11月5日







「そう言えばここんとこ毎年、ハロウィン近辺では更新してたからこりゃ今年も頑張んべかなと思ったのですがネタがまったくありません。どうしましょう?」




「そんな見切り発車で先の予定立てていいのは大学生までだと思うんだが?




「さっ、うっとおしい前口上はさっさと切り替えてハロウィンパーティーを始めましょ〜。今年は新作の南瓜ウイロウと南瓜八橋と白い恋人南瓜に南瓜チャンプルーもありますよっ♪」



冬至じゃねぇんだ


お前、ハロウィンをただ南瓜食う日と勘違いしてないか? ハロウィンはもっとこう・・・ハロウィンパレードで、ベビプリのヒカルが虎ビキニで町を練り歩くを視姦して楽しむような嬉し恥ずかしのイベントなんだ・・・!」




「お前は萌えのアクセントになりゃ旧正月でも高田純次の誕生日でも構わんのだろうが。・・・ってーか、今のご時世まともに百鬼夜行なんかやったら一発で取り締まられるぞ?



「なんで? 私は別にハロウィンパレードで子供からお菓子貰いに行って、お菓子をくれない幼女にはイタズラしようとか言ってるわけじゃないんだよ?」




「その発言、取りようによっては犯行予告に聞こえるから注意して下さいね? ・・・いや、最近はそう言うの五月蝿いんですよ。妖対法の改正とか色々ありまして」



「ごめん。今、すげぇ聞きなれない単語が聞こえた




「ハロウィンパレードでトリック・オア・トリートとかな、そう言う露骨なみかじめの取り方は一発で検挙だよ。今はお供え用の線香を一本数万円で買わせるとか、そういう回りくど〜いやり方になってんの。最近じゃ、それすら違法になる方向で動いてるけどよ」




「地縛霊が起こした霊障の責任を土地神様に問えるようにもなりましたしねぇ、この国の妖怪は身動きとりにくい世の中になってますよ。そのくせ、陰陽庁や各退魔団体の不祥事も後を絶ちませんし。悪魔が集めた魂を回収して、それを自分達が私的な儀式の生贄に使ってたってのはどういう神経してるんでしょうか!」



「ごめん、私はアニメ版鬼太郎派だからそこら辺の生々しい事情ってちっとも興味ないんだけど。・・・もうちょっと、明るい話題にならないわけ?」




「鬼太郎か・・・その辺の事情も、全然明るくないんだよな。まぁ、誰の事とは言わんがね。妖怪の中で妖怪狩りしてる連中にはぬらりひょんの旦那と昵懇の奴等もいてな。そういうのが建前上は妖怪の世界から縁を切られてんだよ。下手に暴れると、さっきも言った問題で総大将にまで事が及んじまうってんでな。だから、あらかじめお互い納得ずくで破門しとくわけだ。偽装云々は人の世でも流行って問題にもなっただろ? だが、組織を守るためには偽装もやむなしって事もあるんだ




「遊撃要員がいないと、外敵の侵略から地元を守れませんからねぇ。ただでさえどんどん西洋妖怪のシェアが拡大している現状ですから。帝都の闇に根深く入り込んでる連中はともかく、九州の方でも半島から大陸妖怪が入ってきてるって言うし、北海道に至ってはただでさえ本州と繋がりが薄いってのにロシア妖怪が入り込み放題ですから・・・最近では本場・出雲のあたりでも大陸・西洋妖怪が幅を利かせ始めてるって聞きます。我々人間も、見せ掛けの平和に甘えてられない事態になっているわけですよ」



聞きたくねえっ・・・! そんな話・・・!(黒沢さんフェイスで)


そう言う物騒な会話は『実話ナックルズ』でやってくれ。表紙は板垣先生でな」




「お前が話振ってきたんだろ。だがまぁ、剣呑な話題だと飯が不味くなるのは確かだな。・・・うむ、ごま油で揚げられた南瓜の天麩羅が実にサクサクしていて美味い」




「うふふ、やっぱり平和が一番ですものね♪ デザートにはパンプキンパイもありますからね〜・・・・・・とと、お電話です。ちょっと失礼します」



「じゃあ、せっかくだからもっとハロウィンに相応しい話をしよう。テーマは『エロ怖いコスプレ』とかで」




なんだその饅頭怖いみたいなフレーズは




「はい、もしもし桜邪で・・・・・・キムンの親分さんが!!? ちょっと、それはどういう・・・えぇ、はい・・・」



「だってさぁ、せっかくの嬉し恥ずかしハロウィンなんだからさぁ・・・旬であるホラーコスプレ娘とかの話した方がいいと思うんだよぉ。『お菓子くれなきゃイタズラしちゃうぞぉ〜?』とか言ってくるお嬢ちゃんに、甘い甘いご褒美をあげるような展開にした方がいいと思うんだよぉ・・・あの嫌なフラグの立ってる会話はガン無視して




