『偶然の出会い』

子供心に憧れた事のあるシチュエーションだ。
通学途中で転校生にぶつかったり、ある日突然異性の居候ができたり、運命の赤い糸で結ばれた人に出会って一目ぼれしたり、突然幼馴染と再会したり…

まぁ、毒飲んでも死なないばかりか眠ってたら突然美形の王子様にキスされた上にプロポーズされたり{その王子はネクロフィリアか?}鬼や魔女を退治しただけでお姫様が惚れてくれたり{鬼が退治できれば犬や猿でもいいのか?}と、ご都合主義にも程がある展開でいい年こいた人間なら鼻で笑うだろうが、まだ心が純粋だった幼き頃ならば誰しも一度は憧れた事はあるだろう。

だが、もし年を経てそんな世迷言を信じられなくなった時でも、万が一そのような事態に遭遇すれば、それはそれで再び『運命』と言う名の偶然を信じたくなるのではないだろうか。

本来運命とは自分の力で切り開いていくものなのだろうが、たまには甘美な偶然に弄ばれてみるのも面白いのかもしれない。それは人が持つ本能的なマゾヒズムがそう感じさせるのだろうか?

しかし、それがもし最悪な出会いならば、人はその『運命』とやらに直面した時、それを呪わずにはいられないのだろう…



偶然の出会い


土曜日の昼間、とあるレンタルビデオ店。
そこは暇な週末に潤いを求める人間でごった返していた。
ある者は一人身の自分を慰めようと。またある者は恋人と恋愛映画でいい雰囲気になろうと。
そしてまたある者は全26話の某アニメ週末連続視聴計画に胸を躍らせながら店内を歩き回っている。

そして、その入り口付近では、明らかにその場に似つかわしくない表情をした
隣町の高校の制服に身を包んだ男女がお互いに向き合い、しばし沈黙を保っていた

「…やぁ、美坂さん。珍しいところで会うもんだね。部活はいいのかい?」

蛙と間違えて練りワサビの塊を飲み込んだ蛇のような表情をしているのは久瀬。隣町の某高校で生徒会長をしている少年であった。

「…それはこっちの台詞よ久瀬君。生徒会の仕事はいいのかしら?」

端整な顔をひきつらせている少女は美坂香里。
隣町の高校で学年主席としての優秀さを誇っている。

学校ですれ違うならば、生徒会長と一般生徒として軽く挨拶をしただけですれ違い
同じ友人達を経由して会う時は共に食事をしたり、たまに軽口を叩き合う程度の仲ではあるが

この時ばかりは出会うには少々…いや、かなり都合が悪すぎた。

「我が生徒会は優秀だからね。僕がいなくても立派にやれるし
 またそれを実感させてやるためにもたまには彼らだけで雑務をこなさせてやるのが大事なんだ」

ちなみに、その頃生徒会の役員達は膨大な量の書類を前に
途中でバックレやがった会長への怨恨だけを原動力に無言で活動していた。
何故クーデターが起きずに役員達が反生徒会派に寝返りもしないのかは学園七不思議のうちの一つである。

「とんだ詭弁ね。ちなみにあたしの部活は今日休みなのよ…いいからさっさと帰ってあげたら? 多分、副会長達も泣いてるわよ?」

まったくもってその通りであった。
たまに生徒会室から聞こえてくる集団の嗚咽は、一時期学園七不思議の一つにも数えられた事があったほどだ。

ちなみに現在進行形の七不思議の一つは『美坂香里の所属している部活』
親友である水瀬名雪にも分からず、調べようとした者は皆謎の事故に巻き込まれると言う噂だ。

「…僕も用件さえすめばすぐ帰るんだがね」

「じゃあさっさと済ませて帰ったら?」

二人の表情がますます険しくなる。
一種殺気めいたものも周囲に立ち込めだした。
モーゼの如く周囲には人の波が避ける空間ができている。

「いや、それほど急ぐ用件でもないしね…他に面白そうなビデオでもないか、探してまわる事にするよ」

そう言いつつも、久瀬は歩を進めようとしない。
何となく、ここで後ろを見せてはいけない気がしたのだ。
そして、香里もまた同じ事を考えていた。いや、直感で感じ取っていた。

