7月17日
「・・・・・・我々は手に入れるはずだったのだ。今度こそ美しい必殺を。それは幻ではなかったはずなのだ」
「・・・七夕から十日も経つのにまだ腐ってんのかアイツは。事件に巻き込まれた関口巽じゃあるまいしいつまでもグチグチグダグダいじけやがって」
「気持ちは分かりますけどねぇ。ほら、連ドラ化するってニュースもでてきちゃいましたし・・・」
「止めろー! 必殺スタッフを止めろー!!
彼らは暴走している!!」
「今のお前ほどはしてねぇだろうよ」
「今にもアンチ・必殺・ドライブを開発しかねない程の怨念がにじみ出てますね・・・」
「つーかさぁ、見なきゃいい話だろ? そんな一々反応してギャーギャー女のように泣き喚くぐらいなら」
「未練・・・だぜぇ・・・
樫の木おじさん・・・」
「樫の木さん・・・マニアというのは・・・焼かれると知りつつも篝火から逃れる生き方を知らない悲しい蛾なんですよ・・・」
「ふーん、そのまま死ねばいいのに」
「くぅ、人が沈んでると言うのにウキウキ面しやがって・・・お前には大事なものを汚された漢の悲しみが分からんのかぁ!!?」
「あっしにゃあ関わりのねぇこって」
「・・・枯らしてやろうかこの無宿樫の木」
「まぁまぁ、相手にしても喜ばせるだけですよ? 子供の嫌がらせと同じなんですから、ほっとけばいいんです。それより、内容は酷くてもチャットで話の種になったんでしょ? ならそれでいいじゃないですか」
「そういやお前も重度の必殺マニアだろ? なんでそんなさばさばしてんだ?」
「七夕の日は、短冊飾って夕涼みした後は早々と寝ましたから♪ 達人は危機に出会う前に回避するからこそ達人なんですよ〜♪」
「・・・そういやぁ、あの日って確か、21時から10分ほどテレビつけて、布団に包まって泣きながら寝てたよなお前」
「・・・女性の古傷抉るような野暮はいけませんよ樫の木さん
私だってあの10分の悪夢から立ち直るのにどれだけ時間かかったと・・・」
「分かった。分かったからミシミシ音がするまでラジオペンチを握り締めるな」
「うぅ、7月7日はもうちょっと良い日になると思ってたのに・・・もうちょっとドラマがマシな出来だったらさ! チャットももう少しエロ方面じゃない方に盛り上がったはずなんだよ!!」
「・・・どっちにしろお前んとこのチャットだから1時過ぎる頃にはエロトークオンリーになってたはずだと思う」
「エロトークにしてもさぁ。私にもう少し精神防御力あったら、せっかくのポニテの日なんだし、もうちょっと私の趣味に特化した話題になっても良かったと思うんですよ」
「・・・あぁ、そういやお前ポニテ萌えだっけ」
「もちろんそうさ!(最高の笑顔で) 世界でもっとも浴衣に似合うあの髪型こそ日本の心だと思うよ・・・浴衣とうなじとポニーテール・・・女性の美の全てがそこにあると思わないかね!!?」
(いきなり随分上機嫌になったなこいつ・・・)「・・・まぁ、一家言あるのは分かったが・・・」
ふっふっふ、語ろうと思えば七日七晩は寝ずに語れるぜ?
「大吉さん大吉さん」
「ん? なんだ?」
「ほら、ポニテポニテ(後ろを向いて束ねた髪を持ち上げながら)」
スタスタスタスタ
「・・・・・・(無言のまま桜邪に近づく)」
スッ・・・
「・・・・・・(無言のまま、剃刀付きの指輪を嵌める)」
プチッ
「・・・・・・(無言のまま、ポニテを結んでるリボンを斬る)」
「え?」
「・・・・・・(無言のまま、解いた髪でギリギリと桜邪の首を絞める)」
「・・・・・・!!(声が出ないので必死にタップ中)」
ゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴスゴス
「地獄で閻魔が待ってるぜ
(髪を締めながら桜邪のわき腹に拳でセコ突き連打中)」
ゲシッ!!