「・・・今の電話、北の件についてだろ? ・・・大体、内容の予想はつくよ」




「えぇ、イノヴェルチグループの襲撃があったそうです。やはり彼らに手打ちの意志などなかったんでしょう・・・キムンさんと側近の皆さんがやられて・・・パウチさんが、攫われたそうです・・・」




「言わんこっちゃねぇや。今時、仁義なんて本州でも廃れたってあれほど言ったのによぉ・・・まったく、雪国の妖はヌルくていかんね。アイヌ語で「入り口(アバ)の地(シリ)」とはよく言ったもんだ。このままだと今後はあそこがロシア妖怪の窓口になるな」



「やっぱり、インパクトが強いのは狼娘だと思うのですよ。なんだかんだ言って牙とか犬耳とかは分かり易いし、ゴツい感じのモンスターは着ぐるみっぽくなって露出も減るしね! 見えないのも味わい深いけど、やっぱり露出の多さはダイレクトにパワーを生みますよ! チカライズパワー!!




「一応、建前では協定があるからなぁ。助け請われても出張るなってお達しだろ? あっちほどじゃねぇが、こっちにも連中の進出はあるからな。要らん波風は立てたくはねぇんだろうなぁ・・・化け物が争い恐れてどうすんだって気もするが」



ねぇ、人の話聞いてる?


あと、話の筋がおかしくない? そんなの、連絡しないのが一番じゃない? そんな「行くなよ! 絶対行くなよ!!」って連絡するのダチョウ倶楽部だけだと思うんだけど」




「仕方ありませんよ。あちらには立場ってものがありますから。それに、今の電話もただ念押しされただけです。自分達は一切関係ないからって。・・・北までの旅費ぐらい出してくれたってバチは当たらないと思うんですけどねぇ」




「下手すると万一の時は香典も出ねぇな、こりゃ」




「あはは、違いないですね。・・・・・・縁起でもないですけど」




「だからなんでそこで荷物まとめてんの? 白木の木刀とかボウガンとか、見るからに物騒なものばかり鞄に詰めてんの?」




「まぁ、お前の場合はほんとに止めたきゃ電話じゃなくて兵隊よこせってなもんだからな。落としどころって意味じゃ向こうが気ぃ使ってくれた形だろ。ただの人間相手じゃ破格の対応だ」




「確かに、ただの人間がのこのこでしゃばっていい話だとは思いませんが・・・隣人の米櫃に砂撒かれてへらへら見てられるほど、私は人間できてもいませんからねぇ」



「だからどこへ行こうとしてんだお前らは。いや、場所的な意味じゃなくて




「大体、個人的な仇討ちだとか人助けとかならまだ抑えも利きますが・・・・・・あちらさんには色々と義理がありますからねぇ。こっちの元親分も散々お世話になりましたし、ここで動かないなら死んでるも同じです」




「いやぁ、俺は別に義理だなんだってものに興味ないし助けるメリットも特に無いしなぁ」



「おお、それでこその樫の木おじさん! こんな時だけはあんたのその小悪党ぶりが頼もしい!!」




「だがこれでパウチのお嬢にもう会えなくなるってのは寂しい限りだ。こんな年食ったおじさんにしてみりゃ、若い娘の知り合いなんて同じ重さの金より貴重だってのにな? ・・・・・・まぁ、これで最後になるかもしれないなら、もう一度ぐらい会いに行ってやってもバチはあたらんだろ」



あんたそんなキャラじゃねぇだろ


なんだ? 今日の脚本は三条陸か? 落ち着け! ねずみ男の分際で渋いおっさんキャラぶるな! あんたは・・・私と同じ側の存在のはずだろうが・・・!」




「そう言われてもなぁ。俺の場合、嫌がってもどうせ桜邪に引っ張ってかれるんだし。それだったら、少しでも得ができるように前向きな検討を重ねた方がいいだろ」




「そうですねぇ。私は現世利益なんて二の次三の次でいいですが、個人の満足だけで収めるには少々事の大きな話ですし。樫の木さん、何か派手に落とし前つけられて、なるべく後腐れなく、旅費分ぐらいはトントンになるようなアイディアってあります?」




「虫がいいにも程があるな。そんなもんがありゃこっちから喜んで抗争しかけるだろ常考」




「いやホラ、私は無茶振りする係じゃないですか。それを樫の木さんが具体性のあるアイディアにして、二人で実現する。いつものチームワークでいきましょうよ♪」




「わ〜ったよ・・・・・・え〜と、あの連中はたしか、ロシアの吸血鬼だったか。なら、ロシア正教会が積極的に介入する理由にならなくても癒着は確実にありえないわけで・・・流派が東方教会だってー事を考えるに・・・元共産圏だから・・・いやいや、そうじゃなくて・・・・・・・・・ったく! 宗教ってーのはめんどくせぇなぁ! 相手がイノヴェルチじゃなきゃこんなうざってぇファクターは無視できるのによぉ・・・・・・・・・イノヴェルチ(異教信者)?」




