ダイエット日記第三回
(樫の木おじさん)……相方その1。本人曰く「チョイ悪妖怪」。実際はただ性根が腐ってるけど堂々と悪事働けるほどの度量も無い小悪党。変身能力はあるけど、桜邪に殴られるような目的にしか使わず、不死身能力を桜邪の暴力に耐える目的のみに使っている
(桜邪)……相方その2。元気と暴力が取り柄の豪腕白ガール。周りの連中と比べるとあまり個性が無いのが個性。最近、髪を下ろしたら管理人と樫の木おじさんに「・・・誰?」と言われて軽くヘコんだ

「さてさてさて、今日もダイエット日記の始まりですよ〜! 今回のテーマは『食生活その2』! 前回は三度の食事について触れたので、今回は飲み物について触れてみようかと思います! 人体の70%は水分ですから、水分補給は非常に重要になるのです。それを忘れてはダイエットなど失敗したも同然と言えましょう!!」

「今日もテンション高いですなぁダイエット孫子殿」

「忘れられるまで拷問してあげましょうかこのダニ」

「え〜と、そういやあの水飲み百姓にはどんな生活させてたんだっけ?」

「代謝を整えるって意味でもお水は大事ですから。とにかく毎日3リットルぐらいは飲んでましたっけね。水分不足は代謝が鈍りますから水はどんどん飲んだ方がいいんです」

「まぁ、デブにとって大量の摂水は日常だからな。それは当たり前にできてるんじゃね?」

「だからって3リットルをジュースで補給されても困るんですよ。あくまで不純物の少ない水でないと。できれば天然水がいいですね。「じゃあ桃の天然水でいい?」とか「水料理がいいので佐藤田を専属の執事にしてくれ。エルゼお嬢様もセットで」なんて言い出した日にはチェレンコフ光で青白く輝く天然水でも飲ませますけど」

「あとは体冷やしてもまずいしな。せめて室温ぐらいのヌル目の水がいい。つまみは炙ったイカでいい」

「いいわけないでしょ。食べてる時に水飲みすぎるのはよくないんです。食前30分、食後1時間はむしろ飲まない方がいいんです。大吉さんみたいに食事中に水ガブガブ飲んで、噛まずに流し込むような邪道食いは許してはいけないんです。見てる人に感動を与えるようなダイエットをしなくては」

「だから毎度毎度『食いしん坊』ネタを微妙に混ぜるのやめようぜ? まぁ、ただ飲めばいいってわけでもないしな。ガブ飲みは一気に体温下げるから少しずつ摂取するべきだ」

「暖かい白湯やお茶など飲めば空腹が紛れますし、水でもたくさん飲めば、お腹すいてるのも紛れますしね〜。もちろん会社に持って行く時は水筒で。ペットボトルの大量消費は地球環境によくありません」

「くっ、この偽善者め・・・! ダイエット話だけでなく環境対策も話題に盛り込む事で好感度をアップさせようという腹か! なんという偽善者! その発想は無かった!!」

「誰が偽善者ですか誰が。私はただ自分にできる事を精一杯やってるだけです」

「偽善者はみんなそう言うんだ。お前が偽善者ではないと言う事を証明したくば、この煮えた湯の中から石を拾ってみろ。偽善者なら火傷する。偽善者でなければ無傷なはずだ」

「盟神探湯ですか・・・それは悪事を犯したものには躊躇いがあるはずだからすぐには石を拾えないはず、という蛮人社会特有の過度な先入観によって成立してるシグルイな裁判方法ですね。ところで・・・これ、よく見ればお湯じゃなくて沸騰した水銀ですよね? 水銀の沸点が350度と知っての狼藉ですか? というか、これは吸っちゃ不味い蒸気では?」