「早く帰った方がいいわよ?
 隣町とはいえ、生徒会長が制服で寄り道をしているのは他の生徒に示しがつかないわ」

正論である。しかし、この場合正論が正しいとは限らない。
本音で言えばただ単にさっさと久瀬に立ち去って欲しいだけである。
そして、久瀬の用件が長くなりそうだという香里の先ほどの直感はすでに確信へと変わっている。

「寄り道とは人聞きの悪い。監視、と言ってもらいたいね。
 生徒の非行化を見張るのも生徒会長の仕事だからね。それなら制服で行うのが筋さ」

嘘八百である。しかし、この場合嘘が間違っているとは限らない。
久瀬には切羽詰った事情がある。それを打開するためには嘘もまた方便だ。
先ほどの後ろを見せてはいけないと言う久瀬の予感もまた確信へと変わっていた。
香里の用件が長引いた場合、不審な目で見られる事になり、状況打開の機を失ってしまう。

「…どうせAVか何かでしょ?
 相沢君か北川君に頼まれたって事にしといてあげるから、さっさと借りて帰ったらどう?」

いらつきつつも冷ややかな目で香里が久瀬を見つめる。
これがもし彼女の言うようにただのAVだったらどんなにマシな事か。
そんな事ぐらいで一々羞恥心を感じるほど久瀬の肝力は弱くは無かった。

小学生の頃も、北川にゲームで負けた時、罰ゲームで
「アダルトビデオを入手して来い」などと嘗めた命令をされたため
当時の知力を尽くしてスカトロもののAVを大量に入手してきた事がある。入手ルートは秘密だ。

ちなみにその後、それを嫌がる北川に強制的に視聴させてやった。
両手足を椅子に縛り付けて両目をセロテープで開かせた状態で固定し
そのままビデオを再生して一人きりで部屋に数時間ほど放置しておいた。

無事救出された後の北川は「なんで…? なんであのお姉さん達はあんなものを食べてたの…? 食べれるものなの…? そして戻せるものなの…?」と虚ろな表情で呟き続け、その後心因的な拒食症でしばらく入院するはめになった。

それはその時に流石に反省して退院祝いにアイスを奢ってやったのでチャラと言う事にしてある。
ちなみにまだ完治していなかった北川がアイスを食べながら「うまいのう、うまいのう、ギギギギギ…」とか口走っていたのを見て、子供心に久瀬少年は日本は核を持つべきではないと思ったものだ。

「ははは、反応がありきたりと言うか何と言うか…
 欲求不満なのは君の方なんじゃないかい? 僕は女性がAV見ようが偏見は無いからね。
 とっとと借りて帰ったらどうだい? ちなみに、君が言い出したそれも立派なセクハラにあたるよ。気をつけたまえ」

いらつきつつも皮肉を忘れずに久瀬が言う。
これがもし彼の言うようにただのAVだったらどんなにマシな事か。
そんな事ぐらいで失ってしまうほど香里の尊厳は軽いものでは無かった。

中学卒業の時も、美坂チームでの卒業祝いの時に北川が王様ゲームで
「二番はアダルトビデオを入手して来い」などと嘗めた命令をしてきたため
当時の智力を尽くしてスカトロもののAVを大量に入手してきた事がある。入手ルートは秘密だ。

ちなみにその後、王様の義務として北川に視聴させてやった。
ビデオのタイトルを見た途端北川は狂ったように拒絶して暴れまわったが
拘束服で手足の自由を封じてからSM用の器具で両目を開かせて固定した。これらも入手ルートは秘密だ。

そしてその後しっかり義務を果たしてもらったが
名雪と斉藤の恩赦で何とか救出された北川はすっかり光の失せた瞳で

「目覚める…目覚めてしまう…俺の中の悪魔{ディアーボ}が…駄目だ…俺はまだそっちへ行けないよ…そんな…螺旋回廊なんて…俺は仮にもKANONのキャラで…泣きゲーのキャラが…そんな…………………………そうか…そこまで言ってくれるなら………………もう少しだけ、考えさせてくれ…」

と、何か高位な存在と会話していた。
その後、北川が春休みの間しばらく山篭りに出かけてしまった時は流石にちょっと心配したが
戻ってきた時はいつも通りに「アイアムサブキャラクターオブカノン」とかほざいていたのでそっとしておく事にした。

