『必殺』心に残る名台詞集


●「それじゃあ、また新しい人を探しますか?」藤枝梅安(必殺仕掛人)

新入りの仕掛人・神谷平十郎と一緒に仕事をすることになった梅安。
しかし殺しの相手の寝間にはなんと金のためにやむなく身を売った平十郎の妻がおり、泣きながら詫びる妻を、平十郎はやむなく斬殺してしまう。
その後平十郎は姿を消し、元締・音羽屋半右衛門は「やはりあの人はこの世界に入れるべきではなかった」と呟く。
それを受けての梅安の台詞。
或いは慰めの意図も含まれた言葉かもしれないが、こんな事態になった後でこんな台詞をニヤリと笑いながら平然と言う梅安に、正直背筋が寒くなった。
まともな神経ではこの稼業は続けられない、ということを暗示しているのだろうか。


●「俺達が殺しをして、少しでも世の中よくなったか? 俺達に殺られた奴らにも、妻や子供がいたかもしれないんだ・・・」糸井貢(暗闇仕留人)

病気の妻の薬代を稼ぐため、半ば仕方なく殺し屋に身を堕とした蘭学者・糸井貢。
だが妻は裏稼業同士の抗争に巻き込まれて命を落とす。
その反動で冷酷非情な仕留人と化したかに見えたが、「蘭学者」としての糸井貢は、激動の時代に心を揺らしていた。
誰よりも学があるために世の中が見えていた貢には、社会を少しも変えられない仕留人として生きることの空しさに耐えられなくなっていたのだ。
そして裏稼業としての生き方に大義名分を見出そうとした男は、裏稼業において命を落とした。
このようなあまりにも重く深い台詞を吐ける人間が殺しに手を染めた時点で、もう悲劇的結末は約束されていたのかもしれない。


●「一筆啓上」(必殺仕置屋稼業)

メールの件名をこれを書き、文頭に「こんち日柄もよいようで」、そして「あらあらかしこ」で締める。
これで何らかの反応を見せたらそいつもマニアだ。
冬などの乾燥して火事の起こりやすい季節には「一筆啓上、火の用心」としても可。


●「金力で次々と妾を作るなんて奴は許せねぇ!」(必殺仕置屋稼業)

第一話「一筆啓上地獄が見えた」のビデオ版のパッケージに書いてある煽り文句。
貧乏なモテない君のひがみに聞こえるのは俺だけだろうか。


●「金だけでいいんだ。」中村主水(必殺仕置屋稼業)

仕置から身を引いていた主水だったが、悪徳商人に手篭めにされて命を絶った姉妹の姿に怒りを燃やし、裏稼業に再起することを決意する。
その仕置を持ちかけてきた髪結いのおこうは、金と一緒に恨みを綴った遺書を渡そうとするが、主水はそれを拒否した。
「消極的な正義」の代行者という意識を完全に捨て、プロフェッショナルとして生まれ変わった瞬間。
迷い故に命を落とした貢の死に様は、主水にとって深い影響を及ぼしたのであろう。


●「あんたこの〜どう思う」(必殺仕業人)

何か面白いもの、興味を引くようなものを見つけた時、友達にこう言って教えてあげよう。
どってことねえと思われたら、それはそいつが菜っ葉ばかり食ってやがるからだ。


●「私ハ待ッテル一報ドウゾ」(必殺からくり人)

メールの返信などが必要な時には文末にこう書いておこう。
ちなみにこれはカタカナ表記以外は認められない。
平仮名にすると相手によっては命の危険すらあるので要注意。


●「そう・・・あんたの思った通りだよ諸岡さん。」中村主水(新必殺仕置人)

辰の会に殴りこみをかける直前、主水はこう言って諸岡に自分の正体を明かした。
この後で全シリーズ中屈指の名場面、最終決戦第一幕・主水による血祭りが始まる。
必殺マニアの血を一瞬で沸騰させる名台詞。
こればかりは見たことない人間にはわからない。


●「丸々太ってやがってね。女の子なんだ。」中村主水(必殺商売人)

暗黒街の大物と奉行所の生贄となったおせいを救うため、新次はその身を犠牲にしておせいを救出した。
主水は妻・りつの出産を間近に控えながら敢えて新次の仇討ちに出向き、見事本懐を遂げて帰宅するも、待っていたのは生まれた娘が死産だったという悲しい知らせだった。
江戸を離れようとするおせいは最後に生まれた赤ん坊のことを聞き、主水は応えて無事子供が生まれたと返した。
去り行く仲間に悲しい嘘をついた後、娘の野辺の送りに参列する父親としての主水の顔は、あまりにも切ない。
「必殺」を見て涙腺が緩んでしまったのは、後にも先にもこのシーンだけである。


