●「ここは俺に任せて、早く!」島帰りの龍(助け人走る)

大奥からの女中の脱走の手助けをした助け人一味だったが、公儀の追手はすぐそこまで迫っていた。
そこで龍は一人舟の渡し場に残り、命を懸けて追っ手を食い止めることを決意する。
島帰りの龍を演じたのは、特撮ファンなら知らない者はいない稀代の名優・宮内洋。
ヒーロー宮内がこんな台詞を吐いたというだけで、それ以上何の解説を必要としようか。

●「かんざしを使う女殺し屋。華麗な殺人!」(必殺必中仕事屋稼業)

必殺必中仕事屋稼業第四話「いかさま大勝負」のビデオ版のパッケージに書いてある煽り文句。
ここに言う女殺し屋とは元締の嶋屋おせいの事を指しているのだが、何も知らない人間がこれを見たら、その女殺し屋こそが殺しのターゲットだと勘違いする可能性も高い。
もっと考えて煽り文句を作ってくれ、松竹ホームビデオ。

●「駄目だ。俺はかかあを始め、人様は信用しねぇことにしてるんだ。」中村主水(必殺仕置屋稼業)

仕置屋屈指の名場面、主水と市松の対決シーンより。
主水の背後をとり、急所に得物の竹串を刺してとどめを刺そうとした市松だったが、その時脇差の切先が主水の背中越しに自分の腹に突き付けられているのに気付く。
「殺しの数は俺の方が上だぜ」とハッタリをかける主水に、「刀引いてくれや」と和解とも取れる申し出をする市松。
しかし主水は一歩も引かず、「他人は信用しない」というこの一言で、遂に市松を退かせることに成功した。
危機的状況にあっても冷静さを失わず、狡猾ともいえる市松との駆け引きを見事に制した主水。
たった一分足らずのやりとりだが、中村主水の殺し屋としての凄みを伝えるには十分すぎる演出だった。

●「生きるも地獄、死ぬも地獄・・・何処かで仏に会ったなら俺は仏を殺すかもしれぬ・・・」印玄(必殺仕置屋稼業)

裏稼業再開に当たり主水は子飼いの密偵・捨三に色々と調査をさせていたが、捨三は独断で顔馴染みの托鉢僧・印玄を仲間に引き入れてしまう。
秘密を知った者は生かしておけないと、風呂屋の釜場で薪をくべる印玄の背後で刀の鯉口を切った主水だったが、炎を凝視しながら不気味に笑う印玄を見て、再び刀を収めた。
一説には主水が印玄の迫力に圧倒されたためと言われるが、実際のところそれはわからない。
だが印玄のこの世に対する深い絶望感と虚無感が、少なからず主水の心を揺り動かしたのは間違いないだろう。

●「鳩豆」(必殺からくり人)

この一言だけで何を指しているかがわかるようなら、キミはもう立派なマニアだ。

●「私達は『涙』としか手を組みません。」花乃屋仇吉(必殺からくり人)

からくり人元締・花乃屋仇吉と宿敵・曇りとのやりとりの一場面。
元来シリーズの持っていたテーマ、勧善懲悪のアンチテーゼとしての「必殺」を否定した台詞とも取れる。
実際この「必殺からくり人」には、金を受け取らず「善意」で相手を仕置するシーンが多々見られる。
にも関わらずこの作品がシリーズの中でも傑作扱いされているのはやはりその根底に、従来のシリーズと元を同じくする、弱者を踏み躙る悪に対しての根深い怒りが見えていたからであろう。

●「くぉーりょーだせーっ!」仕掛の天平(必殺からくり人)

からくり人花乃屋一家と曇り一味との最終決戦、敵の奇襲を受け盲目になった天平は、松明と自前の花火玉を振り回しながら一味のアジトに殴りこんだ。
その時にしきりに叫んでいたのがこの台詞である。
「曇りを出せ」と言っているものと思われるが、とてもそうは聞こえないぞ森田健作。
ちなみに天平の死に様は、導火線に火のついた花火玉を投げようとしたところ蹴つまづいて転んでしまい、投げるのが間に合わず自爆してしまうというものだった。
笑っていいシーンなのだろうか?