「何かいいアイディアでました?」




「ろくでもないのは出たな。ところでお前、もし死んだ相手に呪われたくなかったらどうする?」




「どうするもなにも、お墓立ててお祀りいたしますね」




「そう、俗に言う御霊信仰に通じる日本独特の概念だな。自分達を怨んでいるはずの相手を神として祀る事でその御霊を鎮めて守護とするやり方だ」




「和をもって尊しと為す。実に素晴らしい思想だと思いますよ♪」




「悪趣味な欺瞞と言えなくもないがな。しかし、外国では逆のやり方が主流だ。曰く吸血鬼の心臓には白木の杭を打ちつけて処すべし。つまり、死体を辱める事でその霊を退治してしまおうという考え方だ。ロシアでは、イノヴェルチ(異端者)は墓にすら入れられずその骸を冒涜される。そのやり方が向こうでは正しいんだ」




「乱暴ですねぇ。しかしまたなんでいきなりそんな話に?」




「まぁ、聞け。要するに文化の違いがそれだけ根深いという事だ。郷に入りては郷に従えと言うのは、他所の文化圏で自分達の文化を主張しても仕方ないから従っておけと言う事だしな」




「今回の件みたいに、他人のシマを荒らして自重しない人たちもいますけどねー。仁義もへったくれもないとはまさにこの事ですよ」




「だから、文化が違うんだよ。相手をするならこちらが奥ゆかしく相手の文化をご教授いただいた上で相応の対処が必要になるってわけだ」




「相応の対処、ですか・・・・・・それは確かに、ろくでもない策になりそうですね」




「そうだ。で、ちょっと内容が跳ぶが・・・・・・お前の身内、まだ穏健的改宗実験とかってーの続けてんの?」



「あ、僕そういうの『魍魎の匣』で聞いた事あるよ」




「・・・・・・カルト宗教や特定の思想団体に洗脳を施された人間を速やかに思想的中立な状態へと復帰させるための研究なら継続中です」



なんで露骨に棒読みになる




「あぁそうかい。じゃあ、その人非人と連絡つけられるようにしといてくれ。色々とデカい取引材料になりそうだからな。事の運びによっては、そっちから報酬引き出せる」




「分かりました。・・・こういう話持ちかけるのはあまり気が進みませんけど。一応は、私も縁を切られてる身の上ですし」




「虚仮じゃねぇかそんな縁切り。嫌なら降りるか? 言っとくが、これやるとまた悪名上がるぞ。北の連中と同等かそれ以上ぐらいには」




「上がったものはまた当分間抜けを演じて下げればいいんですけど、後味いいものじゃあなさそうですねぇ」




「後味いいのがよけりゃ決闘でもするか? 近くの牧場で、ラズベリーアイスでも食いながら」




「真っ向から挑まれて、勝ち目があるのであればそれが一番スッキリしそうですね。まぁ、王道には王道を。外道には外道を。相手の流儀に合わせるのが私に尽くせるせめてもの礼儀ってものですよ。相手に合わせて進む道を変えるのが邪道の往き方ってものでしてね。それに、貴方の口ぶりですとなるべく不殺で済ませそうですし。なら私にはこれ以上文句つける筋合いがありません」




「あぁ、今回はお前の一番得意なやり方でいこう。命はなるべく壊さずに、心だけ徹底的に削りに行く。連中よりお前の方が上手だろ? 相手に「後生だから殺してくれ」って乞われるような陰湿な嫌がらせに関しては」




「当然です。他者に対する愛と敬意を持たない輩に、私がその技術で遅れを取ろうはずがありません。なんせほら、拷問は仁術ですから♪」




「狂人はのせるのが楽でいいね。じゃ、そろそろ行くか。『人でなし』の桜邪よ」




「そのあだ名、嫌いなんですけどねぇ・・・・・・まぁ、力自慢の妖怪さんに、人間が邪さで遅れをとるわけには参りませんからね。見せてあげましょう、化け物よりも業の深い人間の恐ろしさを」




「おうよ。・・・・・・ったく! よくも俺のお嬢に手ぇ出しやがったな。灰は灰に。塵は塵に。金に目が眩んだ薄汚いゴミどもは、その魂や尊厳までも金に変えてやる」



「・・・・・・この南瓜料理の山は、一人残された私が片付けなきゃいけないのかなぁ・・・・・・・・・うん、冷めきってる」