バキ
第226話『力』

さて、いよいよ大擂台賽一番注目の試合が開始されました
『中国拳法そのもの』VS『地上最強の生物』

ある意味今までの中で最もスケールのデカい戦いになりそうです
まぁ、これで秒殺か一方的な展開になったらかつてないスケールで暴動が起きそうですが

ともかく、「開始めいッッッ」の合図とともに、郭海皇が今まで己が座っていた車椅子をぶん投げます


対する勇次郎、この不意打ちにどう応えるのか!?

なんと勇次郎は、とても嬉しそうな表情で迫る車椅子を見ると、
そのまま手すりに指を引っ掛けて大きくぶん回しだしました

この力技に驚愕する観客達。さらに勇次郎指先で車椅子をクルクル回すと、
そのまま取っ手を掴んで静かに車椅子を地面に下ろし、それにヒジをつけました

感心する観客達。一体、このパフォーマンスは何のためなんでしょうか?



「乗りな」

「ホッホッ・・・・・・・・・・・・謝謝・・・・・・」



なんと、郭海皇を車椅子に乗せてしまいました
郭も何故か普通に勇次郎に背をむけて車椅子に座りなおしちゃってます

流石にこの展開には観客達も「え〜〜〜〜??」の一言


一体何やってるんでしょうかこの人達は?
達人同士の戦いは難しすぎるとでも言わせたいんでしょうか?

のっけから最大トーナメント決勝戦のような激闘を期待していた人達には肩透かしもいいところです


私など、車椅子に手を置いた勇次郎が、あんまり腰を引いてるもんだから



『なるほど、これが勇次郎なりの玉ピン対策なんだな』と、

勝手に感心しちゃいましたよ! 畜生、なんだよ車椅子って!!
そんな事やるぐらいなら、どっちが先に玉ピンを当てられるかで勝負しろよ!!(されても困ります)


そして何故か郭を乗せて車椅子を押し始める勇次郎

一体、何を考えてるんでしょうか?
こんな勇次郎がお年寄りを大事にする風景なんて見せられても

喜ぶのはバリアフリーマン(byキン肉マンU世)ぐらいなものです


そんな様子を観客たちが固唾を呑んで見守っていると、いきなり勇次郎が郭に話しかけます



「郭 海皇よ・・・・・・
おまえはここへ辿りつくために
何を捨て・・・何を手に入れた・・・
金銭・・・朋友・・・女・・・酒・・・
安らかに過ごし暮らし続けられたハズだった膨大な時間・・・・・・
自ら足を踏み入れた 苦痛と難行の百と数十余年・・・
何を手に入れ・・・・・・何を失った・・・・・・・・・答えてくれ」



車椅子を押しながら郭に質問する勇次郎
いや・・・別に質問するのはいいんですよ。みんなやってる事ですし

ただ・・・・・・車椅子を押す必要がどこにあるのかなと


どうしたんでしょうか勇次郎。なんか妙に敬老精神に溢れてます
なんか敬老の日にお爺ちゃんに手作りの湯のみをプレゼントする孫のような優しさです
ひょっとして、息子とその嫁に対する「俺にもこれぐらい尽くせよ」と言う遠まわしなメッセージなのでしょうか?


何と言うかまぁ・・・『達人同士の戦いは難しすぎる』って奴ですね。うん、便利な言葉だこれは(投げやり)


ともかく、勇次郎の問いに郭が答えます
勇次郎的には、郭を自分がこれから歩む道の延長と考えてるんでしょうか?
それとも、地上最強の『生物』として、人の限界近くまで強くなった存在への興味でしょうか?

まぁ、勇次郎的におセンチなのは似合わないので、
多分これは強者を相手に純然たる興味がわいたと言う事でしょう
伝統の化身を相手にするのだから、その伝統の隅々まで知りたくなったとか


もしくは、色々話させた上で、「実は聞いてなかった」とボケてとことん虚仮にするつもりとか



「日本の・・・・・・強き人よ」


郭が勇次郎に返答する
何故か、前は「弱い」と断じたのに今回は強き人になっている

試合を重ねて勇次郎を認めるようになったんでしょうか?
こういう質問ができる相手だと知って敬意を表しようとしているとか、


もしくは、お爺ちゃんついにボケちゃったとか



「おぬしなら理解るじゃろう・・・・・・
中国武術史4000年――
わたしほど力に憧れた者はおらぬ
力さえ手に入るなら 強き人よ・・・・・・・・・
女も・・・・・・朋友も・・・・・・・酒も・・・・・・
地位も・・・・・・名誉も・・・・・・親兄弟をも捨てることに迷いはない
むしろ日に日に己の内にたくわえられてゆく力に
我を忘れるほど酔いしれたものじゃ
そんなわたしが何を手放すとき最も苦痛を感じたか
力・・・身を焦すほど欲した力 その力を捨て去った瞬間じゃよ」



まぁ、早い話が4000年で一番ワガママだったと


力さえあれば何もいらなかったと言う生涯を過ごしてきた郭海皇と言う男
きっと餓えた民衆にも「パンが無ければ力をつければいいじゃない」と言った事でしょう

とりあえず問題はこの「力を捨て去った」発言でしょう
全てを捨てて得たはずの力を捨て去った。普通は意味が通りません

言葉通りに受け取れば、力を捨て去る事で何か対価を得たはずです
それは果たして何なのか? そしてそれは勇次郎に通用するものなのか?

どんどん盛り上がって参りました大将戦。できれば、このまま失速せずに突き進んで欲しいものです


むしろ、餓狼伝がアッパーズ休刊の際に受け入れ先を発表しなかったのは、
余計な事は気にせずこの大将戦に集中したいからと言う決意の表れだと信じたいぐらいです


できれば、勇次郎VS独歩戦以上の名試合を期待したいものです