ゆういちとまことの縁



二月一日午後●時●分
沢渡真琴は消滅した

翌年三月――

「わっ、お母さん、もう8時だよっ」

間延びした声で、青い髪の少女、名雪が母親の秋子さんに声をかける

「ほら、名雪、卒業式に遅刻したらだめでしょ」

水瀬家のドアを開け放しにしたまま
玄関で慌てて靴を履こうとしている名雪に
隣でPTAの代表の挨拶に行くためにスーツ姿に
着替えた秋子さんが、靴を履きながら優しく言った
すると、近くを通りかかった近所のおばさんが
微笑みながら、声をかけてきた

「ダメよ、名雪ちゃん
2年生の時みたいに、肉まん買って学校行っちゃ!」

おばさんはそのまま通り過ぎて行ってしまったが
その声に、反応したのは、名雪では無く、秋子さんだった
靴を履き終わり、整え終わったかかとから放そうとした秋子さんの手の動きが
ピク、とわずかに止まってしまう

「お母さん……」

名雪が心配そうな目で母親に声をかける

「うふふ、ダメね、私…」

秋子さんは、そう自嘲気味に笑いながら
自分の頭を、コツン、と小突いた

「まだ、肉まんって聞くと…
泣いちゃうのよ…」

そう言う秋子さんの目には、うっすらと涙が浮かんでいた

「さ、行きましょう、名雪。」

が、すぐにいつもの調子を取り戻し
名雪に向かっていつもの優しい微笑みを見せた

名雪は、そんな秋子さんの姿を見て
悲しそうな、戸惑ったような顔をした後
意を決して、走り出した
走りながら秋子さんの手を掴み
握って、そのまま走りながら言った

「そんなモノ全部私が食べちゃうよ!」

陸上部で鍛えた脚力で
秋子をひっぱりながらも凄い勢いで走る

「名雪…」

そんな娘の姿に
秋子は少しとまどいながら声をかける
しかし、名雪は走り続けながら、言葉を続ける

「お母さんのまわりの肉まんはみ〜んな!
おなかぱんぱんになってもへ〜きだもんね。」

名雪の目には、うっすらと涙が浮かんでいたが
しかし、精一杯の笑顔を母親には向けていた

「お母さんがほしいっていっても…
あーげないよ〜」

そんな一生懸命な名雪を
秋子さんは優しい瞳で見つめた

「えぇ。
ずうーっと、食べてね。」

母娘は光溢れる早朝の小道を駆け抜けていった

「祐一!
卒業式におくれそうなのに
のん気に朝メシなぞ食っとるバアイかーっ!」

相沢家の朝の風景
しかし、それまでとは違い
祐一は、水瀬家との家族と一緒にではなく
海外出張のため、今まで離れ離れになっていた
本当の、相沢家の家族と一緒に食卓を囲んでいた

「死んでものこさねえ!!」

白米をがつがつとかきこみながら
怒鳴りながらせかす父親の方も見ずに返答する
そして、ごくっ、と、幸せそうに
母親が作ってくれた味噌汁を飲み干し
はー、と、満ち足りた溜め息をついた

「ごちそーさん、行って…」

「まって、祐一。」

食卓から急いで駆け出そうとする祐一を
母親が呼び止める

「口のまわりをちゃんとふいて…」

そう言いながら、母親が祐一の口元にハンカチを当てると
祐一はまるで石の地蔵のように固まってしまった

「てれとるてれとる、ひけけけけ」

父親が、茶化すように笑う

「いってらっしゃい」

手を振る母親に向かい、笑顔で腕を振り
父親に湯飲みを投げつけて
祐一は元気よく家を飛び出した

途中、無人の水瀬家の前を通りかかると
そこからは、昔真琴が住んでいた部屋が目に入った
思わず、祐一の顔が哀しみで歪む
しかし、祐一はそのまま目をつぶり
心の中で、言い聞かせるようにつぶやいた