●「元締・虎の用心棒、死神の銛が不気味!」(新必殺仕置人)

第一話「問答無用」のビデオ版のパッケージに書いてある煽り文句。
死神の不気味さは否定しないが、明らかに着眼点を間違えている。
ちなみにマニアの間では有名な話だが、死神に殺される仕置人の役を演じているのは若き日の阿藤海である。

●「私は世の中というものが、人間というものが何もかも信じられなくなりました。私は今後徹頭徹尾手抜きで行きます。仕事なんか一切しやしません。うすぼんやりの昼行灯で結構です。」中村主水(新必殺仕置人)

仕置人仲間の市松を護送中に逃がした責任を問われ、牢屋見廻りに左遷されていた中村主水。
だがある日、牢破りを未然に防いだ功績を認められ、めでたく定町廻りに復帰することとなった。
裏稼業とも縁を切り、同心としての職務に一層燃える主水だったが、実は定廻り復帰を認めてくれた上司・筑波は牢破りの際主水に殺された男の隠し金狙っており、その事実を知っているかもしれない主水に対して仕置人を差し向けていたという事実が発覚する。
そして主水はこの台詞を吐いた後筑波を斬って捨て、再び裏稼業へと足を踏み入れた。
血に濡れた主水の運命は、一般人としての幸福を掴むことを許さなかった。
真っ当に生きる事に全てを懸けていた主水の絶望感は、どれほど深いものであったか・・・

●「惜雪」(新必殺からくり人)

殺しのテーマが定番の主題歌アレンジではなく、第一作「必殺仕掛人」の主題歌「荒野の果てに」のメロオケだったために、あまり覚えがよくない新からくり人の主題歌。

●「悪用した催眠術!勝てるか先生」(翔べ!必殺うらごろし)

第14弾「翔べ!必殺うらごろし」最終話のサブタイ。
正しくは「おばさん壮絶死!先生怒りの旗竿」であるべきだというのは、この人(http://www2u.biglobe.ne.jp/~hima-ken/uragoro.htm)の意見。

●「かわいそうだと言っては泣き、憎いと言っては泣く。ま、こんな奴が一人ぐらいいたほうがいいんじゃないかと思ってな。」中村主水(必殺仕事人V)

仕事を偶然目撃してしまった医者志望の受験生・西順之助。
その順之助を主水は仲間に引き入れようとし、こう言って仲間達を諭した。
以前の命懸けで裏稼業を行っていた頃の主水なら、仲間に引き入れているどころか躊躇なく順之助を斬り捨てていただろう。
悪人を闇に葬る極悪人「仕置人」が、正義の暗殺者「仕事人」と化した瞬間。
緊張感の欠けた勧善懲悪物語と化した後期必殺を象徴した、ある意味での名台詞である。
後期必殺は何も考えなければ結構楽しめるものではあるのだが、前期必殺の重さ・深さを知った人間にはもはや足りない代物である。

●「人が人を殺す。だが今は、金が人を殺す。」(必殺!V 裏か表か)

映画「必殺!V 裏か表か」オープニングより。
この場合「金が人の心を殺す」と取るのが妥当と思われる。
豪商にとっては小銭と言える番頭の葬式代を出し惜しみし、弱みを握られそうになったと見るや主水を社会的に抹殺しようと企てた両替商組合の姿はまさに、金に殺された亡者そのものであった。

●「これでも私は、恐ろしい女ですか?」おこう(必殺!V 裏か表か)

主水達仕事人一味の抹殺を目論む両替商組合との最終決戦。
竜、壱、参という尊い犠牲を出しながら元締・真砂屋徳次のもとに辿り着いた主水と秀が見たものは、おこうに刺されて既に息絶えている真砂屋の姿だった。
どうしたことかと聞く主水におこうは「不貞のかどにより真砂屋徳次は成敗しました」と答え、そしてこの台詞が続く。
正直、おこうが真砂屋徳次の命を生贄にして自分一人だけ助かろうとしたように映りました。
怖い女どころか、この女を殺さねば物語は終わらないような気すらしたのだが・・・

