範馬刃牙
第294話「ある男の憂鬱」
第295話「栄えある光」
今週294話と、その次にあたる295話は、
延々と勇次郎のモノローグが続く勇次郎トークショーです
まぁ、内容に関してはいっそ最近チャンピオンで流行りの3倍祭りって感じで、
3週に1回の感想で済まそうかなとか邪な考えが浮かんだりするんですが
WEB拍手で、
>今週は来週とセットにするとして、古いバキ感想なるべく月曜日までには・・・!
お願いしますよ〜。最近忙しくってバキ情報はココでしか習得できないんですから(せかすなよ)
とか言うありがたくも申し訳ないコメントを貰ったので、
ここは頑張って今週のバキをなるべく手短にで簡単に説明いたしましょう!
と、言うわけでまずは2週分の勇次郎のモノローグをまとめて載せてみます
「そりゃもう・・・・・・
退屈で・・・退屈で・・・
辟易していたんだ・・・
人生ってやつに・・・・・・・・・
いつだったか・・・・・・あっちからも こっちからも 集まっちまった
死刑囚・・・・・・5名・・・いい風貌構えの5名だった
合言葉は フフ・・・・・・敗北を知りたい・・・?
フフ・・・・・・一人は・・・・・・俺が葬ったっけ・・・
ああいうのって理解るよ・・・痛いほど実感る・・・
いつしか・・・立っていることに気付いたんだ・・・・・・
頂上へ・・・・・・目指すべきものが 何一つない場所だ・・・・・・
踏み出せる道がない・・・・・・だからといって・・・
歩かねェって訳にゃいかねェわな
歩み出したさ ”道”を探しに・・・・
理解んねェだろ オマエたち
”手こずる”――ってことがないのは悲劇なんだ
理解んねェだろオマエたち
”強さ”も度を越すとよ 夢を奪い去っちまうんだ
強さも度を超すとよ 人生から光を奪っちまうんだ
富・・・・・・名声・・・・・・地位・・・・・・
この強過ぎる腕っぷしが 全てに手が届いちまう
理解んねェだろ オマエたち
強過ぎちまって俺は 手こずれねェんだぞ!!?」
「質問 強ければ強いほど 手に入らないものってなァ〜んだ
答え 栄光 何・・・・・・? 違う・・・?
強くなければ栄光は手にできない?
ウム・・・・・・なるほど 一理ある
確かに栄光をものにするためには
強さは欠かせぬ要素だ
だが皆の衆 もしその栄光とやらが
端っから手の内にあるとしたら
皆の衆ならどうなさるんだい・・・・・・?
たとえば まるで・・・
缶ジュースでも買いに出掛けるように
その栄光とやらの場所まで歩いて行き
自販機で缶ジュースを入手するように栄光を手にする
そこには 挫折障害の一切が存在しない
皆の衆・・・・・・手にした缶ジュースに達成感はあるかい・・・?
皆の衆・・・・・・そのジュースを 栄光と呼べるかい・・・!!?」
はい、これが勇次郎の主張ですね
うんうん、分かります。万能な人間だったら達成感なんてありませんよね
「力みがなくては解放のカタルシスはありえねぇ」と勇次郎も言っていましたが、
最初から最高の力み状態が普通なら、勇次郎にはカタルシスが無かった事になります
誰からも最強と思われ、憧れられていた勇次郎こそ、
実は誰よりも力を持っていた事に苦しんでいた被害者であったと……
要するにまぁ、極悪なラスボスにも悲しい事情がありましたよって話です
多分、鬼太郎の頭の上で目玉のおやじが「本当は可哀想な奴だったんじゃよ・・・」とか言ってる頃合いです
しかもこの台詞、ひたすら息子にボコボコにされながらの台詞です
ゲームで言うなら、HPが半分を切って段々と弱い言葉が出てくるようなイベントです
なんかもう、勇次郎があまりにも無敵過ぎて、露骨に負けフラグを立ててきたって感じですね
単なる親子喧嘩ではなく、もはや板垣先生&バキがタッグを組んでなんとか勇次郎を倒そうとしてる感じです
もしかしたら、そのうちいきなり「実は勇次郎は巨漢のロシア人だった」「勇次郎の得意技はムエタイだった」
などの負けフラグがもこもこと生えてくるのかもしれません(嫌過ぎる展開)
死刑囚もそうでしたが、勇次郎はワガママですね
敗北を知りたい=自分の人生を充実させたい、と言う目的があり
その目的のために全力で他人をボコボコにして歩いていました
人は大なり小なり自分の目的のために他人をないがしろにしますが、こいつらは度を超えてました
力とはワガママを通すために必要なもの、とは言っていましたが他人を顧みない事とは話が別で
要するに、「細かいワガママは全部通してきたけど一番のワガママは通せないんだぜ。俺は可哀想だろ?」って事で、
知らんわボケとしか言いようがありませんね
強過ぎるがゆえに持つ苦悩とか言えばカッコいいんですが、
そこら辺、「なんでバキの母親を殺す必要があったのか?」って事と絡めて
もっと勇次郎の異常性と、栄光に対するあこがれなんかを語ってくれればよかったのに
「本当に欲しいものこそ手に入らなかった悲哀」とかを血が滲むように吐露してくれればまだ共感できたのに
ただ「辛いわー。望むものがなんでも手に入って辛いわー」って言われても、
「地獄のミサワかお前は」以外の感想がありません
常に満腹で餓える事のない人間が「空腹で美味い飯が食える奴にはこの辛さは分からない」とか、