とりあえず、その後一週間だけは香里はとても北川に優しくしてやったのでチャラと言う事にしてある。
ちなみに、その間北川は『トイレ』とか『便所』とか言う単語を聞くたびに悶絶したため、かなり気を使った覚えがある。
特に女子便所を見た瞬間気絶し「悪魔{ディアーボ}が…悪魔{ディアーボ}が…」と呻いていた時にはかなり本気で焦ったものだ。

「…今、思い出したくも無い事思い出して機嫌が悪いのよね…いいから早く帰ってくれる?」

「…奇遇だね。僕もだよ。だから早く用事を済ますなりなんなりして帰りたまえ」

「お先にどうぞ」

「レディーファーストだよ。お先にどうぞ」

「それは一種の差別だわ」

「親切は素直に受け取っておきたまえ」

「………………………………………………」

「………………………………………………」

すっかり張り付いた笑みになってる二人が無言でにらみ合う。
もはや一種の意地の張り合いにもなっているため殺気の量も半端じゃない。
新規の客は怯えて入れず、すでに中に入っていた客も恐れて出入り口に近づけない。
店員は客に小声で文句をつけられ、半べそをかきながら警察に通報しようか真剣に悩んでいる。

やがて、ため息をつきながら香里が沈黙を破る。

「…どうしてそこまで意固地になるのか、理解に苦しむわ」

久瀬側の理由はただ一つだ。
そもそも、本日このビデオ屋に来た理由が
『川澄舞に頼まれたビデオをレンタルしてくる事』

気まぐれに引き受けた用件だったが、そのビデオ内容を聞いて愕然とした。

それは、今話題になっている動物物の子供向け…いや幼児向けアニメ映画。
それも甘いワッフルに練乳をかけ、さらに蜂蜜をまぶしたぐらい甘々な内容のやつだ。
中学生でもまさか見る人間はいないと思っていたのに、まさか高校生にもなって見ようとするとは…

とにかく久瀬にもイメージというものがある。
上辺だけを取り繕うのも愚かだが、それでも限度と言うものがある。
しかもそれが他人に頼まれて借りねばならない、と言う状況が恥ずかしさを増している。

完全に油断による失敗だった。
隣街だからと油断せずに、制服を着替え…いや、むしろ変装するべきだった。
よりによって相手はあの相沢祐一と北川潤の友人であり学年主席の美坂香里だ。
ここで弱みを握られてしまえば、後々どういう事になるのか分かったものでは無い。

ゆえに、とにかくこの場は何としてもやりすごさねばならないのだ。
久瀬は、香里に動揺を悟られないよう最新の注意を払いながら言葉を紡ぐ。

「それを言いたいのは僕の方だ。君は一体何に固執しているんだい?」

香里側の理由はただ一つだ。
そもそも、本日このビデオ屋に来た理由が
『美坂栞に頼まれたビデオをレンタルしてくる事』

気まぐれに引き受けた用件だったが、その内容を聞いて頭痛がした。
ご都合主義と観客への媚びで作られたような監督の意欲の欠片も見られない映画。
愛だの友情だの勇気だのって言葉が10秒に一度は飛び出すようなある意味洗脳テープだ。

あのスカトロ事件も耐え切った北川ですら
「流石にそんな萌えもへったくれも無いもんは見たくないなぁ」
などと言って拒絶したのだ。香里には『萌え』と言う単語の意味が分からなかったが…

とにかく香里にもイメージというものがある。
上辺だけを取り繕うのも愚かだが、それでも限度と言うものがある。
しかもそれが他人に頼まれて借りねばならない、と言う状況が恥ずかしさを増している。

完全に油断による失敗だった。
隣街だからと油断せずに、制服を着替え…いや、むしろ変装するべきだった。
よりによって相手は北川や祐一の友人で、あの学校一の性悪と名高い悪徳生徒会長だ。
こんなところで弱みを握られてしまえば、後々どういう事になるのか分かったものでは無い。

下手をすれば、雪だるま式に弱みが膨らんで最終的に風俗に売り飛ばされかねない。
万一の可能性ではあるが、何故か久瀬のイメージと照らし合わせるとしっくりきすぎる結末だ。

ゆえに、とにかくこの場は何としてもやりすごさねばならないのだ。

「…一体何を待っているのよ?」

「その質問に答える義務が僕にあるのかい?
わざわざ個人の自由を詮索しようって言うなら、僕も生徒会長権限で君の目的を問いたださねばならなくなるな」

「職権乱用よ」

「我が校の貴重な人材を非行から守ろうとするには必要な処置だと思うが?」

さっぱり埒が明かない。
二人は外面は人当たりのいい笑顔だが
内面からはもう店内の子供が泣き出す程の殺気を出している。
店員はせめて女子供の解放だけは申し入れようかとなけなしの勇気を振り絞ろうとしている真っ最中だ。

