登場人物(注意:さくらと一郎は実在の人物ではありません)
さくら----目黒区緑が丘出身。11中を卒業後、何をしていたかはよく判らないが、ステキなだんな様と巡り合い、カワイイ二人の子供達に囲まれて幸せな日々をおくる。
一郎----目黒区自由が丘出身。11中を卒業後、自分を磨くため職を転々とし、22歳からは遠洋マグロ漁船の乗組員として世界の海でマグロを追う。生活のほとんどを船の上で過ごすこと15年。その後、手にした資金を元手に事業を起こし、今は目黒に住む。
物語(注意:さくらと一郎はフィクションですが、同窓生との話はノンフィクションです)
さくらの自宅
さくらの長女は今年、中学に上がった。横須賀の中学校は給食がない。毎朝のお弁当作りもすっかり慣れた今日この頃である。
家族みんなを送り出した後の日課はE-mailチェック!メール友達が増えている。
今日もメールが来ていた。
さくら「きょんちゃんからだ!」
「なになに?え!行く〜!じぇ〜ったい・・行く!」
なにやらすっかりソワサワした様子のさくら。
一郎の携帯に電話をすることに。
さくら「もしもし、一郎さん?さくらです」
一郎「はい、さくらさん。おはよう」
さくら「あのね、きょんちゃんを憶えている?」
一郎「キョン?八丈島の?・・・?ハテ?」
さくら「菱田さんよ。わからない?」
一郎「11中の菱田さん・・・思い出したよ。あの可愛い子だね」
さくら「一郎さんは可愛い女性だと憶えているのね・・・そう、それでね、その菱田さんがお店でシャンソンを歌うんですって!一緒に行きましょうよ!」
そんなわけで二人が待ち合わせたのは西荻窪の南口駅前。
一郎「菱田さんはいつからシャンソン歌手になったんだい?」
さくら「実は今日がデビューなんですって」
一郎「そうなんですか。菱田さん今頃きっと緊張しているだろうね」
さくら「私もなんだかドキドキしてきちゃった」
などと話している間にお店に到着。ライブハウス「奇聞屋」(きぶんや)は駅から近い。
南口商店街に入ってすぐの左手だ。
さくら「ところで一郎さん。髪を染めたの?金髪だけど」
一郎「今日のためにオシャレしてみました」
さくら「ふ〜ん。シャンソンとパンクを取り違えていませんか?」
一郎「ヘンですか・・・・」
二人は階段を降りて店に入る。
菱田「いらっしゃい!さくら。あ、一郎さんも久しぶりです」
さくら「きょんちゃん おめでとう!!」
一郎「やぁ どうもです」
菱田「お二人とも遠いところまで、ようこそおいでくださいました。どうもありがとう」
一郎「いえいえ、今夜のステージがデビューなんですって?」
菱田「そうなの。緊張してるのが判る?」
一郎「いや 落ち着いて見えるよ 大丈夫だね」
さくら「うん、とっても素敵」
お店には次々のお客さんが入ってくる。あまり話は出来ない。
菱田「お構いできなくてごめんね。今日はゆっくりしてらしてくださいね」
テーブルに案内されて席に着いた二人。菱田さんはお客様の出迎えに忙しそう。
こぢんまりした店内。正面のステージにはピアノがある。
飲み物とお料理を注文して開演を待つことに。
さくら「まぁ!このロールキャベツとても美味しい!」
一郎「ええ、ピザもなかなかいけますよ」
「奇聞屋」の料理はどれも美味しい。
一郎「菱田さんはいつ頃からシャンソンを始めたんだい?」
さくら「きょんちゃんは学生の時にシャンソンのクラブに入っていたって聞いたことがあるわ。でも、その後しばらく歌からは離れていたんですって」
一郎「ふ〜ん。それで?」
さくら「30代になってからフランス語の勉強を始めて、やがて大好きなフランスに幾度となく通うようになって、向こうで本場の舞台を聴いたり、もちろん日本でのライブにも行くようになったのね。そんな中で眠っていたシャンソンへの想いが再び目を覚ましたんですって。本格的なレッスンを受けるようになったのはつい半年前からだそうよ」
一郎「それじゃやっぱりフランス語で歌うのかな?」
さくら「きっとそうよ」
一郎「そうですか、それは楽しみだ。でも歌詞がまるきり解らないだろうな」
さくら「大丈夫よ、心の耳で聴きましょう」
一郎「おっと、お姉さん!バーボンおかわりね!」
さくら「・・・・・」
いつの間にか店内は満席。ステージの時間だ。
オープニングの服部智代子さんによる一曲のあと、いよいよ菱田さんが登場。お客様から大きな拍手で迎えられる菱田さん。 マイクを持ち、ゆっくりと客席に語りかける。一曲づつ歌う前に曲の紹介をしてくれる。 一郎:「う〜ん、カッコいい。彼女には華があるね」 さくら:「そうね、素敵ね。きっと緊張しているに違いないのでしょうけど、それがかえって稟として落ち着いた様に見える」 | ||
第一部の曲 1.想い出の瞳 (Et pourtant) シャルル・アズナブールのナンバー 映画、「アイドルを探せ」のなかで アズナブールが歌った曲 2.もう森へなんか行かない (Ma jeunesse fout le camp) フランソワーズ・アルディのヒット曲 日本でもおなじみ | ||
曲のイメージによって、時に明るく、時に妖艶に歌い上げる菱田さん。 さくら:「きょんちゃん、知的で官能的な女性という雰囲気。わたし、今の二曲目がとても好き」 一郎:「ピアノの伴奏が菱田さんの歌を盛り上げてくれているね」 | ||
第二部の曲 1.小さなカンタータ (Une petite cantate) 作詞・作曲・歌 バルバラ 友人だった女性ピアニストが亡くなり 彼女に捧げる歌として バルバラが作った曲 2.バンクーバー (Vancouver) 作詞・作曲・歌 ヴェロニク・サンソン | ||
この夜、4曲を披露してくれた菱田さん。 ラストのナンバー「バンクーバー」では、ピアノの吉川正夫さんがコーラスをつけてくださり、店内を盛り上げました。 吉川さんは菱田さんのレッスンの先生でいらっしゃるそうです。 一郎:「ピアノの方が先生なんですか?」 さくら:「そうよ、その先生がフランス語でコーラスを入れてくれるのは珍しいことなんですって」 一郎:「レッスンはいつもどこでしているのかな?」 さくら:「このお店の営業時間外にするそうよ。仕事を終えてからここまで来てレッスンするのって、パワーが必要よね」 一郎:「そうだね、頑張っているんだ、菱田さん」 |
第十三話に続く・・(はず)
シリーズ<さくらと一郎の「遊びに行こう!」>では、さくらさんと一郎さんが皆様をお訪ねします。どうぞよろしく。
さくら役は芹沢啓子(A組)・一郎役は梶誠一郎(A組)でした。