした。バンドネオンという楽器は左右にたくさんのボタンがあるのですが、それらの配列はバラバラ。引くときと押すときでその音色も違う、という超難しい楽器だそうで、奏者の手元にこれもまた釘付けとなってしまいます。

 ・写真はタンゴショー:食事をしながら踊りと演奏を楽しみます。

 アルゼンチンに住んで良かったと思うことの一つに、戦前からアルゼンチンに移住していた日系人たちの存在を知ることができた、という事もあります。
 ブラジルには日本からの移民が大勢いる事はよく知られていますが、アルゼンチンにもたくさんの日本人の方々が移住しています。
 街中に住んでいる日系人はクリーニング店、米や日本食の配達、郊外に住んでいる日系人は野菜や花の栽培を営んでいる方が多いのですが、仕事が丁寧で真面目という事で、現地でもとても評判が良かったです。日系人の方の作る日本の野菜、大根、なす、きゅうりなどとても新鮮でおいしく、食生活の上で本当に助かりました。
 またブエノスアイレス市内で売られている花の大部分は日系人の方が作るものだったようです。私たち駐在員にも皆親切で、スペイン語を教えて下さったり、一緒にテニスやゴルフを楽しんだり、と交流がありました。

 初めてアルゼンチンに移住してきた日本人達、言葉もわからず、日本からはてしなく遠い国で、どんなに心細く、つらかったろうと思います。アルゼンチンに根づきながら、二世、三世へといつまでも日本の言葉、文化も忘れずに受け継いでいって欲しい・・・そういう願いから日亜学院という日本語とスペイン語のバイリンガルの学校も設立され、そこで多くの子供達が学んでいました。

犬の散歩  アルゼンチンは確かに日本に比べて治安も悪く、特に交通マナーの悪さには驚かされる事も多かったのですが、日本にはない様々なものを見たり、聞いたり、体験することができ、本当によかったと思っています。
 当時は大変だ、嫌だと思っていた多くの事も、帰国した今となっては楽しい思い出となるから不思議なものです。
 今はまだ急に現実に引き戻されたような気持ちで、完全に日本のペースになれないでいますが、1年9か月のアルゼンチンでの生活をいつまでも忘れることなく、これからの日本での生活もまた楽しんでいこうと思います。

 2001年(?)の次回同窓会には出席できそうです。

 ・写真はよその犬を預かり散歩させる「犬の散歩屋」というアルバイトです。多い人は10匹以上の犬をひとりで引き連れています。あの犬が一気に走り出したらどうするんだろうといつも思っていました。
 ・犬の送迎バス:Dog's Busという犬専用のスクールバスです。人間の子供のスクールバス同様、朝家まで迎えに来て、夕方送り届けます。

  2000年2月    野口みや子


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