「…いい加減、うっとうしいわね」

そもそもこんな事になった原因は妹の栞だ。
栞も栞で今日はどうしても抜けられない用事があるとの事だが
それでも自分で行けばいいものをわざわざ自分に頼んでくるからこんな事になるのだ。

だが、香里には栞を怨む気にはなれない。
そもそも栞が自分に甘えてくれる事自体は嬉しいのだ。
あの冬の償いだとかそういう事を抜きにして、妹に頼られる事は姉として嬉しい。

だから栞を怨む気持ちは毛程も湧かない。

むしろ怨むなら相沢祐一だ。
あのジゴロ、栞に手を出すどころか
自分にも手を出して姉妹丼を狙っている節がある。
本人は意識してないようだが、周囲の目から見れば明らかだ。
北川曰く、「それがあいつのジゴロとしての本能なんだ」との事だ

それならそれで栞の莫大なアイス消費量の肩代わりや
こういった雑事をこなす事で有益に行動して欲しいものである。
大体アイスの代わりに栞が大量に弁当を作るのでエンゲル係数は変わらないのだ。
それならばこういう時に役立ってこそ、ジゴロ高校生としての為す道なのではないだろうか?

まぁ、それはそれで栞に指一本でも入れたら撲殺&社会的抹殺してやるのだが。

だが流石にそれは逆恨み以外の何者でも無い。
ゆえに、怨むならば目の前に立ちはだかったこの石ころだ。

(…どうにかならないのかしらねこのシチサンメガネ)

「君こそこんなところでウダウダやってないで早く家路についたらどうだい?
 学年主席という校内でしか役立たないステータスを維持するためには日々の努力が必要だろう?」

そもそもこんな事になった原因はあの川澄舞だ。
佐祐理と一緒に片付けなければならない用事があるらしいが
その後で二人で行けばいいものをわざわざ自分に頼んでくるからそんな事になるのだ。

だが、久瀬には舞を怨む気にはなれない。
そもそも自分に頼み事をしてくれる事自体は嫌ではないのだ。
あの冬に少々やりすぎた事に対する償いだとかそういう事を抜きにして、美人の先輩に頼られる事は男として嬉しい。

だから舞を怨む気持ちは毛程も湧かない。

むしろ怨むなら相沢祐一だ。
あのジゴロ、舞に手を出すどころか
佐祐理にも手を出して巨乳丼を狙っている節がある。
本人は意識してないようだが、周囲の目から見れば明らかだ。
北川曰く、「奴は、棒は一本でも玉は二つあるからな。常人は棒の数で抱ける女の数を判断するが、奴程のジゴロになれば玉の数どころか最大指の数まで一度に女を抱こうと考えるものだ。それも頭ではなく本能でな」との事だ

それならそれで舞の莫大な牛丼消費量の受け持ちや
こういった雑事をこなす事で有益に行動して欲しいものである。
大体牛丼に関しては久瀬は金に困ってないので別に自分に矛先が向いても構わないのだ。
それならばこういう時に役立ってこそ、ジゴロ高校生としての為す道なのではないだろうか?

だからと言って二股、引いては九股とかに発展しようものなら新宿二丁目の闇に売り払ってやるのだが。

だが流石にそれは逆恨み以外の何者でも無い。
ゆえに、怨むならば目の前に立ちはだかったこの海草頭だ。

(…なんとか排除できないものかなこのシス昆布は)

いっそ実力で排除すると言う案もあるが、店内でそれは目立ちすぎる。
それでも、苛立ちは止まらないので二人ともついつい鞄の中にある『獲物』に手が伸びる。
それが外の空気に触れた時、相手が自分のどちらかは確実に地に倒れ付すのだろうが、やはりそれは『最後の手段』だ。

二人の殺気が溶け合って狂気すら生み出している。
それに当てられた客達が店内で暴動を起こしそうになっている。
店員は『最後の手段』として店長に渡された猟銃の使用に踏み切ろうかどうか必死に悩んでいる。

