相方落語『千早振る』





「え〜、本日は古典落語などを一つ・・・
突然ですが、皆様はこんな和歌をご存知でしょうか?


『千早振る 神代もきかず 竜田川 唐紅に 水くぐるとは』


在原業平が詠んだ有名な歌ですね。
竜田川が水面に浮かぶ紅葉によってくくり染めのようになっている・・・・・・・

まるで幻想的な情景が目の前に浮かんでくるような美しい歌です

ただ、いかんせん意味が分かり辛いのが玉に傷。千早振るが神の枕詞だとかくくり染めとはなんなのかとか

まぁ、分からないものは素直に分からないと言えばいいんですよ。ただ、それができない人も世の中にいるようで・・・・・・」

(CV田村正和)







「樫の木さん樫の木さん、ちょっと教えて貰いたい事があるんですけど」





「なんだよ。お前が馬鹿なのはそれはお前だからだよ。はい、Q.E.D」





「・・・・・・えぇ、私の悪い頭では考えても正解にたどり着けなかったもので。お知恵を授けていただきたいわけです」





「まぁ、いい考えだな。お前の頭は考えるのに使うべきじゃない。使い道として正しいのは、それを地面にこすりつける事だな」





「・・・・・・で、そろそろ質問いいですか?」





俺がこんなにカッコいい理由、それは俺だからだ





(無視)「今、古文の勉強してるんですよ。ほら、翠星石さんがやる夫さんのせいで大学受験したでしょ? 私もせっかくだから受験にチャレンジしてみようかと思いまして。ちょっと勉強中なんですけど・・・・・」





バカとテストと召喚獣こそ東大へ行け!!





「なんでいきなりドラゴン桜ですか。そんなとこ目指しませんよ。自分の学力ぐらい把握してますから」





「なんだ、Fランク志望か。てっきり『ラブひな』読んで、「あたしも約束の男の子に会いたい。スイーツ(笑)」とか考えだしたのかと思ってちょっと焦ったよ」





「あの、それが私の話をしているって言うなら殴りますよ? とにかく、古文というか和歌の意味で理解できないところがあるのです」





「まぁ、あの時代は文学ぐらいしか才能をつぎ込む道が無かった連中がその才覚を全力で注ぎこんでギャル語やブログ作ってたような時代だからな・・・・・・ちなみにお前みたいなゆとりの脳筋は毬を蹴って遊んでた」





「失礼ですね。私だって頭使ってますよ。さっきからどこを流してどこにツッコんだらちゃんと話が進むか判断しながら会話してるんですから。とにかく、この歌の意味が知りたいのです」



『千早振る 神代もきかず 竜田川 唐紅に 水くぐるとは』





「ほう・・・・・・在原業平か。確かにお前のように邪気眼を持たぬものには分からんだろうな・・・





「で、どういう意味なんですか? 『水くぐるとは』ってなんですか?」





「そうだな。まずググれよ





「樫の木さんが電気代振り込んでくるって言うからお金渡したのにそのままパチンコ屋に消えちゃったせいで、私は蛍を捕まえてきて明かりにしてるんですよ?」





「そうか・・・・・・じゃあ、めんどくさいけど俺が教えてやるか」





「はい、それでどういう意味なんですか?」





「だからあれだよ・・・・・・千早振るで竜田川で水くぐるんだよ・・・・・・」





「あの・・・・・・教えて下さるご好意に注文つけるのは大変心苦しいのですが、もう少し噛み砕いて説明していただけないのでしょうか? 私の貧弱な理解力ではちょっと追いつけなくて」





「そうだなぁ・・・・・・ここで「そんなの知らないぴょん。百人一首なんてカルタ遊びができればいいから歌の意味なんか考えた事も無かったのデース。残念無念また来週〜」とか言ったらボコボコにされるんだろうなぁ・・・・・・」





「は? 何か仰いました?





「いや、お前みたいなアメーバ赤痢脳でも分かるように説明するにはどうしたらいいかと悩んでたところだ。よし、じゃあもうめんどくさいから適当に考えながらこの場を凌いでやる」