「でも…
おもしろかったよなァ…」

祐一は、ゆっくりと目を開く

「なあ、まこと。」

バッ、と振り向き
悠然と歩き出す祐一の目は
力強い輝きを放っていた

向こうには、この町で出来た友人達の姿があった
祐一は、笑顔で迎えてくれる彼ら、彼女らに
元気良く手を振って答えた
そして、共に歩みをすすめて行った
これからの、新しい生活に向けて

「さてさて…」

その様子を遠くから見つめていた
天野美汐が口を開く

「これにてゆういちとまことの
ながぁいお話はおしまいです」

「え、何?
寂しいんですか!?
この町から妖狐達がいなくなって悲しいと…
あなた達はいうのですか…」

美汐は優しく微笑みながら続ける

「ふふふ。
いいですか、よォく聞いてください。」

美汐も、学校に向けて歩み始めながら
そのまま話を続ける

「人間は土に生まれてつちに死ぬ…
土に死ねば、この世に再びかえってはこない…
にもかかわらず……
その土からこの世に立ちかえってくるもの。
それが、妖狐なんですよ。
だから、だからですよ
ひょっとして…いつの日か…」





「行っくぞーっ!
まことーっ!」



「うるっさいわよぅ!
ゆういちーっ!!」



ゆういちとまこと 完




あとがき

樫の木おじさん「…なんだこりゃ」

いや、ほら…なんかさ…
『うしおととら』とカノンのクロスオーバーって
ちょっと斬新かな〜…な〜んて…

樫の木おじさん「もういい、何も言うな」

連載させるには大変だしさぁ…
他のゲームのキャラとか出してもいいんだけど…
面倒臭いジャン♪

樫の木おじさん「『ジャン♪』じゃねぇ!!
…で、他のキャスティングとかは決めてたのか?
秋子さんが真由子、名雪がキリオで
オリジナル出演が相沢両親
で、美汐が雲外鏡のおんじか…」

あぁ、まぁ、それは打倒かな、と

樫の木おじさん「舞と佐祐理さんは?
小夜ちゃんと勇ちゃんとか、そんな感じか?」

いや、佐祐理さんは東の長
舞は西の長だ

樫の木おじさん「…まぁな
舞の剣は剛刃『流走』か
じゃあ、美坂姉妹は
北川を加えて、カマイタチ兄妹か?
栞は薬使いでもあるしな」

いや、栞と香里は
ミノルとサトリ

樫の木おじさん「…何故?
しかも、それだと、血の繋がり消えるぞ?」

だから、そこで最後は名台詞
『私に妹なんていないわ…』

樫の木おじさん「強引だな…
じゃあ、北川は何だ?
凶羅辺りか?」

おっ、惜しいね
北川は秋葉流

樫の木おじさん「…格好良すぎじゃないか?」

いいんだよ
久瀬は紅蓮で
斎藤は黒炎のうちの一匹
ちなみに、ヒョウさんは
国崎往人を考えていた

樫の木おじさん「…ミスキャストだな
斎藤以外は」

失敬な

樫の木おじさん「え〜と、後は…
そうだ、あゆと石橋だ」

石橋は凶羅
あゆは…決まってるだろ?

樫の木おじさん「そうだな、一応ヒロインだしな
うしおが祐一なら、当然だよな」

うん、当然だよ





白面の者だ


樫の木おじさん「そっちか!!
だから最終回前半の対決シーンは書かなかったんだな!!?」

当たり前だ、あゆファンに刺されるだろうが

樫の木おじさん「あ〜、もう
せっかくのパロディシリアスが
あとがきのせいでギャグになっちまったろうが…」

♪気にしない気にしない

樫の木おじさん「………
妙に上機嫌だな…
ひょっとして、お前…





このあとがき書くために
本編でっちあげた


んじゃ無いだろうな?」

…じゃ、次回もお楽しみに

樫の木おじさん「おい待て!
そうなんだな!?
フザケンナ!そんなネタなら日記でやれば…」

うるせぇ

ズブッ

樫の木おじさん「ぎゃはぁ!!?」

さすが獣の槍
古代の大樹妖も一撃だ
じゃ、そういうワケでまた次回