範馬刃牙
第190話「あの言葉があったから・・・」
グラップラー時代以降、主人公の評判はぐんぐん落ちて行きました
リアルシャドー、デート、SAGA、地上最強には興味ない、その間実に2秒etcetc・・・・・・
おかげですっかり主人公は不人気扱いです
グラップラー馬鹿特集とか名前までネタにされちゃう始末です
(リンク先(一応)18禁サイト注意。エロ記事部分にもほぼ毎回ブラクラ級のオチがつくのでそれにも注意)
そんな主人公が株価を上げる事ができるのか?
と、思っていたら先週の自身の設定の根幹にかかわる爆弾発言
果たしてこの発言の行方はどうなるのでしょうか?
先週のあんまりにもあんまりな発言に号泣する栗谷川さん
さぁ、このやたら達観しちゃってる少年にどんなお叱りの言葉をかけるのでしょうか!!?
「奥さまは女性として報われた・・・・・・・・・・・・・・・
そりゃあ そうでしょうよ」
あ、そこは認めるんだ
まぁ、なんだかんだで範馬一家にずっとつき従い、
範馬価値観には慣れているのでそこは理解できるのでしょう
では、栗谷川さんは何に怒っているのでしょうか?
「報われたのは奥さまの人生だけです
刃牙さんの人生ではない
大切なのは御自身の人生です
刃牙さん御本人の人生のハズです」
栗谷川さんは、バキ君の事を本気で心配してくれてました
多分、今の日本で唯一の存在じゃないでしょうか(オイ)
しかし本気で心配して泣いてくれる人が一人でもいれば、その人生はきっと有意義なものです
父親はあんな感じの範馬星人ですが、バキ君にとっては栗谷川さんが
父性の『厳しさと優しさ』を担当してくれたからこそ、歪まずに育ってくれたのかもしれません
「知ってるさ」
「そうでしょうか
わたしにはそうは見えません」
「本気で心配してくれている」
「いいえ わたしは叱ってるんです
たった一度しかない刃牙さんの人生―――
嘗めちゃいけません
奥さまを満たすために生き
勇次郎さまを満たすために生きる
奥さまはよくやったと誉めるのでしょう
勇次郎さまはそれでこそ「範馬の血」と誉めるのでしょう
それは間違っています
刃牙さん あなたの人生は―――いったい何処に・・・・・・!!?」
バキ君の、『自分のための人生』とは何処にあるのでしょうか?
これで『SAGAの時点で終わりました』とか言われたら、
私も思わず泣きながら「あなたの人生は―――いったい何処に・・・」とか言ってしまいそうですが、
バキ君の「強くなりたい」って動機が主体的なものなのか客体的なものなのかよく分からないところがあります
わりと「戦ってみてぇ!」と夜叉猿殴ったりピクル殴ったり大統領誘拐したり中国で大会ぶち壊しにしたりと、
世界規模で色々迷惑行為を働いてますが、それが全部「勇次郎を満たすため」の行動なら、
バキ君は自主的に行動しているようでいて、ただ義務を果たすための訓練を積んでいるにすぎません
散々自身が言っていたように、「勇次郎が地上最弱の生物」だったなら、バキ君は戦いに生きる意味すら無いはずです
ピクル編で散々迷ってみたり、こいつ戦うのが好きなのか嫌いなのかよく分からないと言われてましたが、
バキ君にとって戦いが義務だったのか、それとも権利だったのか。それによってその答えも違ってきそうです
バキ君の人生は、なんのためにあるのか。その問いに、我らの主人公は一つの答えを出します
「聞こえたんです」
「・・・・・・・聞こ・・・・・・えた・・・・・・?」
「あれは・・・・・・天使の言葉だ
父の放つ直撃弾―――敵わなさが骨身に染みた・・・・・・
その時だった・・・・・・
地上最強の前に 母は立ったのです
あまつさえ母はあの巨凶を殴りつけ―――
胸をそびやかし傲然と―――こう言い放ったのです
『あたしが相手だッッ』」
幼年期、バキ君の全ては『母に愛してもらう事』にありました
勇次郎への憧れもあったでしょう、戦いの中に絆を見出した事もあったでしょう
しかし、全ての奥底には『父親しか見ていない母親に自分を見て欲しい』という刹那の思いを賭けました
バキ君が幼年編の最後で勇次郎に戦いを挑んだのは、
命を捨てる覚悟で母親に振り向いてもらうためだったのです
そして、紆余曲折あった親子の思いの終着点こそバキ君が聞いた天使の言葉
愛した男に殺される事を承知で、自分を守ろうとした女性の叫び
そうすれば息子を守れるとか、何かを失うとか、一切の打算を排してただ純粋に息子を守ろうとした『母性』
母の女としての悲願は最期に報われましたが、母は報われぬ事を恐れずに息子を守るため戦ってくれたのです
