バキ
第261話『臆病者』
ホテルのパーティールームで息子に勝負を迫る父親
この場合、普通はJrのように「なんで勝負を?」と思うのが普通でしょうが、
理不尽な理由で勝負を挑んでくる輩(例:夜の公園に武術家二人だから)には慣れっこなので、
むしろなんでわざわざパーティールームまで呼び寄せたかの理由が気になります
勇次郎でさえわざわざ来日したJrにわざわざ会いに行ってたのに
それとも、全身怪我のJrを移動させて体力の消耗を狙う作戦なのでしょうか?
「ノーグラブで決着だ」
パーティールームでわざわざリングシューズ履いて、すっかり臨戦態勢の父親が呆けているJrに言います
「準備はいいかな」
貴方よりは良くないと思います
優秀な日本のジャーナリストがいたら絶対ツッコんでそうなツッコミ所です
そしてツッコんでしまったらまたジャブで威嚇されたり鉄パイプで地面を殴らされたりします
そう言えば、あのジャーナリストも日本の人だったので、
アライパパと一緒に帰国したのかも知れません。それが五体満足でかは知りませんが
「待ってくれ父さん
バカげている
久し振りに父と子が会ったというのに
ファイトって・・・・・・・・・・・・」
「父と息子だからやるのだ」
あまりの事に常識人らしいリアクションを取るJr
パンチドランカーの深刻さを物語るような態度で返答する父
会えばファイトの範馬親子じゃないんだから
独歩と克己だってもう少し穏便な親子関係してると思うんですが
有無を言わさぬ超理論に呆然としていると、さらに父親が二の句を次げます
「わたしは5年前不覚をとった
誰あろう我が子の手によって生涯初のテンカウントを聞かされている
まだ10代だった未熟なオマエの手によって」
「無茶言ってる
あの時だって父さんはすでに50歳を超えていたんだ」
なるほど、これが「息子がブッ壊した」発言の正体でしたか
どういう経緯で発生した勝負かは分かりませんが、
スパーリングでも、自分の服装が試合用でなかったとしても、
アライパパにとっては負けは負けだったので、それなりに屈辱的だったのでしょう
と言うか、Jrの発言から、
よっぽどの事故じゃなければ「ぶっ壊した」ようなパンチは放ってなかったと思いますが
想定しやすいケースは、父親が自分の衰えを、
息子が自分の才能をよく理解せずに一方的な一撃が入ってしまったケースですが
それ以外だと、息子は息子で、軽くスパーリングに付き合ってくれようとしてた父親にマジパンチを打ち込んでた事になります
まぁ、当時の状況はどうあれ、勝負はアライパパの敗北で終わったようです
それについて、さらにアライパパは物申します
「人が人を叩くという行為に年齢は関係ない
それが父と息子ならなおさらだ わたしが怠けていただけのことだ」
まぁ、父から子へのお仕置きとか、叱る時に殴るならいいかも知れないけど、
年老いた父親を息子が殴ったとかだったら別口のインタビュアーが飛んできそうなもんですが
いや、年齢関係なくぶん殴ってる爺様も中国にはたくさんいましたけど
でも、多分私がこれと同じ理屈で父親殴りに行ったら、家族会議物だと思います
「今は・・・怠けていないということだね」
「フフ・・・ほんとうに・・・久し振りだった
倉庫の奥でホコリをかぶっていた重さ2キロのワークブーツ
ロードワークどころではない ロードウォーク・・・・・・・・・歩くことから始めねばならなかった
走り出すまでに実に3ヶ月・・・・・・ワンシーズン掛かっている
サンドバッグ・・・・・・・・・パンチングボール・・・・・・・・・ロープスキッピング・・・
歴戦のパートナー達とスパーを行ったのはウォーキングから18ヶ月目――――
1年半もの時が経っていた」
「スパーリングまでやっているのか・・・・・・・・・」
「そうなるまでに選手時代の9倍もかかってるがね
永かった・・・」
よく、「一日の遅れを取り戻すには三日かかる」と言う言葉が使われますが、
選手としての全盛期を過ぎ、隠居をしていた老人にとって、復帰は並の努力ではなかったでしょう
『偉大な男』があらゆる努力と才能を惜しまず全力をつぎ込んでも、
選手時代の9倍のリハビリ期間を必要とした。それもこれも、息子に復讐するため
・・・なんかここ強調すると、えらく情けなくなりますね
子が偉大な父親に復讐しようとする話はよく聞くんですけど