「……………………………………」

「……………………………………」

永遠とも思える沈黙が続く中。
ついに店員が『最後の手段』の使用に踏み切り
猟銃を手に二人の間に割って入ろうかとしたその瞬間。

「「あ!」」

香里と久瀬の言葉が同時に店内に響き渡る。

「…お先にどうぞ」

「…いやいや、今度こそレディーファーストだ」

ばつが悪そうな顔をしながら譲り合う二人。

ちなみに店員は土下座しなら「ごめんなさいごめんなさい本当は弾なんて入ってないんです。店長がマニアだから一応預かってろって言われて持ってるだけなんです」と涙ながらに弁解していた。

そんな哀れな小市民の存在は無視して香里が久瀬に告げる。

「…あたしは生徒会長なんて見なかったわ」

「そりゃ奇遇だね。僕もこんな隣町で同じ学校の生徒になんか会うはずが無いと思ったんだ」

どうやらお互い何かしら弱みがあるらしい事は分かった。
ならばこうやって何も見なかった事にして引いてしまうのが一番いい。
相手がそれを守る保障は何も無いが、その時はその時だと思って割り切るしかない。
これから目的の物がある場所まで背後に気を配って歩き続ければいいだけの事なのだ。

そうと決まればもうこんな相手に用は無い。
目を合わそうとせず、互いに背を向けて歩き去る。

もしも運命の女神がいるとするならば実に意地が悪いものだ。
こんな手に汗を握るような偶然など、言わば悪い夢のようなものだ。
悪い夢を見たなら忘れるに限る。偶然だろうが運命だろうが、所詮『日常』の中のものだ。

今日のこの事はもう二度と思い出す事も無いだろう。
後は、目的のビデオを手に取って、借りて帰ればいい。ただ、それだけの事。

それだけの事…だった…いや…はずだった…


ふと、触れる指先と指先。
ハッとして触れた指の先を離し、触れた相手を見る。
止まる時間。見詰め合う目と目。羞恥に耳まで真っ赤に染まったお互いの顔。

二人が同時に取ろうとしたビデオのタイトルは


『がんばれハムハムマン!〜愛と勇気だけが友情さ〜』{良い子のハムスターハム吉が人間に転生した元若くして死んだ恋人・魔法少女マミちゃんと運命の再会を果たした事で悪いドブネズミ星人の侵略から地球を守るためにハムハムマンに変身する事になって、愛と勇気と友情の力で戦う感動のドラマストーリー。お母さんもお子さんと一緒にご覧になって下さい}


そして、時は動き出す。



偶然の出会い…子供心にそれに憧れたのはきっと、余計なしがらみなどはなく。純粋に『出会い』と言う行為に崇高な物を感じていたからだろう…

出会いを悔いるのは、あるいは、彼らが汚れてしまったから…なのかもしれない…



なお、余談ではあるがこの街でしばらくの間、隣街の高校の生徒二人組がレンタルビデオ店で暴動起こしただの居酒屋で二人してすっかりヤサグレながら自棄酒飲んでただのと言う噂がまことしやかに流れたが、その真偽の程は定かでは無い…





あとがき

リハビリSS〜

樫の木おじさん「うわ、すげぇ久しぶりだな。一年ぶりぐらいか?」

ソロモンよ! 私は帰ってきたぁ!! って感じ?

樫の木おじさん「それはともかく…これ、気の効いたSS書きなら半分の量で倍の面白さで書けるんじゃないか?」

…おかしい…最初は一発ネタで終わらせるはずだったんだ…
香里と久瀬がお互いのキャラにそぐわないビデオを借りるはめになって、それでビデオ屋で偶然出会って「ぎゃふん!」ってSSだったのに…どうしてそれがこんなに長くなるんだ!!?

樫の木おじさん「そんなの俺が知りたいわ」

北川のエピソードとか気弱な店員とか、書いてて面白い部分が多くなったからなぁ
あと、久瀬と香里の氷の掛け合いを書いててすげぇ楽しかったって事もあると思うな
つーか、香里×久瀬もありだよなぁ…いや、ほのラブSSなんて書く気はさらさらねぇが

樫の木おじさん「なら言うな。とにかく、これからは頻繁にSS書くんだろうな?」

…これでまた一年空くのも一興…か?

樫の木おじさん「真面目にやれよ馬鹿」

http://www.geocities.co.jp/Bookend-Akiko/6300/bunsilyo.html