『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』The Lord of the Rings - The Return of the King-
ネタバレ感想
オープニングがデアゴルとスメアゴルのシーンから始まるのには意表をつかれました。指輪のために殺人を冒してしまったスメアゴルの罪と、ゴラムに成るまでの経緯、そして結果としての贖罪という対比のために、あえて時間をかけて描いたのでしょうね。(なまずをかじるシーンが気色悪いので、何か食べながら観るのはやめた方がいいです(^^;。)
サルマンのシーンがすべてカットされてしまったのはちょっとさみしいですね。(SEEには入ると聞いていますが。)そんなわけで水の中にあるのをピピンがみつけるパランティアの登場が唐突です。ピピンがパランティアをのぞくシーンはありますが、アラゴルンがパランティアを通してサウロンと対決するシーンがSEEにあるかどうかは微妙。
デネソールの描き方が浅いのは不満。彼は彼なりにゴンドールという国を背負った確固たるものをもったキャラだったはずですが、なんか自己保身のあげくの狂人、という印象に落ちてしまっている気がします。しかも、緊急時とはいえ、結果としてデネソールを死に追いやる最後の一振りをガンダルフが下す、というのはいかんです。「死人に生を与えることはできない」と言ったガンダルフはどこに行ってしまったんですか(涙)。
デネソールに死んでこいと言われたが同然のファラミア率いるゴンドール軍のオスギリアスへの攻撃のシーンは、デネソールの側に控えるピピンが歌うレクイエムのような歌声とかぶるんですが、ずばり泣けます。
段々づくりの巨大な都市、ミナス・ティリスの遠景はよかったんですが、まるでヘリポートのような最上層がなんだかイメージと違います。廟所の位置もよくわからないし。何より、ヘルム峡谷と同じ場所にセットを作りました、とばらしてしまっているので、構図のイメージがだぶってしまって嫌だったりします。オスギリアスがあんなに近くに見えるのは、間に障害物がないから、ということでいいのかなあ。
セオデン王は非常にかっこいいです。さすが一国の王です。戦い前に、槍を剣で叩きながら兵を鼓舞するシーンがすごくいいです。
観る前からわかってはいたのですが、ハルバラドが登場しない! ということは北方の野伏も一人もでてこないわけで、これじゃアラゴルンはまるでこれまで一人で生きてきたみたいじゃないですか。だから、死者の道に行くのもアラゴルン、レゴラス、ギムリの三人だけ。船(旗がない!)から降り立つのも三人だけ、という変てこりんなシチエーションになっているわけです。
死者召還のシーンはまあアラゴルンがかっこいいから許すとして、その後のアラゴルンたちの軌跡がよくわからないんですわ。ナルシルの剣をもってきたエルロンドが大河アンドゥインを南からミナステリスに向かう船団について話しますが、死者の道の後、その船とどこで遭遇しているのか(ペラルギアの戦いはなかったのか?)、馬もなしでどうやってそこまで行ったのか、船はどうやって動かしたのか、等々謎です(^^;。しかも、大きなお船の艦隊だったはずが・・・うーむ。
レゴラスがジュウを倒すシーンは笑えます。そうまでして見せ場を作らなくても…と思ってしまったりもしますが、まあ観客も期待しているし、喜んでたし、ピーター・ジャクソン版ヒーロー・レゴラスということでよろしいのでは(笑)。
アラゴルンの見せ場は今回もたくさんあって、途中胸が高鳴ってどうしようかと思ってしまうくらいですが(爆)。何が素晴らしいかといえば、王にふさわしい資質、高潔さ、誠実さ、行動力、彼に付いて行こうとする者に、彼のためなら死んでもいい、と思わせるアラゴルンという人物像をヴィゴ・モーテンセンが見事に演じ切った所ではないでしょうか。彼無くして、この映画の成功はあり得なかったと思います(断言)。今回、ここだけは見逃すな、というシーンを一つだけあげるとすれば、黒門の前でサウロンに呼び掛けられたアラゴルンが、自軍を振り返って、"For Frodo!"と言って突撃するシーンですね。わたしにとっては、このシーンのためだけにこの映画がある、といっても過言ではないかも。(蛇足ですが、ヴィゴは雑誌"EMPIRE"のインタビューで、アラゴルンというキャラクターを象徴する決定的瞬間として裂け谷の会議でフロドに"If by my life or death I can protect you, I will"というシーンと、この"For Frodo!"のシーンをあげています。)
黒門のシーンはおそらくSEEではサウロンの口とのやりとりが入るのではないかと思います。甲冑と剣と馬の写真(デッサンではなく製作物)が武器本("The Lord of the Rings Weapons and Warfare")に載ってますし。少なくとも、馬にのっていたアラゴルンたちが馬からおりるシーンがないとすごく変(^^;。
何が許せないといって、王冠のデザインだけは絶対に許せません! あの日輪のような冠のおかげで、戴冠式が台無しだわ〜(号泣)。まあ、戴冠式のシーンは、他にも色々と不満が多いんですが(笑)、それにしても、あの冠は最悪。戴冠式のシーン丸々カットでも一向に構わなかった気が。
フロド・サムルートについては、二人とも(もちろんゴラムも)非常に良い演技をしていましたが、かなり細切れになっていて、最後の方はもうちょっとまとめて長くシーンを作った方がよかった気がします。時間がないのはわかるのだけれど、あっという間に火の山に着いてしまったような印象で、途中の絶望的な長い道のりを観客も一緒に旅しているという感覚がわいてこないのです。SEEには入るであろう、オーク軍と一緒に走らされたり、オークの服を脱ぎ捨てるシーン等々がないですし。ダメダメなのは、サウロンの目がサーチライトになってしまっている所。確かに映像的にわかりやすいかもしれないけれど、卑近すぎてしまい、途端に作り物めいて見えます。
火の山以降ラストに向けてはゆるやかな収束とみるか、失速とみるかは人に寄るかもしれませんが。わたしは最後に泣かせてくれることを期待していたので、灰色港のシーンで泣けなかったのがつらかったです。なぜだろう? 原作のようにメリーとピピンが後から追ってくるほうがよかったのではないだろうか。しかも、彼らが立ち去るのが早過ぎます。立ちすくんで見送るっていう感慨がほしかったなあ。あと、港のイメージはもっと開けた水平線をイメージしていました。(原作の挿し絵のせい?)
と、映画の流れにそって、まとまりなく感想を連ねてきましたが、つい不満の方が多くなってしまったような。戦闘シーンの迫力始め、感動したシーンっていうのは、ここに書かなくても誰もが感銘を受けるはずなので、いいかなと(^^;。誤解ないように書いておくと、ネタばれなし編に書いた通り、総じての評価は不満より感動&感謝の方が大きいのです。原作ファンの不満を全て解決するのは不可能だし、少なくとも「王の帰還1・2」とかにしない限り無理なことも多々ありますし。たくさんの制約の中で、よくぞここまで作り上げてくれました。本当に感謝です。言わずもがなですが、大スクリーンで観るべき映画です。
途中SEEという単語が何度もでてきてしまうのがSEEの功罪ですね。明らかに、ここにシーンが入るはず、というのが観ていてわかってしまうわけで、一つの映像として公開版では完結した気がしないのです。トレイラー始め、事前に流れたシーンで結果としてSEE送りになったものも多いですし。そのため、どうも「これで完結、さようなら」という境地には至れず、早くもSEEを待ち望む、という感覚の方が強いのです(^^;。というわけで、まだまだ、指輪熱にピリオドは打てませんねえ。。。(もちろん日本公開になったら劇場に通います!)