その少女を始めて見た時、俺は子供やめた直後だった。
 その少女は、俺の目の前でゆっくりと目を開き、そうして一瞬とても奇妙な顔になった。
 傍らに居た者が言うにはその少女は記憶の焼付けに失敗した特殊戦用のクローンらしい。
 だが俺の目にはとても焼き付けに失敗した様には見えなかった。
 少なくともその時の俺と同じか、それ以上の知性を有している様に見えた。
 だから、芝村に成って始めての直属の部下にその少女を選んだ。




 It corrects

 

 




 1996年

 幻獣共生派アジト


 銃声と絶叫が聞こえる
 火薬の匂いと血の匂いがする
 ここは戦場、私の職場

 幻獣と幻獣共生派の抹殺が今の仕事。
 先ほどの銃撃で手持ちの対人用弾丸が切れたので腰に装着していた太刀を右手で抜き、左手のサブマシン
ガンに対小型幻獣用強装弾入りのマガジンを装着。
 この銃は本作戦で寿命だろうな。
 見取り図からするとこの先は大きな部屋なので屋内ではあるがこの太刀でも問題ないだろう。
 中の気配をうかがいドアを切り飛ばして開ける。

 助けを求める声
 部屋中の視線が私に集まる
 朱に染まったあらゆる負の感情を宿した瞳と絶望の眼差し


 状況確認、右側に小型幻獣三体に左奥に要救助者一名。
 要救助者は救助対象と特徴が一致したので要救助者の安全確保のために三体の小型幻獣に対して全弾発射
した後、しぶとく生き残った一体に全力で銃を投げつける。
 頭部に命中した銃はその衝撃でバラバラになってしまい、しかも幻獣に大してダメージを与えて無い様だ
った。

 震えていた女の眼差しが絶望に染まり、幻獣の癇に障る哄笑が聞こえてくる
 幻獣の朱の瞳は己の勝利を確信したかの様に見えた


 ウルサイ声をBGMに幻獣が生意気な目付きでこちらを見ている。
 幻獣は人間を嬲殺しにする習性が有るのを思い出したがどうでも良いことだ。

 ヒュンと高くて軽い音が鳴る
 幻獣の首が落ちる
 体の方もゆっくりと地面に倒れてそれ以降動かなくなる
 気が付けば部屋の中は二人だけになっていた

 もう一度要救助者の容姿を確かめてから簡単過ぎる本人確認を行う。

「貴方…原素子さん?」

 激しく首を縦に振る彼女は、安全になったと思ったのだろうか、そのままポロポロと涙をこぼし始め、つ
いには私に抱きつき激しく泣き出した。
 今まで一度も見た事の無い彼女の姿に驚いたが、この建物は未だに制圧された訳ではない。
 すぐに部下に連絡を取り撤退する事にした。

「対象を保護した、これより撤退、五分後に奥から順に二十秒おきに爆破しつつ撤退せよ以上」

 作戦を終えた後、要救助者を隣に乗せて軍用車を部下に運転させつつ、ふと気づく。
 今回の作戦は、結構これからの事に係わってくるかもしれないと…