薄暗い室内でニャモがPCを操作している。

 ピ!

『メールガ一件アリマス』

 口の端だけを吊り上げて笑うニャモ。
 そしてニャモは部屋を後にしたのだった。


あーまーど・こあ2攻略

 ニャモ先生の特別授業
 ブレード編


「今回は最近レイヴンになったニコラスさんの『ブレードを上手く当てるには如何すれば良いか』が題材」

「では今回は私が教師役か」

「素子、その冗談笑えない」

「………」

「今回はパーツの選び方からやるから、早く用意して」

 額に井形を付けつつ前回ニャモが用意した機材を今回は二つ用意する素子。
 今回は偽i.LINKを使用した贅沢な環境だ。
 準備の終わった素子を片方の画面の前に座らせて一枚のディスクを渡し、自分はホワイトボードの前に立つニャモ。
 
「今回使用するのは2。
 2AAとは少し違うから注意して」

「解った」

「起動したら通信対戦を選択、すぐにシステム内のデータをロードして」

「うむ…ず、随分とパーツが多いな」

「ん、それ全パーツ購入しているから」

「そ、そうか」

「画面はそのままにして置いて。
 パーツ関係の説明が終わったら直ぐ組むから」

「ああ、解った」

 素子の返事を聞き、おもむろにマジックを取り出すニャモ。
 そのマジックでホワイトボードに、

 

 

 ブレードを当てやすくする為に必要と思われるステータス

1.ブースター
2.腕部パーツ
3.脚部パーツ
4.上昇性能

 と書いてから素子に、

「素子、ブレードを使用するときに気を使う事ってなに?」

「ふむ、先ずは相手の側面に回る事だな。
 正面から突っ込んで行くと、あっという間に蜂の巣にされるからな」

「昨日も蜂の巣だった」

「ぐぅ、つ、次にブレードの攻撃範囲内に接近する事だな。
 何はともあれ近づかないとな」

知ってるならもっと良いブースター付けろ
 そう、その為には出来る限り高出力なブースターの装備が手っ取り早い」

「だからブースターか…」

「うん、それとそれに見合ったジェネレーターも必要だけど今回は省く」

「何故だ?」

「ジェネレーターは基本的にバレーナのHOY−B1000以外はあんまり必要じゃ無いから」

「アレではエネルギー総量が少なくないか?」

「でも出力は現行品で最高。
 そもそも前回やったブースターテクニックマスターしていたら釣りがくる」

「なるほど」

「後は全体的に軽めに組めば良い。
 じゃあ、次」

「腕部パーツ?」

「私や素子の機体みたいにデュアルブレードだと選択の余地が無いけど、今回は普通の腕。
 素子だったら何を基準に選ぶ?」

「軽いパーツだろう」

 ブッブー
 ガン!

 不愉快な駄目だし音が鳴り響き、素子の頭にタライが落ちてくる。

ナッ何ダコレハ?

 今度は額に青筋を立ててニャモに先ほどの凶行を問いただす素子。
 へたな事を言ったら『斬るぜ』と言わんばかりの素子の雰囲気など全く気にせず、むしろ軽蔑のまなざしを浮かべつつニャモは、

「素子、各腕部パーツの消費電力の差は何故有るのか考えた事無いの」

「!」

「馬鹿な事口走ったら相応のペナルティがあるから注意して発言して」

 怪しげな数個のボタンを素子に見せつつホワイトボードになにやら書き出す。

「あと腕部パーツで注意しないといけないのは、エネルギー供給量と追尾性能」

「何だそれは」

「…乱暴な言い方すると、ブレード攻撃力を上下させるのがエネルギー供給量、敵機に対する追尾性能を決めるのが追尾性能」

「では当てる事を主眼に置いた場合は、追尾性能の高いものを選べばよいではないか」

「それでも良いんだけど、追尾性能の高い腕部はブレードの振り始めが遅くなる。
 それじゃあ結局避けられたり、反撃食らうからあんまりお勧めできない」

「という事は…」

「実戦で当てたければ追尾性能は出来るだけ低めのがお勧め」

 今までホワイトボードに書いた事をいったん消して腕部パーツ名を書き出すニャモ。

「以上の点を踏まえて私がお勧めするのはZAN−303/S

「軽く消費電力が低めでエネルギー供給量が高く追尾性能が低めだな」

「そういう事」

「そうすると次は脚部か」

「うん、脚部によってはブレードの振り方が変わってくるからこれは好みで選んで」

「それだけか?」

「後は腕部と同じで軽くて消費電力が低ければ良いけど、重量制限があるからそっちがメインで良い」

「ブレードだけなら、かなり軽量になるではないか?」

「ボードには書かなかったけど、ブレードを当てるときには、出来る限り敵機は動いていない方が良い。
 だから、右手武器のハンドガンとかで、敵のバランスを崩しつつ斬るのがより賢いやり方」