「おわかりでしょう
範馬勇次郎の前に立つ その意味
おわかりでしょう
範馬勇次郎の身体に触れる その意味
おわかりでしょう
範馬勇次郎に闘いを宣言する その意味
我が身と引き換えに―――俺を救おうとした」
あの瞬間、確かに自分は『息子』だと認めてもらえた
バキ君が幼年編で抱き続けていた悲願は、あの瞬間すでに叶っていたのです
静かに泣きながら、バキ君は栗谷川さんに『自分のための人生』を語ります
「俺はもう十分です
あの一言だけで十分です
あの言葉と残りの人生―――引き換えにしたっていい
あの言葉があったから生きてこられた
あの言葉があったから強くいられた
俺の内にある―――強さの全て
その源流は あの言葉にこそある」
たった一度、母親に愛して貰えた
そのためだけの人生でいいと、はっきりと宣言する主人公
地上最強よりも地上最愛というのはどこぞの巨凶彼女の弁ですが、
バキ君が求めたのは地上最強の座ではなく、その愛を手にする事だけだった
だからこそ、バキ君は「勇次郎を超えられれば二番目に最弱でいい」と言えたのでしょう
父を超える程に強くなる事が、母の望みだったから。難しいか簡単か、できるかできないかは関係なく、やる
「その言葉により今まさに
あなたは地上最強になろうとしておられる」
「調子良すぎだぜ クリさん」
「同じ言葉耳にしながら
お恥ずかしいかぎりです
間違えていたのは この栗谷川でした」
まぁ、そこまで間違ってはいないと思いますが
ニヤリとしながらコーヒーを混ぜるバキ君のツラもなんかイラッとしますし
そもそも『殺されたけど母親は本望』と達観するのはいくらなんでも無欲過ぎるというか、
作中の登場人物全員から否定されても、なお『海原雄山真犯人説』を曲げなかった山岡さんと少し混ざるべきと言うか
たとえ『女性としての本懐』を迎えても、『自分の母親』を殺された事は事実なのですし
社会的倫理を完全に抜きにして「報われていた」と言い切るのも傲慢じゃないかとは思うのですよ
栗谷川さんがバキ君の事を本気で心配してくれたように、
バキ君の人生も『母親のためだけにあった人生』なわけではなく、
友や恋人、自分自身の欲のためにもあるのが本人の人生というものですし
あまり若いうちから達観し過ぎるのも、周囲としては心配するべき点だと思います
「言葉にならない 心の裡―――
動作にしながら気付き始めていた
栗谷川を前に―――過ぎ去った過去を言葉にしながら
気付き始めていた
父を越えるという悲願 父を倒すという宿命
それは母の優しさへの解答
仇討ちではない・・・・・・・・」
でも気持ちの整理がついたというのは主人公として喜ばしい事で
愛のために戦う、というのは人生のテーマとして素晴らしいものだと思います
ただ、今までに関わってきた人達にもその愛を分けてしかるべきというか、
分かる人にだけ分かる言い方すれば、『片手だけつないで』と申しましょうか
あまりセカイ系と言うか小規模な関係性のみを重視する価値観は健全ではないと思うのですよ
本人達の主観ではただの親子喧嘩でも、二人の戦闘力は軍隊並ですし
スパイダーマンでも『大いなる力には大いなる責任が伴う』って台詞があったように、
「所属する社会の平均値からかけ離れたもの」ってのは周囲に大きく影響を与えるものですから
本人の決意にケチをつける気はありませんし、多くを求め過ぎる事も悪いとは思いますが、
バキ君自身の人生を考える上で、母親以外にも今まで戦ってきた相手との友情ってのを、
できれば動機や人生の意味に含めてあげた方がいいんじゃないかなと思いました
だってそれだとジャック兄さんの立場ないし
いやほんと、兄弟がいるのは羨ましいとか言ってたわりにろくに会話もしてないじゃん君ら
あと、夜叉猿の事も思い出してあげると嬉しかったり
仇討ちじゃなくても、バキ君は『闘争の中に絆を見出す』事を選択したはずなんで、
少なくとも『自分以外は全て餌』と断ずる勇次郎の価値観だけは否定しなくちゃいけないと思うんですよ。主人公として、息子として
根幹は、範馬脳思考でも『家族愛』でいいとして、
餓狼伝の丹波さんみたく最強を目指すのでなければ、
もう少し健全な社会性を保ってもいいんじゃないかと思います
しかしまぁ、今週の展開のおかげで今まで主人公に対して、
「登場さえしなければなんでもいいよ」という諦めの極致だったのが、
「こういうモチベーションもあっていいよね!」と期待できるようになったので、
今後もこのまま『主人公力』を磨いて、読者も納得する形で決着をつけてもらいたいですね