全てを捨てた男の歌





さて、皆さんは、『一年生になったら』という歌をご存知だろうか?
まぁ、『みんなの歌』に載っている歌なので、知っている方は多いと思う


ならば、この歌の歌詞には

『一年生になったら、友達100人出来るかな?』

という絵空事が登場することも、ご存知であろう


だが、例えそれが
ただ、大人の幻想に彩られただけの絵空事でも
これから小学校に通うことになる幼稚園児達にとって、その歌は

未知への不安を拭い去り、夢と希望を与えるのであろう

『みんなの歌』には、そういった、子供達を歌を通じて、成長させようという意図の込められた歌が数多く存在する







だがしかし

そんな、子供達の成長を願った歌が集められたみんなの歌の中に

一際異様な歌があるということを、みな様はご存知だろうか?

下手をすれば、これからの子供達の運命を、大きく狂わせてしまうのでは?

と、危ぶまれるほどの危険性を持つ、その歌の名は






『勇気一つを友にして』


もう、歌のタイトルが全てを物語っているが

一応、説明しておくとこの歌、古代ギリシャ神話のイカロスの話がもとになっている


ギリシャ神話…

これは、星座の由来にもなっているので、結構有名だと思う

だが、神話と呼べば、響きはいいが、実際はとんでもない代物なのだ

まず、全知全能と呼ばれる、大神ゼウスからして無茶苦茶だ

例えばおうし座は、星占いにも出てくるので、まず皆知っていると思うが

あれは







ゼウスが美女を拉致するために化けた牛

がモデルになった星座なのだ

しかも、美女を拉致した理由は







結婚したいから


という、ストーカー以外の何者でもない理由だ

現代では、間違いなく罪に問われることだろう

しかも、こいつには、すでにヘーラという妻がいるのだ







誘拐に加えて重婚


神のくせにどこまで罪を重ねれば気が済むのだろう?

情状酌量の余地は無い

だが、わし座に至ってはもっとひどい


また例によって、美形を拉致した時に化けたというわしがモデルなのだが


このとき拉致したのは、美形は美形でも







美少年


ここまで来ると、多分、精神鑑定で無罪になれるだろう

もし、良い子がこのことを知って、親に

「何故美少年をさらう必要があるの?」

と聞かれた時。親は、返答に詰まり、悩み、固まるだろう

そんな、とんでもない異常者が神である世界の出来事を歌にして

果たしてまともなものに仕上がるのだろうか?







まず無理だ


当たり前といえば、当たり前の話なのだが、一応、検証してみることにする

まず、出だしはこうだ

♪昔、ギリシャのイカロスはロウで固めた鳥の羽、両手に持って、飛び立った



この時点ですでに駄目だ

まぁ、神話の世界での出来事なので、この



鳥人間コンテスト以下の技術力については触れずにおくことにする


何より、いちいちそこからツッコんでいたら身が持たない







まぁ、そんな訳で、ロウで固めた翼はいいとしよう。だが



翼を手に持つのは、いくらなんでもヤリスギだろう


うちわで空を飛ぶようなものだ

今時ギャグ漫画でもそこまではやれない

だが、これで飛べてしまうのだから、アホの一念とは凄いものだ

では、さらにひどい後半いってみよう

♪雲より高く、まだ遠く、勇気一つを友にして







………

全てを否定しやがった

夢も

希望も

翼を作ってくれた父親さえも







だが、未知の世界である大空へ、単身飛び立ったのだから、勇気以外の感情を持つ余裕など無かったのかもしれない

そして、何より、この歌は、そんな、未知の世界へ飛び立つような勇気を持て

と子供達に訴えているのかもしれない







現在、子供のアイドルの名を欲しいままにしているアンパンマンは


愛と勇気だけが友達だと言ったが、


イカロスはそんな愛などという幻想に捕らわれるほど愚かではない







むしろ。アンパンマンが唱えている、愛などというものは


余分な心の贅肉

つまり見栄に過ぎない







だが、イカロスは違う

大空を自由に飛び回るために


不必要なものは全て切り捨てている


ただ勇気だけを胸に秘めた

北斗の拳の悪役のような漢の中の漢


だということを、作詞者は言いたかったのかもしれない



しかし


この後、イカロスは、父親に

「ロウが溶けるから、太陽のそばに近づきすぎてはいけない」

と言われていたのにもかかわらず、太陽に向かって飛んで

結局翼は溶けて、落ちて死んでしまう



…勇気か、ソレ?


この場合、一番しっくりくる言葉は

勇気ではなく馬鹿であろう







なんてことだ

大空を飛び回るために、全てを切り捨てて飛び立ったイカロス

しかし

そのためにイカロスは、人が人であるために、最も必要な





知能さえも捨ててしまっていたのだ


果たして、この知恵も勇気も命さえも失ってしまった


彼に、子供達は何を学ぶというのか?







というよりむしろ、これ

子供が真似したらどうする気なんだ?


だが、幸い、まだ『勇気一つを友にして』を読んで

狂気に走った子供達の話は聞いたことはない

幼稚園児にも、航空力学の基本中の基本は分かるようだ

子供達に、歌を通じて、これからの人生に必要なモノを教える

そんな、『みんなの歌』の中に彼はいる、何故なのだろうか?

もしかしたら、彼は


人が絶対に失ってはならない何か


をその身を持って教えているのではないだろうか?







そして、それこそが、彼がみんなの歌に載っている理由ではないだろうか?

ツッコミ所満載の『みんなの歌』…

その中でも、一際異彩を放って輝く彼を、敬意の念を持ってこう呼びたい


良い子の反面教師、と