「(なんか違和感のある言い回しですね?)はい、それで『千早振る 神代もきかず 竜田川 唐紅に 水くぐるとは』とはどのような意味なのですか?」





「それはアレだよ・・・・・・・その・・・・・・・大吉の事だよ・・・・・・・





「大吉って、あの大吉マスター21さんの事ですか?」





「そうそう、その大吉。この歌は、大吉の人生に大きく関わる歌なんだ」





「・・・・・・これ、平安時代に詠まれた歌なのでは?」





「そう思うのが素人の赤坂見附。まぁ、最後まで聞けばお前も『納得』できるだろう。大事なのは『納得』だとジャイロ・ツェペリも言っていた」





「まぁ、分からないところはその都度質問いたしますので。お手数おかけしますがご説明よろしくお願いします」





「いいか、まず千早振ると言うが、この千早振るって言うのが・・・・・・・・・千早は、大吉がかつて愛した女だ





「あぁ、マジックアカデミーの次はアイドルマスターにハマったんですかあの人。ニコ厨に成り下がってましたから、そこから入ったんですかね?」





「え〜と、そうじゃなくてだな・・・・・・? そう、まずは竜田川からだ。この竜田川って何か分かるか?」





「そりゃまぁ・・・・・・奈良の方にある川でしょ? それぐらいは知ってます」





「いや、これは違う。『竜田川』は大吉の四股名だ





「・・・・・・あの、いつから彼は相撲取りになったんですか?」





「中学の頃、体育教師から「相撲部に入らないか?」って言われたって話を昔あいつがしてたろ? 実は・・・・・・その時に本当は「ウホッ! いいお誘い」とばかりにズッポリ入っちまって次は新弟子検査だったらしい」





「まぁ、確かに太ってらっしゃいますからねぇ。でも、なんでそんな四股名になったんです?」





「あれだよ、竜田揚げが好きだったんだよ。中学生はみんな鶏肉を揚げたものが弁当に入ってれば大喜びだ。で、この大吉こと竜田川が、順調に勝ち進んで大関になるわけだ。次にお前は『あの人にそんな力も度胸もあるはずがないのでは?』と言う」





「あの人にそんな力も度胸もあるはずがないのでは? ・・・・・・はっ!!?





「その質問は読めていたぜ! あいつが勝ち進んだ理由、そして『竜田川』をお前が明日以降調べても情報が入手できない理由・・・・・・それは、奴の出世の秘密が八百長にあったからだ・・・・・・」





「なるほど、角界の汚点として存在を消されたわけですね・・・・・・」





「お前も知っての通り、角界も大吉も汚物みたいなもんだからな。そんな薄汚れた話の一つや二つある。で、疑惑の大関・竜田川が親方に風俗に連れて行ってもらってな。そこで出会うのが千早というソープ譲だ。なんと大吉は写真指名の時点で店でbP人気の千早姫にベタ惚れ。是非筆下ろしをお願いしたいと息巻いた」





「え・・・・・・あの二次元至上主義者の大吉さんがですか? 『三次元に萌えとか幸せとか必要ないんですよ。ちょっとした困難と、解決した時の達成感。ただそれだけでいい。幸せな夢は二次元で見ればいいから』とか言ってる生粋の駄目人間が、『かんなぎ』騒動で一番錯乱してそうだった処女厨がなんでそんな事に?」





「え〜と・・・・・・写真は二次元だから・・・・・・あと、そうだな。なんか翠星石ってキャラに似てたらしい





なんという信憑性・・・・・・! これは疑う余地もなく史実に違いありません・・・・・・・!」





「だが、相手にも選ぶ権利ぐらいはある。千早は逆チェンジをした。竜田川を振ったわけだな。これが『千早振る』だ





「なるほど、風俗店っていうのも厳しいんですね」





「しかし大吉は諦めなかった。とにかくヤりたかったんだ。だから次に、その妹であり指名bQの神代という泡姫を指名した」





「・・・・・・あの人が、女性に対してそんな積極的になりますかね? それに、妹なんてキーワードがついたらあの人の血に潜む妹萎えの魂に火がついてしまうのでは?」





「うん、神代は蒼星石にそっくりだったんだ





「『僕、男の子じゃないよ。それでもいいの?』 ・・・・・・大吉さんがよく「言われてみたい。そしてそっと抱きしめてあげたい」とか寝言を垂れ流してた台詞でしたっけ」





「あわよくば、姉妹丼プレイができるかもと期待してたらしいな。理想は、7人の薔薇乙女を囲って契約の指輪をイチモツに埋め込んでハッスルマッスルするような展開だったらしい」





「大吉さんの考えそうな事です・・・・・・反吐が出ますね」





「だが、神代も大吉を見た瞬間逆チェンジを宣言。大吉は「球体関節でもいいから! スマタでいいから!!」と食い下がったが聞く耳を持ってくれなかったという・・・・・・これが『神代も聞かず』だ





「なるほど、私ですら耳を覆いたくなりますからね。気持ちは分かります。それで、下の句はどうなってくるんですか? 『唐紅に 水くぐるとは』ってどういう意味なんです?」





「まぁ、そう焦るな。大吉にも色々あったんだよ・・・・・・それで、立て続けに振られた大吉はついに気づく。「やっぱ三次元なんてダメじゃん! これからは二次元じゃん! あと、女にモテないなら相撲取りなんてヤメじゃん!」と。そして大吉は角界を離れ・・・・・・・・・・・え〜と・・・・・・と、豆腐屋になりました・・・





再就職先がおかしくありませんかそれ?