「心に正しきものが一つあればできるはず! かくのうえ、桜邪様に御けじめをつけていただく・・・」

「秘剣流れ星でも見せてあげましょうか? どうやら貴方とは一度じっくり話し合う必要があるようですね」

「お前はそうやって話を聞いてといいながらまず相手に殴りかかるリリカル交渉術の使い手だからいまいち信におけない」

「誰が魔王少女ですか。ところで疲労回復のための炭酸水はいかがですか? 無糖ですからダイエットにもいいんですよ。炭酸はダイエットのストレスもとってくれますしね。大吉さんは炭酸飲むと口の中が痛くなるから嫌だと言って飲みませんが」

「幼稚園児かあいつは」

「この炭酸水は私の作った特製の炭酸水です。常人が飲むと胃がただれる酸性値ですが・・・慣れるとクセになります」

「飲めるかぁ!!」

「残念ですね。この後にはいい茶菓子を用意してるのに」

「そうか、偽善者ではなく絶対悪だというネタか貴様」

「好きなんです。生まれついて・・・こういうのが」

「過度なサブカル趣味は後天的な素養だと信じたいな。人間の尊厳のために」

「少し小難しい話をしましょうか樫の木さん。『定向進化』・・・という言葉があります。たとえば大吉さんは・・・「趣味を楽しみたい」それだけを願って何百日もダイエットをしてきました。色々端折って説明しますと、そのために大吉さんはより「趣味を楽しみつつダイエットする」事に特化した別種になりました。ひとつの方向に突き進む『定向進化』です」

「別種ってか別体型って言ってやれなせめて」

「大吉さんにできる事は・・・誰にでもできると思いませんか?」

「反論する余地がねぇな
つまり・・・「オタク意」の定向進化か」

「その通り!! 筋肉や骨格ではなく・・・脳の中で定向進化は進んだのです。まぁ、それはさておき先ほど言ったお茶菓子は本当に用意したので食べましょう。洋菓子よりもヘルシーな和菓子ですよ〜♪ 大吉さんも、どうしてもお腹が減る時は和菓子を食べて空腹をこらえてました・・・って、アレ・・・? 確かにここに置いたのに・・・」

「もう・・・食ったさ・・・腹ァ・・・いっぱいだ・・・」

「ああー!!? せっかく並んで買ってきた某有名店のどら焼きが無い! それどころか、今日の晩御飯用の食材までありませんよ!? これは一体どういう事ですか!!」

「だって、こんなもん残してたらまたお前ダイエットのために食前に適量糖分取って満腹感を得るとか夕飯は野菜スープ中心に体温まる汁ものにしてさっぱり終わらせるとか、役に立つけど俺の人気取りには使えない事ばっか言い出すじゃん。じゃあ要らないかなーと思って」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「大体、お前にダイエットだなんだと言われてもなぁ・・・どの肉が最初に落ちるかとか、その・・・お前の胸見てたら思い知らされるじゃん? 大吉とは別ベクトルで説得力ねぇよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「まぁ、なんだかんだ言って食わなきゃ痩せるんだし。むしろ太る悪根を絶った俺に感謝すべきだ。そうだろ、ダイエット孫子殿?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・日記相方になってだいぶ経ちます。様々な感情を経験しましたが、これほど・・・不快な気分にさせられたのは初めてです」

「残念だ。だがありがとう。最高の誉め言葉だ」

「ってか貴方病気ですよ。脳の。大吉さんと同種の病です」

「つまらんほど考えが合わんな。お前はどうやら俺と違い・・・大吉との距離が離れすぎているようだな」

「・・・どうも貴方とは・・・(分かりきってた事ですが)敵になりそうですね。確かに貴方は私と同じで大吉さんが好きではないようです。ですが・・・大吉さんに対する考え方が決定的に違います」

「・・・・・・ならば お互いの考え方を述べてみようか」

「全ての大吉さんは私のネタ供給源であり私の所有物(オモチャ)です。私だけがイジる権利を持っています」

「違うね。全ての大吉は俺の敵であり俺の所有物だ。俺だけが壊す権利を持っている」

「そういえば、さっきから姿が見えませんけどその当事者である大吉さんはどこです?」

「・・・忘れてたのか? あっちの部屋に放り込んでるじゃん」

「・・・サウナルーム? ああ、そういえば水の大切さを教えるプログラムでしたっけ」
「・・・・・・」(椅子とテーブルのみの部屋の中で椅子に全身を拘束されている。目の前のテーブルにはコップ1杯の水が置いてあるのみ)

