田舎の夜更け


電灯もない 何もない
植えたばかりの田んぼの
にごった水の中に
月と星の光が降り注ぐ

家の灯りが
浮いては沈み
沈んではまた浮いている

真っ暗闇の中では
蛙たちの歌声が
さざなみのように わさわさと
切れ間なく聞こえてくる

そこだけが青白く
何故がとても神聖で
厳かささえも感じる

私はふっと足を留め
線香花火のような
短い初夏の夜を
楽しんでいた