ワールド2(その2)
<旅立ちの日>
それじゃあ、もうすぐ旅に出かけるから
ちょっとその前に簡単に旅の説明をしておこう。
この旅は10〜14才の間に行かなくちゃいけないもので、
まず山へ行って迷わないようにして山の向こうの湖まで行く。
そこからボートで向こう岸まで行く。
すると町が見える。
そこで夕ごはんの食料や飲み物などを買う。
最後は歩きだろうが電車だろうが何でもいいから帰る。
夕食はその間かかって食べる
そして夜、村に帰ってくるというわけだ。
旅と言うには短いがこれでも結構大変だ。
とうとう10時になった。
ゴーンという鐘が鳴り、村の人たちも山のふもとまでやって来た。
誰かが運命の旅に出かける時は
村の人たちが総出で見送りに来てくれるのだ。
「行ってきます。」
僕はそう言うとと目の前にそびえたつ山に向かって歩き始めた。
山の中に入るにつれてみんなの声も小さくなっていった。
今では風のサワサワという音と鳥の鳴き声と
どこかで水の音が聞こえるだけだった。
さらに山の奥に入って行くと分かれ道に出た。
そこで僕らは木の上でのんびりひなたぼっこをしている子リスに聞いた。
「ウェイ、シー、ドーヨウジャイ?
(右と左、どっちに行けば頂上に行けるんだい?)」
するとその子リスは
「ウェイニフィー、ス
(右に2時間くらい歩くと行けるよ。)」
と言った。
僕はその子リスにお礼を言って右に曲がった。
そして2時間歩いたが頂上はいっこうに見えてこない。
実はスパッシュたちは途中でわき道にそれてしまったのだった。
そうとも知らないスパッシュたちは
てくてくと頂上目指して歩き続けていた。
だんだん薄暗くなり、辺りは無気味なほど静まりかえっていた。
この辺には動物が一匹もいないようだった。
だけど僕とシロは頂上目指して歩き続けた。
もう3時間もたったような気がした。
「ワアー。」
足の下の地面が突然、スポっと抜けてシロとともにまっさかさまに落っこちた。
「シロ。だいじょうぶか?。」
ぼくはシロの体を心配そうに見ながら聞いた。
「クーン。」
そこは広場みたいになっていてその壁には道が5つもあった。
ぼくらはリュックサックから懐中電灯を取り出して
こわごわそのトンネルの一つに入って行った。
トンネルには分かれ道がいくつもあった。
だけで当てになるものは何もないので、
その度にぼくとシロの勘を頼りに進んだ。
でもこも迷路のような洞くつは出口がなかなか見つからない。
ぼくは自分自身をげんきづけようとシロに
「シロ。早くこの洞くつから抜け出せるといいね。」
と話しかけた。
だがシロは何か落ち着きがない。
おまけに「ウー。」とまで言いだした。
「シロ。どうしたんだ。」
だがシロのうなり声は止まない。
その時、僕にも聞こえた。
その身を震わせるような大声で
それでいてどこか悲しそうな猛獣のうなり声を。
その声を聞いて足がすくんでしまったぼくをよそに
シロはその声に向かって走って行った。
ぼくは勇気をふりしぼり、決心してシロの後を追いかけて行った。
とうとうそいつが見えた。
それは闇のように黒く、象のように大きかった。
もう少し近づいて見ると翼まであった。
しかも金色!。
それは竜だった。
傷だらけで翼は曲がってしまっていた。
その竜は弱々しい声で言った。
「お願い。ぼくを助けて。」
「あそこにわきでている水を一杯飲ませてくれるだけでいいから。」
ぼくはこわごわとその竜に水を飲ませてあげた。
すると竜は言った。
「ぼくの種類はアームドラゴン。」
「名前はラック。」
「この世界じゃなくて。別の世界、ワールド2と言う所に住んでいるんだ。」
この竜、ラックが水を飲んでみるみる元気になっていくのがぼくにも分かった。
きっとずいぶん長い間水を飲んでいなかったのだろうとぼくは思った。
その時、そんなぼくの考えが分かったようにラックが言った。
「そう。ぼくこの世界にまぎれこんでからずーと何も口にしていなかったんだ。」
「でもすぐ元気になったのはそれだけじゃないんだよ。」
「この水は特別な水で命の源とも呼ばれている。」
「ああ。まったくぼくは運が良かったよ。」
竜の大きさと話の内容に圧倒されて
ぼくは驚きっぱなしだった。
また竜は言った。
「さあ。ぼくの世界にちょっと行ってみるかい?。」
「それともここから出る道を教えてあげるだけでいいかい?。」
ラックは帰れるのがうれしいのかしっぽでリズムをとりながら言った。
ぼくは正直言って迷っていた。
でもちょっとくらいならいいだろう。
そう思ってぼくらはラックに向かってうなづいた。
と、そのとたん…。
ぼくらは虹色の光に包まれていた。
(つづく)
この作品は12歳の長女の作品です。
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