「今日で何日目だったかな?」

「日数を数えるなんて大吉さんに失礼ですよ。目覚めている間は常にこの悪夢の中にいます。彼にとって日々の経過なんてなんの意味もありません」

「んっ! 桜邪くん・・・・・・・・・痩せた体を欲していた――あの日のあいつを覚えているかね。ダイエットプログラムを前にして「ダイエットは明日から」「あ〜、楽して痩せてぇ〜」とホザくのが普通。しかしあいつは――」
『オレは・・・・・・何をすればいい・・・』

「こんな拷問を受けると知っていても――奴はああ言ってみせたかね?」

「・・・・・・私、言うわきゃあないと思います」

「だよなぁ。これはもう意味の無いただのイジメだし」

「まぁ、どうせ汗かくならサウナよりも半身浴や運動の方がいいですしねぇ。でもサウナで一気に汗かくのはストレス解消になりますし、ゲーム感覚で辛い訓練混ぜていくと効果もあって精神も鍛えられるんですよ」

「でもこれはただの意味の無いイジメだよな?」

「それが何か? 相撲業界ではよくある事ですよ」
「・・・・・・・・・あ・・・・・・・・・ああ・・・・・・・あああああああああああああ!!」

「んっ! ついに始まりおったか!」
「あああああああ」

「大吉さんの、本来脂肪がついていたはずの部位から何かエネルギーのようなものが伸びています・・・!」

「信じられん・・・しかしあれは――”ゼスモス”だ!!」

「よっぽど喉渇いてたんでしょうねぇ。そんな能力まで発現させて水を求めるなんて・・・」

「誰のせいだよ・・・」

「私と貴方、でしょ?」
パァン!(エネルギーが水の入ったコップを押し潰す)

「壊した・・・奴は水を求めていたのではないのか? ならば何を!?」
「桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す桜邪殺す樫の木殺す・・・・・・」

「・・・・・・つまり大吉さんはこう言いたいのでしょうか。『・・・拷問でかまわない・・・もっと脂肪を落とせるようにしてくれ』と」

「なんでだよ。純然たる殺意だろアレは」

「まぁ、アレですよ。代謝関係整えるのはダイエットの基本ですから。運動したり温かい物を食べて体を温め、水分をよく補給して汗をかきましょう」

「たったそれだけの事を説明するためにこんだけの時間かけて、大吉が死に掛ける理由があったかどうかは甚だ疑問だがな」

「あと、お風呂で半身浴とかベタですけどいいですよね〜。大吉さんの場合、漫画週刊誌とか月刊誌とかを30分ぐらい入浴しながら読んでました」

「あいつ、ほっとくと風呂にTRPGのルールブック持ち込んでキャラメイクしながら入るからなぁ・・・」

「・・・湿気で本が駄目になるからあまりオススメできませんが、自分なりに暇潰しの方法考えての半身浴は疲労回復の意味でも推奨したいところです。あとは、お風呂上りのストレッチとかがあるんですけど・・・これはまた次の機会に触れましょうか」

「そうだな。サウナルームの大吉がいい加減干上がったみたいだし」
「み・・・みず・・・」

「はい、『鉄鍋のジャン』に出てきた食用ミミズのフライ」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

「乾いてるのにギラギラ輝く目でこっちを睨んでるぞ」

「力石さんみたいですねぇ」
「・・・(いいから水をよこせっちゅーとるんじゃ)」

「え〜と、つまりお気持ちだけ受け取らせればいいのかなお嬢さん?」

「あ、ごめんなさい。白湯はあるんですけど、気持ちがありません」

「無きゃあ仕方ないな。あっはっは」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・血の涙流してこっち睨んでますね。それよりアレ、最後の水分じゃないんですか? あのままだと本気で全身の水分失って砂に還っちゃうんじゃ・・・」