卑怯な…最後の上昇性能は何だ?」

「これはブレードを使用した時の追尾可能距離に関係してくる。
 だから、より高ければ良い」

「ふむ、ではその条件にあった機体を組むか」


 ヘッドパーツ
 ZHD−GE/OHR
 コアパーツ
 ECMーXR00
 レッグパーツ
 ZLN−EK1/SRRT
 ブースター
 ZBT−Z1/ARTERE
 ジェネレーター
 HOY−B1000
 ラジエーター
 RPS−MER/SA
 FCS
 LODD−8
 アームパーツ
 ZAN−303/S
 左腕武器
 LS−MOONLIGHT
 右腕武器
 EWG−HG−ART
 肩装備武器
 ZRS−554/BW

「こんな感じ」

「どうして、肩にレーダーを装備するのだ?」

 ブッブー
 パカ

 再び鳴る駄目だし音と共に素子の足元が開き、椅子ごと素子を落とし穴へと誘う…
 刹那の判断で椅子から飛び上がり難を逃れる素子。

 ヒューー…

 しばらく穴の中を覗いていたが、何時まで経っても椅子が地面に到着した音が聞こえない事に青くなる素子。

「いい? 頭部レーダーで示されるモノと違って、肩レーダーは常時敵機を示す。
 超近距離戦を想定した機体だから、とっさに敵機を見失った場合、肩レーダーが必須。
 それと、次は必殺だから覚悟してから発言して」

「…今のも十分必殺では無いのか?」

「底にはカオラの作った衝撃吸収剤が有るから、途中の壁で擦らなければ怪我はしない」

「………」

「後はこれを使用して行くんだけど、機体のスピードに慣れるまでは結構難しいと思う。
 それとオプションは完全に好みでいい」

「左腕装備武器の性能を上げるのでは駄目なのか?」

「ジェネレーターの容量を上げたい人も居るし、防御力を上げたい人も居る。
 私はジェネレーターと旋回性能を上げる」

「人それぞれか…」

「次は空中切りに関して」

「ブレード使いの必殺技だな」

「うん、素子も早く使えるようになると良いね」

 そう言い、蔑みと哀れみと同情が入り混じった眼差しを向けるニャモ。

「そ、そんな目で…見るな!」

「空中切りの基本は、敵機をハンドガンで貼り付けにしつつ、低空から斬りに行くのがいいと思うけど、高高度で当てなければいけない時は、自機と敵機の高度を出来るだけ会わせる、もしくはホンの少し自機の高度を下げると良い」

「…確かに空中でブレードを使用すると高度が上がるからな」

「これはさっき出てきた上昇性能が関係してくるから注意して」

 そして機材の電源を切りつつ、

「最後、ブレードを使用する時に必要なのは、敵機に近づく度胸と敵機にブレードを当てるときに冷静に対処できる自制心。
 素子は、もう少し自制心を養った方がいい」

「修行あるのみ…か」

「そういう事、鶴子に勝ちたければ、最低でも私を倒さないと無理。
 今のままじゃ秒殺確定

 そうニャモに言われて、目に見えて落ち込む素子。
 そんな素子を見ながら何かを考えているニャモ。

「…素子、最初の頃に比べたら随分上達してる。
 このまま頑張ればいつか鶴子を倒せる(かもしれない)」

「そ、そうか?」

「多分、じゃあそろそろ片付けて、今日の訓練始める」

「…そう、だな」

 二人は肯き会って機材を片づけを始める。
 機材を全て仕舞い、素子を先にシミュレーションルームに向かわせたニャモが振り返り、

「今回はこれでお仕舞い。
 次のメールを待ってる」

 そういった後、素子を追って部屋を出るニャモ。
 今日もこれから素子となるをしごく心算だ。

 続く?

 

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