「いや、ちょうど『頭文字D』にハマってたからいいんだよ」





「なるほど、そのまま『「ワインと豆腐に旅をさせるな」ってね・・・』とか無駄蘊蓄垂れ流しながら豆腐を急いで配達しようとする大吉さんの姿が目に浮かびます」





「その後、『溝落とし』に挑戦しようとして失敗、ガードレールから飛び出して義経ばりの逆落としを決めてクビになるまで大吉の豆腐屋人生は続くわけだがそれはまた別のお話。この話では、その豆腐屋稼業をやってるところが重要なんだ」





「なるほど、そっちのお話も気になりますね・・・・・・よく生きてた的な意味で





「豆腐屋とおっぱい職人の朝は早い。その日も大吉が朝から仕込みをしつつ次の究極VS至高は豆腐勝負がいいんじゃないかと考えていると、そこに一人の乞食が現れて哀れを誘う声でこう言った。「もう何日も食べておらずこのままでは飢え死にしてしまいます。おからでもいいから分けていただけませんか?」とな。そこで、大吉はおからを丸めて団子を作ってやった」





「大吉さん、自分に大きなデメリットがなければ基本親切ですからね。まぁ、本音は『親切にしたら二次元美少女に生まれ変わってご奉仕しに来てくれるかも』とか戯けた理由かもしれませんが」





「大吉はおからのだんご大家族を作成し、乞食にくれてやろうとした。しかしそこで大吉はその女乞食の顔を見てしまった! なんという運命の悪戯か、その女乞食はかつて竜田川を振った千早姫だったではないか!!」





「・・・・・・超展開ですねぇ。今時レディコミでもそんな偶然の再会はありませんよ? まぁ、それはまだ運命の悪戯で納得できても、なんで翠星石さんそっくりの売れっ子ソープ譲がそんなに落ちぶれちゃってるんです? 引く手数多でしょうに」





「その時はまだヤングジャンプが引き取ってなかったんだよ。とにかく千早姫と再会した大吉は驚くやら怒るやら! 俺はお前のせいで相撲取りをやめる事になった! あと、単行本8巻が薄すぎるのが許せないんだぜこのジャンクめ! と、千早姫を思い切り突き飛ばしてしまったんだ!!」





「ついに女性に暴力まで・・・・・・大吉さんはどこまで落ちれば気が済むんですか!!?」





「うむ、大吉は怒りのあまり千早姫におからをくれてやらなかった。だから『からくれないに』だ





「・・・・・・・・え〜。これ、『唐紅に』でおからをくれないって意味になるんですか?」





日本語って難しいよな。スザンヌもビックリだ」





「・・・・・・まぁ、キラズとか卯の花とか言いかえられる食材ですし、そんな言い回しもあるんでしょうねぇ。驚きです」





「とにかくかつては大関としてブイブイ言わせてた大吉が、今では四股も踏まずにシコシコと二次元美少女と戯れる日々を送る駄目人間に成り下がってしまっていた。これを見た千早はたいそうショックを受けた。ああ、この人がこんな風になってしまったのは私のせいなのね、と」





「いや、それはもう本人の資質としか言えないような・・・・・・」





「しかし千早はそう思えなかった。この不始末死んでお詫びしますと、千早はそばにあった井戸に飛び込んでしまった! 千早が入水自殺をして、これが『水くぐるとは』だ





「そんな・・・・・・千早さんが死んでしまうなんて・・・・・・」





「だが、これで分かっただろう。大関・竜田川になった大吉は千早に言いよるも振られ、その妹の神代にも聞く耳持たれず、やがて落ちぶれた千早におからをくれてやらないで千早は水にくぐってしまった。これが歌の意味だ。恐らく、この歌を作ったのは神代だろうな。確かに大吉は罪に問われないだろう。しかし、姉の死因になったのも確かだ。その無念を誰かに聞き届けてもらいたくて、百人一首にこの歌を紛れ込ませようと推察できる。どうだこのキバヤシのように理路整然とした論理の旋律は。俺の事は鳴海清隆2世と呼んでもいいぞ」





「そんな悲しい歌だったとは・・・・・・! それにしても私は大吉さんが許せません! 目の前で千早さんを死なせておきながら今もって駄目オタライフを満喫中とは・・・・・・私、大吉さんをボコボコにしてきます!!





「よし、一切手加減するな。多分、あいつは否認するだろうからまず喉を潰して口応えできなくしてやれ





「はい! ・・・・・・ところで、その説明から『水くぐる』、まではわかったんですけど。最後の『とは』ってなんですか『とは』って?」





「お前も変なところで細かいね。『とは』ってーのはあれだ、千早の本名兼ハンドルネームだったんだよ。バーチャルネットアイドルとは12歳だったんだよ」





「なるほど、これで歌の意味が全て分かりました♪」


〜了〜