●「男もつらいし 女もつらい 男と女はなおつらい」(必殺商売人)

主題歌「夢ん中」より。
「男と女」というのは、必殺商売人の主要テーマである。
主水とりつ、新次とおせい、そして敢えて言うなら、主水と死産だった娘。
余談だが、個人的に小林旭の歌の最高傑作はこの「夢ん中」だと思っている。


●「馬鹿野郎、この金は恵んでやるんじゃねぇ。貸してやるだけだ。お前達が大人になったら、何処にいようと必ず返して貰いに行くからな。」唐十郎(富岳百景殺し旅)

廃寺に住み着いた孤児達は、一人の老人を親とし、河童に化けて盗みを働きながら日々を食いつないでいた。
しかし老人は悪人の手にかかり、子供達は途方に暮れてしまう。
クライマックス、唐十郎が金を手渡し「俺達は物乞いじゃない」と断られた後、こう言って強引に受け取らせた。
錠ほどの熱血漢でもなく、市松ほどの冷血漢でもなく、沖雅也が演じたにしては中途半端な役で評判の悪い唐十郎だが、こういう二枚目的な台詞が実に様になるキャラだった。


●「異色の必殺シリーズ第14弾!」(翔べ!必殺うらごろし)

スカパーで使われていたうらごろしの宣伝文句。
怪奇現象をテーマにした時代劇は確かに異色と呼ばれて然るべきではあるが、劇中にターザンやピラミッドを平気で登場させた第22弾「必殺仕切人」のブチ切れっぷりを忘れてはならない。


● 「何を話されたのか、もう忘れちまいやしたよ・・・あんたは俺を育ててくれた。叱ってもくれた。寒い日は懐の中にも入れてくれた。何をやろうが、あんたは俺のおっ母さんだ・・・違いますかい?」三味線屋勇次(新必殺仕事人)

仕事人・おりくは、かつて外道の仕事人をその手にかけた。
そして亡骸にすがって泣いていたその仕事人の子供・勇次を引き取って育てることにしたのだが、父親を殺してしまったという罪悪感は、二十数年経った今もおりくを苛んでいた。
そんなある日、主水達が自分の正体を嗅ぎつけてきたことをきっかけに、おりくは勇次に過去を明かすことを決意する。
勇次に殺されることすら覚悟していたおりくだったが、勇次は何事もなかったかのようにその過去を水に流したのである。
家族の絆というのは血の繋がりではない、ということを改めて思い知らされた台詞。


●「主水さん・・・昔はよかったねぇ・・・」お夢(必殺!主水死す)

「主水死す」を見た後、鑑賞前の期待の大きさを懐かしんで思わず観客が言ってしまう台詞。
前期必殺シリーズを知る人間が、後期のあまりの変容ぶりに思わず呟く言葉でもある。




管理人からのコメント


あ〜もうやっぱ『必殺』はカッコイイなぁ!!
どれもこれもが名台詞揃いで、言う事無いですな
中でも、私のベストはやはり「そう・・・あんたの思った通りだよ諸岡さん。」ですかね

このシーン始めて見た時、本気でシビレました
あえて『自分が仕置人ですよ』ってハッキリ言わないところが良かったです

まぁ、語ると長くなるので多くは語りませんが・・・
うらごろしが異色と呼ばれても、駄作にならなかったのは
一重に市原悦子や火野正平の演技の素晴らしさがあったからですな

仕切人は・・・中条さんが可哀想だと思いました
ある意味、全話見てみたい作品ではありますがね{笑}

主水さん・・・昔はよかったねぇ・・・

後期はせっかく秀や勇次という
エンターテイメント性に富んだ名キャラが揃ったんですから
前期のハードなストーリーをあわせれば、バンバン名作が生まれたでしょうに・・・

多分、前期派が後期を嫌う理由は、他にも
前期で散々掘り下げてきた中村主水というキャラクターが
後期になるにつれておざなりになってしまった事が大きいかと
仕置人、仕留人、仕置屋稼業、仕業人、新仕置人、商売人と移り変わり
言葉では言い尽くせぬ思いの推移がありましたからねぇ・・・中村主水という漢には

せめて、『主水死す』では
糸井貢が残した言葉に対しての
シリーズを通しての決着をつけて欲しかったです

俺達が殺しをして、少しでも世の中よくなったか? 俺達に殺られた奴らにも、妻や子供がいたかもしれないんだ・・・

職業殺し屋としての必要悪の必要性を全否定しましたからねぇ・・・
『解散無用』では、鉄を主軸として仕置人としての生き様を全て描ききってくれましたから
『主水死す』では、主水を主軸として、殺し屋としてのけじめをつけてから死んで欲しかったです



素敵な台詞集をくれた
B・Bさんのサイトはここ!!