だって、美味しんぼとかでも、海原雄山が山岡士郎に復讐しようとする話だったら嫌だし
黄金の鯖とかで一度山岡さんに負けてから料理の特訓を始める雄山
おかず対決の時みたいに、山岡さんの嗅覚が消えた隙を狙って勝負を挑む雄山
自分の奥さんが息子にイジメ殺されたのだと思い込んで山岡さんを激しく憎む雄山
・・・想像すると、富井副部長以上に惨めです、復讐雄山
ともかく、父親として息子には負けっぱなしではいられないって事でしょうか
男として再起を決意するには、まぁカッコいいと言えなくも無い動機と言えるでしょう
万一勇次郎がバキに負けたあと、同じ事してきたら最悪ですが
まぁ、それだと流石に完結までそれこそあと美味しんぼ並の時間がかかりそうなので、普通に倒してもらいましょう
ともかく、この状況でやる気満々のアライパパ
そんなアライパパに、申し訳無さそうにJrが言います
「でも・・・・・・父さん
残念なことに・・・・・・・・・・・・
僕はこんなコンディションなんだ」
と、全身ボロボロの自分の姿を見せるJr
悔し涙を流しても独歩を追う事のできなかった満身創痍
それこそ、年齢は関係ないと50過ぎのおっさんにもボコられそうなコンディションです
むしろ今なら栗木拓次相手でも戦闘を躊躇しそうな状況です
申し訳無さそうに言うJrに、アライパパは平然と言い返します
「たしかに残念なことだ
我が息子がこれほどの臆病者だったとはな」
「〜〜〜〜〜ッッ」
「とうに60歳を超え・・・・・・
医者から数々の病を宣告されてる老人に怖じ気づいている」
堂々と息子を挑発する父親
流石に、60を超える病気だらけの老人でも
自分が満身創痍の隙をついてベストコンディションで現れればヒくと思うんですが
宮本武蔵の逸話でもないですが、逃げるのも武のうち
Jrが武術家なら、勝てぬ状況なら逃げるのも一つの手ではありますが、
それを許さないようにアライパパのヘビー級超弁術による挑発が冴え渡ります
「マーシャル・アーツとはなんだ
何時でも――――――
何処でも――――――
誰とでも――――――
それが日本で言うところのブジュツ―――
オマエが志すマーシャル・アーツではなかったのか
それをぬけぬけとコンディションなどと――――恥を知れッッッ」」
まぁ、確かに独歩も天内戦で全身ボロボロになっても戦いをやめませんでした
達人も、ジャック相手に敗北が確定していたと言うのに試合場へと進む歩を止めはしませんでした
結果が見えているからと、勝負を拒む姿勢は武術家として誇れる姿ではないのかも知れません
まぁ、毒手食らったバキ君は梢江ちゃん抱えて逃げてましたけどね
とりあえず、なんか最近『理屈』とか『理論』で攻撃する機会が増えてますが、
まぁこう言う理不尽に対応するというか、こう言う論理の堂々巡りに陥った状況において、
一番シンプルに自分の正しさを証明するのが「腕力で相手の答えをねじ伏せる」だったんでしょうけど
またさらに「完全に相手の答えをねじ伏せるにはどうするか」って方法論の堂々巡りにまた首突っ込んでる気がします
つーか、独歩も天内戦の前に勇次郎とまたやりたがってるような事言ってましたし、
結局、死刑囚編以来完全には解決しなかった「敗北とは何か?」の議論がぶり返しているような感じです
しかも今回は、今までの白格闘家達と死刑囚の立場が入れ替わったような感じで進行しています
まぁ、その答えが出せるかどうかが、このJrボコられ祭りシリーズでJrに課された一種の課題なような気がします
「部屋へもどりなさい
わたしは臆病者とファイトするために
この5年間を費やしたワケではない 帰るッッ」
息子に秘密でやってきといて
匿名でいきなり呼びつけといて
自分の意にそぐわない事になったら堂々と帰宅宣言
まるで地球が自分を中心に回ってるとでも言い出しかねないほどの自己中っぷりです
徹底的にワガママで相手を振り回す気のアライパパ
そして、うなだれながら「待ってください」とつぶやくJr
「やりますッッ
ここであなたとファイトするッッ」
まぁ、流石に実の父親にチキン呼ばわりされた挙句キレ帰られれば自尊心も傷つきはするでしょう
むしろ、アライパパが言い出す前に、
「こんな状況で勝負ができるかァ!!」とダチョウ倶楽部並に力強いキレ方をするか、
「父さん何だこのパーティールームはっ!!