(桜邪の背中に蹴りを入れて距離をとる)
「痛っ!!」
「あ〜もう気ぃ悪いわ! 人がせっかく気持ちよくポニテについて語ろうとしてる時に見苦しいもの見せようとすんな!!」
「(ゲホゲホと咳き込みながら)だからって・・・赤井剣之介さんばりの首絞め技した上に殴る蹴るまでしますか普通?」
「恐ろしい男だ・・・」
「まぁ、そんな分かり難いやいとや又右衛門さんの物真似はともかくですね。どうやら大吉さん、表面上は立ち直ったように見えますけど、むしろ心の奥底にトラウマとして落ち込んじゃってるみたいで、ヤサグレの根はまだまだ深いようですね」
「・・・それは本当に心からどうでもいいが、お前仕返しとかしないの? いつもなら、すでに大吉はドブ川で二次元キャラに手を伸ばしながら息絶えてなきゃおかしいはずだが」
「・・・まぁ、私もダメージ少ないとはいえマニアの端くれですし。『痛み』は理解できますから」
「俺には欠片も理解できんがなぁ」
「それに自称紳士、公称ヘタレの大吉さんが女性に暴力を振るってきたんです。これは相当追い詰められてしまった証拠ですよ」
「むぅ、そりゃまた大胆な仮説だな。それを裏付けるには、お前があいつに女と見なされてるという前提が必要になってくるぞ?」
「ドブ川に流れて海まで行ってみますか?」
「待て! 俺を殺せば日本の夜明けが遅れるぞ!!」
「とにかく、そんな分かり難い暗闇仕留人ネタはともかくですね。今回は大目に見てあげようかと思うのですよ。ファンの情けとして」
「ふむ、殊勝な心がけだな」
「まぁ、こういうのって助け合いの心ですしね〜」
「だが、それだと俺が面白くない」
「はい?」
「(桜邪の声で)まぁ、一般受けはした事ですしこれも後期必殺の延長だと思えばいいんじゃないですかねぇ? ジャニーズ事務所が儲けになると踏んでくれりゃ、ジャニーズキャラ萌え時代劇としてしばらく続けてくれるんじゃないですか? どうせ人気出ても2〜3作続編が出たぐらいで使い捨てられるでしょうし、後はまた黴の生えたマニアが大事に旧作を脳内リサイクルして楽しんでくれるでしょうし。テレビ局的には文句だけ人一倍多いマニアなんかDVD購入要員でしかないですしどーでもいい存在だと思いますしねー」
「ちょっ! 何を!!?」
「ケケェーッ!!?(怒りのスーパーモード突入)」
「落ち着いて下さい大吉さん! こんな手に引っかかるのはいくらなんでもベタすぎ・・・きゃああああああ!!」
「さて・・・(缶ビールの蓋を開け、観戦準備万端)」
ドガァッドカッドカッ
「キャオラッ!!(踵の下段蹴りをかましながら)」
「凄ェ・・・・・・ぜんぜん遠慮しやがらねェでやんの・・・・・・(喜色満面でビールを煽りながら)」
〜20分経過〜
「あ・・・ありのまま 今 起こった事を話すぜ! 『おれは桜邪の前でポニーテールについて語っていたと思ったらいつのまにかフルボッコにしていた』 な・・・何を言っているのかわからねーと思うが・・・」
「いや、見たまんま分かってるから別にいい。・・・まぁ、それなりに楽しめたがどうせなら暴走に任せてそのままヤっちまえば良かったのに。やっぱ女として見られてねーじゃんあいつ。つまんねー」
「・・・・・・どうしよう?(樫の木おじさんの方を振り向く)」
「笑えば、いいと思うよ?」
「いや、流石に気分はスッキリしたけど申し訳ないっつーか後がどうなるか想像もしたくもないっつーか・・・」
「あぁ、スッキリしましたか。そりゃ何よりです」
「・・・・・・(恐怖で硬直しながら)」
「どんな気分です? 大吉さん・・・・・・(ハンカチで口内に溜まっている血を拭いながら)」
「さて、と・・・(二本目の缶ビールの蓋を開けて観戦第二ラウンド目モード)」
「動けないのに背後から近づかれる気分ってのはたとえると・・・水の中に1分しか潜ってられない男が・・・限界1分目にやっと水面で呼吸しようとした瞬間!(管理人の肩を掴む)」