病気をした事がない人間が「俺は健康のありがたみを知る事ができない」とか、
もっと言えば平和な日本で何不自由なく暮らしてる人間が「俺の人生にはスリルが足りない」とか、
「持ってる人間が無いものねだりしてる」だけなんで、
子供がワガママ通し過ぎてもっとワガママになってるだけの駄目スパイラル状態です
返す返すも、強敵としての父・勇一郎との関係が無かったのかとか
挑まれたがゆえに殺してしまった妻は、「手に入らないもの」では無かったのかとか
そういうファクター全部取り払って「最強だから一番を目指せない」のが辛いとか言われても、
勇次郎の人生が薄っぺらく映るだけで魅力を損なうだけだと思うんですけど
まぁ、だからといってこうやって勇次郎が悩んでるのに
294話の引きで無言で金的かますだけの息子もどうかと思いますが
>ようするにあれですね…勇次郎の悩みもバキには金的イッパツ分の痛みって事ですね…orz
とりあえず勇次郎をボコボコにしてますが、
バキ君は波乱万丈型の人生なんで、この先勇次郎みたいな悩みは無いでしょう
バキ君は「父親に勝てれば最弱から二番目でいい」と言っていました
これはまぁ、少年漫画主人公のメンタルとしては非常にアレなものですが、
少なくとも「最強だから退屈してるんだい」よりはよっぽどマシな精神構造です
なぜなら、バキ君は戦った相手との友情を重んじ、愛情を重んじ、人の心を重んじています
……自分で言ってて今、非常にうそくさいとか思っちゃうのがバキ君の駄目な点なんですが、
とにかくバキ君には最強になっても、その人生を空虚なものにさせない価値観があります。多分
腕力で手に入らない類の栄光と言うものを、バキ君は知っているのです。好意的に解釈すれば
勇次郎は、栄光がすでにあってたどり着けないとか言っているわりには、
じゃあそのたどり着けないものにどうやって辿り着くかという思考を放棄しています
ただいたずらに腕力を振り回し、自分の思惑を通し、それでも現状に満足できない
一番ワガママな部分を腕力で通せてない、言わば中途半端な状態です
仏教系哲学だと、こういう時は開きなります。極論になりますが
東洋系の哲学は自分を見つめ直す事から始まるので、
持ってない人は「持ってなくてもいいじゃないか」と自分を認める事から始まり、
勇次郎はならば「持っていてもいいじゃないか」と己を肯定する道があります
強さをあえて手放し、栄光を求めて生きるもよし、
栄光を諦め、ただあるがままに生きる事を肯定するもよし、
ようは「自分を納得させる道」なんていくらでもあるわけで
勇次郎の言い分だと、強さによる栄光が自分に手に入らないと求めるわりに、
栄光を手に入れるためには必要かつ、邪魔になっている強さから離れる事ができていません
強さに辟易しつつ、しかしその強さに依存して生きている
それは勇次郎が自分の力に振り回されて生きてるって事にほかなりません
ここまで引っ張って、その結論もひじょ〜〜〜〜〜に嫌なので、
1つ、勇次郎が栄光を手に入れる方法を模索したと考えますと
勇次郎は、「手に入らない栄光」を自分の血族、バキの成長に求めたのではないでしょうか?
世界中を放浪しても、自分の思い通りにならないものは無かった
ならば自分の思い通りにならないものを作ろうと、範馬の遺伝子にそれを求めたと
それぐらいやってないと、勇次郎が「栄光欲しいよー、栄光欲しいよー」と思いながら、
実質栄光が手に入るような努力をなんにもしない口だけニートみたいな事になってしまうので
このまま勇次郎の株を下げるだけの展開になるのは勘弁してほしいなぁと、そう思います
というかですね、平たく言ってしまうと勇次郎のこれはいわゆる
榎木津症候群ですね
漫画やアニメで、わりとよくいる「どんな分野でも天才的だから人生に退屈してる」ってアレです
分かり易い例だと先に言った榎木津礼二郎や近年のメジャー所では涼宮ハルヒと言った
精神年齢に難のある天性のトラブルメイカー達に与えられる称号です
この手のキャラは大抵、「自分とは違う価値観の持ち主」に出会うと、
「こいつすげぇ! 自分に無いものもってやがる!」と勝手に勘違いしてデレるんですが、
勇次郎の場合、力以外の価値観には興味がないので榎木津症候群の治療難易度がダダ上がりですね
「父親の病気を治したい」ってバキ君の言い分はかなり的を射ていたんだなぁと思いつつ、
勇次郎が劣化榎木津症候群キャラになりそうなのが残念だってのがここ2週の感想のまとめです
ちなみに、余談ですが勇次郎タイプの榎木津症候群の持ち主として、
私がもっとも感激した生きざまをさらしたキャラが一人いるんですが
その男の名は、秋葉流と申します
私と同年代の人ならこの時点で納得してくれたと思います
「誰?」って思った人はいいから『うしおととら』を全巻読んでください
勇次郎がなんでもできてしまう人生に飽いていて、それを鎮める強者を求めるなら
ぜひともバキ君に、勇次郎に吹き続ける風を止めてやって欲しいと思うものです
言っててまぁ、バキ君じゃ役者不足だよなぁと思わんでもないですが(オイ)
しかし『天才』キャラはこういうめんどくさい奴が多いんですが、
勇次郎には安易にその『天才』カテゴリに入って欲しくなかったんで、複雑な気分ですな