●「ファミコン版『必殺仕事人』

1991年にバンプレストより発売されたアドベンチャーゲーム。
仕事人実働隊に主水・鉄・秀・勇次・政・竜、脇役におりく・左門・加代・順之助という、マニアでなくても不安になりそうなあまりにも豪華すぎる出演陣。
だがストーリー構成はなかなかのもので、2時間スペシャルや映画版に流用されてもおかしくないほどの出来になっている。
しかも戦闘シーンでは、各仕事人ごとにそれぞれ攻撃アニメーションがついているというサービスぶり。
マニアなら是非持っているべき作品である。
ちなみに俺は、中学時代に中古屋で2000円で購入しますた。

●「セガサターン版『必殺!』

1996年にバンダイより発売された。
臓器売買を行う悪徳南蛮人を退治するのが目的の横スクロールアクションゲームだが、出来はクソそのもの。
ゲーム性が悪いのは言うに及ばず、主水の刀が伸縮自在だったり、鉄が波動拳を放ったり、勇次の攻撃方法が三味線の弦による刺殺(not絞殺)だったりと、もう何からツッコミ入れてよいものやらという始末。
しかも主水と鉄はともかく、秀と勇次のコスチュームが普段着のままというのは実にいただけない。
映画「主水死す」公開に合わせて急ぎ足で制作されたようであるが、ここまで原作に対する愛や敬意というものが感じられないキャラ物作品も珍しい。
コレクターアイテムとして以外は決して用をなさないであろう一品。
私ゃこんなモノ持っていませんよ、ええ。



管理人からのコメント

B・Bさんの『必殺名台詞集』第二弾!!

やはり、主水の台詞が光ってますね
ビデオ版のパッケージにイカレた文章が多い分{笑}

ちなみに、私は宮内洋と言ったらズバットですので
もし『同心大疑惑』までに途中参加していれば、主水に対し
「中村主水・・・日本一の仕置人・・・だがその仕置、日本じゃあ二番目だ」と言ったり
悪人に対し「人間を廃人へと変える阿片を密売し、あまつさえそれを嗅ぎつけた同心を殺した越後屋、許さん!」
と口上を切り、最後は「越後屋! 飛鳥五郎という男を殺したのは貴様だな!?」と問い詰め
『この者、阿片密売の犯人』と書いたカードを死体に添えて去っていくというイメージが{爆}

もう助け人でもズバットでもない{笑}

ちなみに、わからなかった人に説明すると
『鳩豆』とは「負け〜て悔し〜いは〜ないちも〜んめ〜」です

え?まだ分からない? 許せねぇ! 叩っ斬ってやる!!{爆}

やはり、この印玄の台詞には凄みがありますね
この後、印玄の破滅的な過去を知ると、ますますこの言葉に震えます

『うらごろし』で名台詞と言うと、おばさんの台詞しか出ません{笑}
「ちょいと、落としたよ」から始まって、「あんたの命だよ!!」に繋がる演技は市原悦子にしか出来ません

最終回は、初見で見るとギャグにしか見えませんが
市原悦子と火野正平の演技が秀逸で、涙を誘いました
サブタイトルに関しては、もう諦めた方がいいと思います{笑}
『手が動く! 画家でないのに絵を描いた』辺りから段々ギャグに走ったような{笑}

順之助は、秀、勇次に次いで後期を代表するキャラになりましたね
まぁ、最後が報われませんでしたが、これもまた裏稼業の宿命
それを言ったら、報われた死に様なんて無いに等しいですし

ファミコン版、ニューファミコンとセットで買おうかなぁ・・・
セガサターン版、500円までなら出してもいいなぁ{笑}

ちなみに、ページタイトルは『必殺からくり人―富嶽百景殺し旅―』最終回の一番最後の葛飾北斎の台詞です



素敵な台詞集をくれたB・Bさんのサイトはここ!!