「グイイッ ・・・・・・とさらに足をつかまえられて水中にひきずり込まれる気分に似てるっていうのは・・・・・・どうですかね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「言い残す事があれば、言っといた方がいいぞー。あと、せめて最後は笑ってろー。死に際に微笑めない奴は生まれ変われねぇぞー?」
「・・・外野はあのように申しておりますが?」
「・・・・・・・・・えーと・・・・・・ごめんなさい?」
「・・・・・・・・・・・・(管理人の肩に手をおいたままゆっくりと前に回り込む)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ポン
「貸し一つで
(管理人の肩を叩きながら)」
「・・・・・・・・・・・はい」
(ミナミの帝王に負債作ったような・・・いや、闇金のウシジマ君相手に金借りた気分だ)
「・・・けっ、つまんねー。偽善者め、そうやってお前は他人にいい顔して、怒りを溜め込みながらどうでもいい人生を送るんだな」
「いえ、別に怒ってないわけじゃありませんよ?
(一瞬で樫の木おじさんの背後に移動しながら)」
「!!!?? ば、馬鹿な・・・この俺が反応すらできないスピードだと・・・? 怒りの力でパワーアップしたとでもいうのか・・・下等な人間風情が!!?」
「なんだあの負けフラグ」
「樫の木さん・・・ちょっと・・・頭、冷やしましょうか?」
「お父さーん! お父さーん!! 魔王がくるよー!!」
「言い残す事があるなら、お聞きしてさしあげますが?」
「・・・私が言うのもなんだけど、あの死亡フラグは不可避だと思うなぁ」
「・・・・・・桜邪、お前・・・ライオンさんは好きか・・・?」
「まぁ、好きですね。今の気分もそんな感じです。猛きこと、獅子の如く。強きこと、また獅子の如くって感じで」
「ゾワンゾワンだ! あいつ、すげぇゾワンゾワンだ!!」
「そうか・・・桜邪・・・俺の一番好きな動物は・・・カバさんだ」
「・・・・・・一瞬素に帰らせてもらえば、
無理があるだろその逃げ方
むしろこの前のガッシュで感動した人間を軒並み敵に回しかねん」
「そういえば、アフリカで一番人を殺す野生生物って言うのはカバさんだそうですね♪」
「わかるか!? 桜邪・・・ライオンの牙に小鳥はとまらないのさ」
「にぎったまんまの手でも・・・柳の綿毛ぐらいならのりますよねェ・・・私は学がないから、よくわかりませんが・・・それで・・・十分なんじゃないですかねえ・・・」
「・・・投了、だな」
「・・・・・・えぇい、こうなったら実力行使だ! 大吉にいいようにボコられてた今の貴様なら俺でも倒せるはず! カバさんは自分を守る時は特に強い!! ライオンだって倒しちまうんだぜ!!!」
「なんてカッコ悪く目に映る生物なんだ・・・」
「シン・ラジオ・ペンチ・メッタザシ!!」
ザシュザシュザシュザシュザシュ!!
「ギャギャギャギャギャギャギャギャギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「・・・まぁ、とにかく憎しみは不毛って事がなんとなく魂で理解できたので・・・その・・・変な言い方になりますが、ありがとうございました」
「えぇ、もう変に謝られるよりはそっちの方がいいですよ・・・っと(解体した樫の木おじさんを束ねて担ぎ上げながら)」
(・・・どこへ持ってく気だろう)
「それでは、私はこれで・・・」
「ぐうう・・・よくもやってくれたな貴様・・・しかし、俺がこの怨みを忘れない限り、第二第三の俺が甦り、必ずや貴様に仕置きするだろう・・・忘れるな! この世に俺の憎しみがある限り俺は何度でも復活するのだ!!」
「・・・二回目三回目はもっと痛い方がいいですか?」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ・・・」
「・・・不毛だなぁ、ほんと」
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