食い逃げチャンピオンあゆ



「はぁ…」

祐一は溜め息をつきながら商店街を歩いていた

「名雪め…覚えてろよ…
昨日も寒風吹きすさぶ中、14時間も待たせやがって…
何が『夜の2時の事だと思ってたよ』だよ…
それでも2時間の遅刻だったじゃねぇか…
大体どこの世界に夜の2時に
待ち合わせする馬鹿がいるってんだよ…
あのまま朝を迎えてたら、本気で死んでたぞ、俺…
それにしても…」

今日は祐一の転校初日
はっきり言って最悪であった
とはいえ、別に、学校に不満があるわけではない
あるとすれば、昨日7年ぶりに再会した従姉妹にだ

「なんで一緒に住んでる事を
皆にバラすんだよ…
あかげで転校初日から
俺のあだ名が『ヒモ』になっちまったじゃねぇか…
あ〜…もう明日から学校行きたくねぇな…」

よほど陰湿ないじめにでもあったのだろう
祐一は半泣きであった

「そういえば…」

ふと辺りを見回すと
そこは昨日も見た風景だった

「そういえば、昨日ここで
変な食い逃げ娘に会ったな…
あの時は危うく死ぬところだった…」

祐一が身震いさせながらブツブツと
独り言をつぶやいていると…

「殺気!!?」

ふいに背中に凄まじい殺気を感じ
全力でもって体をよじる

「ぐあっ!!」

何かが右半身をかすめる
その凄まじい衝撃に
祐一の衝撃は、まるで
フィギィアスケートの選手のように
くるくると4,5回転ばかりして
地面に背中から着地した

「うぐぅ!どいてどいて〜!!」

着地後、爆音と共に
そんな少女の声が聞こえた気がした
辺りを見渡すと
爆音のした方向の地面がえぐれ
羽の生えた何かが地面にめり込んでいた

「うぐぅ…ひどいよ…
どいてって言ったのに…」

その物体がよろめきながら立ち上がる
どうやら、少女のようだった

「ぶつかった後に言っても
仕方がねぇだろ!!」

祐一が怒鳴りつける
ツッコむところは違う気もするが
混乱している祐一では、これが精一杯であった

「え〜?
ちゃんとぶつかる前に言ったよ〜」

「い〜や!ぶつかった後だった!!」

あれ?このやりとりは…

「あ、祐一君」

やはり、あゆだ
昨日の食い逃げ少女だ

「…また音速を超えてたのか…」

そうだ、昨日もそうだったのだ
音速を超えているために
音があゆよりも遅れて届くのだ
待てよ?ってことは…

ズギャン!ズギャン!ズギャン!

二人の背後に黒い足跡の形をした
『何か』がいくつも出現する

「…また食い逃げしたのか…」

「うぐぅ…」

「そのたい焼き屋の屋台は
本体が養分を集めるための罠だと
何度言えば分かるんだ!!」

「だって…お腹がすいてたんだもん…」

「『ハイウェイスター』の屋台で
続けて食い逃げするなんて…
…さてはお前、チャレンジャーだな?」

「違うよ!ボクは





0・KOチャンピオンだよ!!

「…は?」

思わず聞き返す

「あ、もうそろそろ
インターバルが終わる時間だから
ボク、そろそろ行くね」

「チャンプ?インターバル?」

振り向いて見ると
『ハイウェイスター』の方も
律儀に停止して待ってやがる
試合でもしてやがんのか、こいつら?

「…本体倒した方が
早くないか?」

思わず聞き返してしまうと
いきなりあゆが俺のえり首を掴んだ

「くっ、苦しい…
あ、あゆ…何を…」

見ると、あゆの顔は
凄い形相になっていた

「よく聞けよヒモ…
あいつはオマエが思っているよりも
数段強いスタンド使いだよ……
試合の最中に本体を探そうとして
あのスタンド以外の物に
気をとられでもしてみてよ……
その一瞬にあいつは
一つボクの体にへばりつき
ボクの意識を揺るがすほど
養分を吸い取る
さらにそのスキをつき
ボクが本体に辿り着くまでに
何十匹もボクにへばりつくよ…」

「じゃ、じゃあ俺が代わりに…」

「それともう一つ」

「ボクは0・KOチャンピオンだよ……
ボクの『食い逃げ』にKO勝ちはいらないけど
相手の再起不能{リタイヤ}も要らない…!
12Rフルに逃げ切る事だけが
ボクが相手にしてあげれる最高の『礼』だよ…
本体を倒しになんて行ってみてよ…
そん時はボクの全身体能力を使ってオマエを
ぶん殴り殺してやるからなこのクソヒモがっ!!!」

「わ、わかりました…」

俺はヒモじゃねぇ!!
と怒鳴る事も
普通に金払って礼すればいいだろ
と冷静にツッコむ事もせず
祐一がしたのは服従
情けなく、無様な服従であった

「そ、それじゃあ、俺はこれで…」

祐一がそう言おうとした時
声は祐一の口から漏れ
横に流れていった
あゆが疾けだしたのである

「祐一君も一緒に逃げるんだよ!!
見せてあげるよ!まズは……
『音の歪む世界』!!」

「失礼…」

ラディカルグッドスピード脚部限定!
タイヤキの!ファーストブリットォォォ!!


「しm」

夕暮れの商店街に
爆音が響き渡り
そこには、音速で駆け抜けた少女の
落としていった、たい焼きの欠片と
音速の壁に耐えられなかった少年の
無残な死体が転がっていた

「まだ…死んでねぇ…
ちくしょう…こんな町…
出て行ってやるぅぅぅぅ!!!」



あとがき

♪壊れ系SS完成〜

樫の木おじさん「…壊れ系って
話が破綻してるってのとは違う気が…」

言うな、私も途中で気付いた

樫の木おじさん「これは何だ?」

いやね、ちょっとkanoso風の
SSを書いてみようかって思って
色々考えたんだけど、面倒臭くなって
長くなりそうだし、企画はお流れにして
しかも、そのボツネタつないで
短編作ってみたんだけど…

樫の木おじさん「アップすんな、そんなゴミ」

いや、そうなんだけどね
もしこれが気に入ったって人がいたら
きちんとシナリオごとに、流れ決めて
ちょっと作りこんでみようかな…って

樫の木おじさん「あぁ、だから
あまり説明とかが無かったんだ…」

基本的に、壊れた世界の
とある日常の話だからね…

樫の木おじさん「断言してもいい
これ面白いって奴絶対いない」

…次、頑張る
絶対、頑張る

樫の木おじさん「頑張れ
さもなくば、死ね」

…あとがきですら無いし

樫の木おじさん「やっぱ今死ねよ、お前」