華畑での邂逅


気がつくと、彼は
いや、彼らは花畑に立っていた

色とりどりの草花の中で
綺麗な正三角形を描くように
三人の男達が無言で顔を突き合わせていた

目立つ銀色の髪をした男が一人と
それぞれ違う種類の学生服に身を包んだ男が二人

生まれた場所も
生きてきた過程も
それぞれ異なった三人








物事に対しての考え方だって当然違う
学生の一人、折原浩平は初めてこの花畑を見た時に

「ここはあの永遠の世界に似ているな」

とひとりごち、溜め息をついた



また別の学生、相沢祐一は
この花畑を見た時にその広さに驚き

「最近は白い雪ばっかり見てたからな」

とひとりごち、溜め息をついた



そして銀髪の青年
国崎住人は、その花畑の美しさを見て

「あいつがここに居たらさぞややかましく騒ぐんだろうな」

とひとりごち、溜め息をついた








そんな三人が顔を合わせた
広い花畑を気の向くままに歩いて
気がつくとお互いに顔を合わせていた

それからどれぐらいの時間が流れていたのかは判らない
だが、しばらくの間、彼らは同じ事を考えていた
口に出して言うのもはばかられる、馬鹿馬鹿しい考え

『こいつらは自分に似ている』

世の中にはよく似た人間が三人いると言う
それは何も容姿に限った事では無いのだろう

趣味も、年齢も、顔貌も、家族構成も異なった三人
だが、三人はそれぞれの存在を見て、互いに強烈な既視感を感じていた

それは、彼らの人としての本質が
まるで同一と錯覚するほどに酷似しているからだろう
心の根幹を形成しているモノが互いに同じカタチをしているから

それに気付いた時
彼らは誰からともなく
照れくさそうに含み笑いを始めた
そして、互いに背を向けて
それぞれの帰る場所を思い
近くで流れる川の音を聞きながら
ゆっくりと歩を進めていった

それからは、それぞれが別
全く違う人間の事を考えていた

だが、それも結局のところ
本質の部分では同じ、同じ想い

彼らは今、自分の大切な人間と作った
一番新しい思い出の道筋を辿っていた








「おい長森、今日は





俺の濃いミルクを飲みたくは無いか?



いやなん『だよもんパンチ』!!








「おい名雪、今日は





俺特製の甘くない白いジャムを試してみないか?



それならまず祐一さんが本家の味を覚えてからでないと








「おい観鈴、今日は





俺のどろり濃厚を味見してみないか?



居候の分際で何考えとんのやこの阿呆!!








猫パンチによる撲殺
甘くないジャムによる毒殺
背後からのバイク特攻による轢死

この花畑に来た道筋はそれぞれ違えど
彼らは同じような理由でここにやってきたのだ
そして、彼らは同じ想いを共有する兄弟の存在を知った

彼らは、それぞれの帰り道を歩きながら
一様にまったく同じ事を考えるのであった
そう、『次は絶対に失敗しないようにしよう』と

彼らがそれぞれの思惑を達成させるのが先か
それとも再びこの花畑に戻り、その先の川を渡るのが先か

それは、誰にも判らない

だが、自らの悲願成就の瞬間に
あるいは、再びこの花畑に訪れた時
彼らは自然に兄弟の存在を思い出し、そして思うのだろう

あいつらは上手くいったのだろうか?』と



あとがき

…下ネタは嫌いなんだが

樫の木おじさん「ノリノリで書いてたじゃねぇか」

いや、だってさ
この手のネタってさ
毎シリーズごとにあるでしょ?
だったら、いっそ統合させてみようかと…

樫の木おじさん「しかもシリアスっぽい雰囲気まで出して…」

まぁ、それはトラップだから

樫の木おじさん「読者騙すな」

浮かせて落とさないと駄目なんだよぉ…
シリアスを期待していた人には悪いけど…
壊れSS書きとして、そこだけは譲れないんだ…

樫の木おじさん「いきなり花畑って
何の事かと思えば、三途の川のほとりかよ」

ジャムや轢死はともかく
だよもんパンチの破壊力は凄いねぇ

樫の木おじさん「本当に無理矢理だなそれ」

何か特殊なスキルか身内がいればよかったのに
猫をけしかける{プリーズヘルプミー}とかじゃ
上手くまとめるのが難しかったし、元ネタ判り辛いし

樫の木おじさん「ヴァンパイアセイヴァ―ネタか」

とりあえず、一回読んだら
もう一度読んで欲しいね、見方が変わるから
あと、大文字の部分はその様子を想像してほしいね
テンポをよくするために描写を削っちゃったから…

樫の木おじさん「…お前、この後の展開とか考えてるワケ?」

いや別に
果たして彼らが『兄弟』を思うのは
{自主規制}の最中だろうか、三途の川を渡っている最中だろうか…

樫の木おじさん「…お前、本当に最悪だ」

ああ、よくそう言って誉められるぜ



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