よくもこんなパーティールームにモハメドアライJrを呼び出したなっ!!
こんなパーティールームでファイトができるか、不愉快だっ!!」と、海原雄山のように理不尽なキレ方をするか、
いかにも相手が悪いかのように強引にファイトを避けるのがベターだったと思います
と言うか、むしろこの時の注目点は覚悟を決めたJrの態度ではなく、
「ほう・・・」と振り向く直前の、このアライパパのいやらしすぎる表情にあるでしょう
なんですかこの福本漫画の悪役みたいな怪しい笑顔は
今にも「馬鹿が・・・! かかりおったわ・・・!」とかざわざわ・・・の効果音つきで言い出しそうな勢いです
息子は父親の背中を見て育つと言いますが、確かにそうですね
とてもじゃありませんがこんなツラの父親見せられません
そして急に精悍な顔つきになって振り向く。何と言う詐欺師ぶりでしょうか
この曲者ぶり。もしかしたら彼は実はモハメドアライではなく、
肌を黒くして板垣風に画風をアレンジした『はじめの一歩』の青木かもしれません
きっとこのガウンもどこかにカエルの刺繍がしてあるに違いありません(んなワケあるか)
「チキンなんて呼ばせない」
「オマエらしくもない
男らしい言葉じゃないか」
ファイトを決意したJrをさらに挑発する青木アライパパ
その言葉に、松葉杖を投げ捨ててついにJrがブチギレます
「シャラァップッ
(呼ばせないッ
呼ばせないッッッ
チキンなんて―――絶対に呼ばせない!!!)」
ギブスを軋む音を響かせながら、必死に父親に向かって駆け出すJr
しかし、この時にすでに父親の計略に頭までハマってしまっているのでしょう
いかなる状況でも戦うのがマーシャルアーツなら、
わざわざ自分に不利な状況にどんどん追い込まれるのは褒められた行為ではありません
歩くのにさえ不自由なんだから、
一撃にすべてをかけて、待ちの一手に徹すればいい
事実、次のページではあっさりカウンターを食らってしまっています
ここら辺の駆け引きの未熟さが、まだまだJrを格闘技者の境地に立たせないのでしょう
勇次郎だって、よく怒って失敗してしまう事があります
怒りすぎてついうっかり麻酔銃を食らったり、Jrに逃げられたり
・・・うん、そういえば、普通にあっさり敵前逃亡してた時期あったじゃんJr
なんか最近、よく考えれば妙に意固地になってます。負け続きで冷静さを完全に欠いたのでしょうか
「あなたが帰ってくれるなら
ボクは部屋を出るまでです よかった何事もなくて・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ぐらいの勢いで親子の対面を終わらせれば良かったのに
まぁ、ここで勝ち負け以前の問題として、
国家に喧嘩を売った偉大な親父のハートを受け継いでくれるとよいのですが
とにかく、この親子対決を経てチキンからフェニックスのように復活するJrの姿を待つとしましょう
・・・しかし、なんでJrはこんな
バック・トゥ・ザ・フューチャーの主人公並にチキンって言われるの嫌うんですかね?
どう考えてもチキンって言われるより、
梢江の恋人って言われる方が精神的ダメージ大きいと思うのに