「おまえはダイエッターになれない・・・おまえはスリムにもなれなかった・・・ダイエットを決意した時、デブであることもやめた・・・スリムでもない、デブでもない・・・
おまえはそこでかわいてゆけ」
「(・・・なんでだろ? なんで俺は・・・従順な相方を持つ管理人にならなかったのかな・・・?)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」
大吉は風になった――OUJAが無意識のうちにとっていたのは「敬礼」の姿であった――――――
涙は流さなかったが奇妙な男の詩がなかった――
奇妙な友情がなかった――

「ねぇならするなよ」

「それはさておき樫の木さん? さっきの決着がまだ――でしたよね?」

「・・・大吉が死んだんだからここらで第一部完結でいいんじゃね?」

「いえホラ、これから世界チャンピオンに挑戦コースに入っていただかないと。どうです? 大吉さんみたく飲まず喰わずで砂になってみますか? 今ならサービスで何も食べられないように剛体術で胃の壁破って、ついでに口も縫い合わせて差し上げますよ?」

「大吉か・・・大吉と同じ道か・・・そう・・・そうだよ・・・大吉も飢えていたんだ。そう・・・大吉も飢えていたんだよ」

「・・・わざわざあおい輝彦さんボイスで何を言い出すんですか貴方」

「俺はこの桜邪が、飢えの為に自分の父親を石で叩き殺したと言う話をレストランで聞かされて以来・・・それ以来、そのかいくぐってきた地獄のでかさに唖然とし、こっぴどく劣等感を植え付けられちまった」

「人聞きの悪い過去を勝手に捏造しないで下さい!
そんな真似してません!!」

「減量の下手くそな満腹相方が、あの偉大なる桜邪に勝てる訳がねぇ・・・すっかりそう思い込んじまってた」

「・・・別にいいんですけど、長くなるなら少し端折った方がいいんですよ? 原文ママで延々パロディやると読み飛ばされ易いですし」

「しかし、何かひとつ、この桜邪には屈服仕切れないものがあった。死んでも負けちゃならねぇって意識がどこかにあった。・・・その何かとは・・・『大吉』さ。あの死んだ大吉も飢え乾いていたと言う事実さ」
「・・・まだ・・・死んで・・・ねぇよ・・・」(桜邪による応急処置中)

「そして・・・そしてよぉ、桜邪。お前さんは『喰えなかった』。だが大吉は違う。自分の意思で『飲まなかった』『喰わなかった』んだ。そうよ、何のことはねえ。俺のすぐそばに、自らすすんで地獄に入り、そしてそれを克服した男がいたんだ。大吉マスター21がよ・・・しかも大吉はな、おめえみてえに自分の地獄を人前でひけらかすような真似はしなかったぜ。大吉はその苦しみを心底耐えて、俺との奇妙な愛情を守り通して死んでいったんだ!」
「だから死んでねぇし友情もねぇんだよ」(点滴中)

「大吉・・・大吉・・・大吉・・・大吉・・・!! ・・・俺は、そんな俺の大吉マスター21のためにも、お前なんかにゃ負けられねえんだ!」

「え〜と、大吉さんの蘇生も終わりましたし・・・こっちもはじめますか? 最初で最後のタイトルマッチを」

「あ、棄権していいっスか?」

「却下。貴方にはもう、危険しか道はありません」

「ウ・・・ウウワオオォ〜〜ッ!!」
「逆上したホセ・メンドーサかお前は」

「では、私が15Rフルボッコしてる間に、今回のテーマについておさらいしててくださいね〜」(メリケンサックを装着しながら)

「・・・テーマが水だけに、水に流すってオチはどうかなレディ?」

「あはは、誰が上手い事言えと言いました?」
「しかし樫の木おじさん・・・これでわしら3度目だぞ。ダイエット日記で3回も撲殺オチだなんて、そんなヤツらあるかなぁ?」

「2度とテメーとはいっしょに載らねえ」

「だから誰が上手い事言えと(以下略)」
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