日本昔話 「牛になった男」

 昔々、美濃と呼ばれる地方でウルフと呼ばれる男がおった
 ウルフは飯を食うとすぐに眠ってしまう怠け者であった
 当然貧乏でいつも腹をすかせていた
 あるときウルフはどうしても我慢できなくなり神様の祭壇からお供え物をつまみ食いしてしまった
「一口くらいならわからんだろ」
 と一口食べたら、もう一口食べても、もう一口食べても・・・・と結局全部食べてしまった
 ウルフはしまったな〜と思いつつも、腹が膨れて眠くなったのでそのまま
「おやすみ〜」
 と眠ってしまった
 それを見た神さまは、怒って男を牛に変えてしまった
 目覚めたウルフは驚いて神様に頭を下げた
「神様すいません、ゆるしてくだせえ」
「お前のような怠け者は、牛になって馬車馬のごとく働くのが良いのだ」
「これからは心を入れ替えてまじめに働きますだ、たすけてくだせえ」
 男は泣いてあやまった
「ではこれからはまじめに働くのだぞ」
 と神さまは男を戻してやることにした
 手足が徐々に人のものに変わっていき、半分ぐらい人間に戻ったときウルフは(へへ、神様もちょろいもんだ)と邪心を抱く
 とたんに変化はそこで止まってしまった
「あれ神様、まだちゃんと戻ってませんよ」
「お前は心から反省してないようじゃ、その姿でも田畑は耕せよう、まじめに働き本当に心を入れ替えるまでその姿でいるが良い」
 そしてその後ウルフがどれだけ叫ぼうと神様の声は聞こえなくなった
 それからウルフは心を入れ替え、一心不乱に田んぼを作った
 知らない人間は半分人間半分牛の男に大いに驚いき村人に何かと尋ねる
「あの化け物はなんだ?」
「あれはウルフという男じゃ」
「美濃の田んぼのウルフか」
美濃の田んぼのウルフ
それがなまって
美濃の田のウルフ
美濃田ウルフ
ミノタウルス

ミノタウルスと呼ばれるようになった

民明書房刊「ご飯を食べてすぐ寝ると牛になる?ミノタウルスの伝説あれこれ」より抜粋