バキ
第156話『危機の源』
カランコロンと下駄を鳴らしながら道着の上にコートを羽織った老人が大河を渡っていく
これだけ書くと、裏庭のアルジャーノンのお墓に花束を供えられてしまいそうですが
幻影の大河が中々シュールな光景を目の前に展開しております
「立て続けに現れる
障害物の幻影―――」
ここで引き返せないのが武道家の辛いところ
ポケットに手を突っ込んだままたじろぐ様子も見せずに大河を渡りきります
「柳龍光がいかに危険な相手とはいえ―――――――――
いかなる仕掛けを弄して待っているとはいえ―――――――――」
ここで再び渋川さんの歩みが止まります
目の前に広がるのは底の見えない断崖絶壁
ここもカランコロンと下駄を鳴らしながら歩くつもりでしょうか?
とはいえ、さすがにこの幻影はいささか過剰気味というもの。さすがの渋川さんも
「これほどまでに危険な相手か!!?」
と、逆の意味で驚いています
まぁ、読者はもうその疑いを確信しています
本部さんにボコられている柳さんは今や別の意味で危険です
もしかしたら、渋川さんの迎える危険とは
かつて自分の片目を奪ってバキを負かしたほどの男が
本部なんかにボコられている姿を見てショック死する事なのではないでしょうか?
その頃、我らが本部さんは
柳さんの足に刺さっていた日本刀を引き抜き、剣先を眼前に突きつけていました
「認めるよな柳さん・・・・・・
勝負ありだ」
相変わらず本部さんが別人モードです
なんだかどんどん若返ってるんじゃないかとさえ思えます
そんな無駄にカッコいい本部さんに対し、柳さんが不敵に笑い出します
「フ・・・フフ・・・本部さん」
おおっ!?
ついにここから逆転劇か!!?
いつも通りの本部さんの姿が拝めるのか!!?
と、思いきや・・・
「後・・・・・・・・・・・・・・・」
なんと! 後ろの勇次郎!!
相変わらず立ってるだけで凄い存在感です
あと、このシーンだけ見ると、何だか本部と勇次郎の方がよっぽど親子っぽいです
そして、勇次郎のお姿を確認し、本部さんが目を丸く剥きます
おおっ! この目だ!! この情けない目こそが本部さんの瞳だ!!!
さらに本部さんは「お・・・」となにやら言いかけたかと思うと・・・
「勇次郎オオオォオォッッ」
血塗れの日本刀を今度は勇次郎に向けます
磨いた五体はどうした
もしかしたら
夜の公園で武術家二人=勝負でしょう=よかったな本部よ 地面がコンクリートじゃなくてよ
の三段論法により、眠っていたトラウマが目覚めたのかもしれません
今にも、「まずは土下座せいッッッッ」と言い出しかねない勢いのある叫びです
しかしこの叫べば叫ぶほど情けなく聞こえる叫びも本部さんの声です
何だか、やっと本当の本部さんに会えたような気がします
そんな、本当の本部さん
なす術なくあっさり剣先を握られてしまいます
「アホウが」
クスクスと笑う勇次郎
そして、指先に力を入れると・・・
ビキッ
折れず、そして曲がらずと言われる日本刀が指先の力だけであっさりと折られた
本部さんも、柳さんも、思わず呆然としてしまう
そして、割箸をへし折るように、再び日本刀の先をへし折る勇次郎
半分ぐらいの短さにされた日本刀
もはや武器として満足に振るえぬだろう
諦めたかのように手元から日本刀を落とす本部さん
何だか、先週まであれだけカッコ良かったのに戦わすして噛まされてしまったようです
そして、眼中に無いとの様子で本部さんを尻目に柳さんの前まで歩む勇次郎
「柳よ・・・」
毒手を失った右手からは血が流れ続ける
そして目の前に立つは『地上最強の生物』範馬勇次郎
そんな、あまりにも絶望的な状況に柳も冷や汗が止まらない様子だ
柳の顔を覗き込むようにして、勇次郎は言う
「おめェの敗けだ」
突きつけられた現実に青筋を浮かべながら震える柳
美味しいツメを横から掻っ攫われて冷や汗を流している本部
そして、全てを見透かしたかのようにしたり顔で微笑みを浮かべる勇次郎
三人の間を、一陣の風が吹き抜ける・・・
死刑囚編・完
・・・いや、嘘ですけど
柳さんまで敗北知っちゃったら、これからどうするのでしょう?
やっぱりここから勇次郎&オリバがラスボスとしてトリを勤めるのでしょうか?
つーか、こんな大詰めにさっぱり絡んで来ない主人公はいったい何なのでしょうか?
個人的な趣味で現在のバキの状態を予想させていただくと
バキはもう死んでいます
それも、ただ死んでいるだけでなく
実はバキに毒手が効いていなかったわけではなく
あの時、バキはすでに毒手のダメージで死にかけていたのです
それをロウソクの火が燃え尽きる直前の輝きのような力で柳さん達を圧倒
そして、限界を悟り、倒れる前に最後の力を振り絞って梢江ちゃんを連れて逃げたのです
バキに残された命はあと僅か
結果的に、柳に負けた事になるのだろう
いや、命尽きるまで戦い続ければあるいは勝てるかもしれない
しかし、最後の命は愛する女を護る事に使いたい
自分の母親がそうしたように、最愛を守るために、命を
「勝たなくていい
守れりゃいい」
そしてバキは梢江の中に一粒種を残して生き絶え・・・
と、これぐらいやらないと今の主人公不信は拭えないと思います
別に死んでなくてもいいですが、とにかく毒手は効いてたぐらいはやらないと
とにかく、死刑囚の敗北は一通り流してしまったようなので
来週以降、板垣先生がどのような展開を見せてくれるか楽しみです
とりあえず、バキの出番はいらないんで、勇次郎だけ出してくれればいいんですけど