10月8日




はい・・・えぇ・・・そういうワケなんで・・・申し訳ありませんでした・・・


「久しぶりに見かけたと思ったら、あの人、電話で何を謝ってるんですか?」


「それがな、風邪を引いたせいでゼミの合宿を休む報告をしているらしい」


「ああ、それで・・・道理でさっきから妙に声がしゃがれてると思いましたよ」





「いや、アレは今朝までオタクサークルの面々と、

飲み会後に徹夜でカラオケしてたせいで喉を潰したらしい


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



ゲシッ!(無言で後頭部に蹴り)


ITEッ!?

いきなり何しやがんだこのアマ、病人に向かって!!


「まぁ、性根が病んでるという点に関しては同意します
で、親切な私がそれを治してあげるので、治療だと思っていっぺん死になさい


医者はなんのためにあるんだ!?(手塚プロ作画っぽい顔で)


うぅ、風邪を引いてかなり辛い状態だってのにこの仕打ち・・・鬼よ! この嫁は鬼よ!!


「・・・なんで彼氏もいないのに姑にならなきゃいけないんですか」


「まぁ、マテマテ桜邪よ。大吉の言い分にも一理あるのだぞ?」


「盗人にも三分の理あり・・・とは言いますが、
仮病で合宿を休もうとしてる卑怯者にどんな理があると言うのですか?」


「うむ、例えばお前が血も涙も無い鬼だってとこは正しいとかな」



〜しばらくお待ち下さい〜



「えぇ、私はどうせ血も涙も無い人間ですから
人間は、どんな残酷な行為だって平気で出来ちゃうんですよ」


・・・・・・すいません。私はちゃんと真面目に弁解いたしますんで、
その匣に私の体を詰めようとするのはご勘弁願えませんでしょうか?


「―――ほう(鈴の転がるような声で)」


「えぇ、貴方の中身なんて見ても面白くありませんからね
で、どんな言い訳をお聞かせいただけるんですか?」


えぇ、実は風邪引いてるのはぶっちゃけ本当なのですよ?
頭痛もするし体の節々だって痛い。咳だって出るし熱だってあるんですよ?


「裁判長〜、熱が出てるのは去年からだから風邪は関係ありませ〜ん」


人の足引っ張ってねぇで大人しく匣に詰まってろクズ


「まぁ、風邪をひいてるのは百歩譲って事実だとしましょう
でも、それで飲み会に出て徹カラまでして合宿に出れないと言うのが通ると思いますか?」


もちろん通りますよ。だって、それで体力使い果たして寝込む事になったんですから


「・・・・・・・・・・・・・・(無言で小さな匣の中に管理人を押し込みはじめる)」


すいませんすいません許して下さいやめてとめてやめてとめて!

だって、飲み会どうしても出たかったんだもん! 卒論の中間発表終わらなかったんだもん!!

入らない! こんなのムリヤリ入れられたら壊れちゃうよ! お肉が! お肉が千切れちゃう!!


「安心して下さい。地獄で閻魔様が引っこ抜けるように、舌だけは無傷で逝かせてあげます


いや、嘘はついてねぇですよ?
ちゃんと風邪を引くために、最近毎日窓を開けて寝てましたから


「・・・・・・・・・・・・・・・マラソン大会サボりたい小学生ですか貴方は」


だって、火曜日に本当に風邪こじらせて、予定通り終わりそうになくなったんだもん
だから、せめて風邪をゼミ合宿の日まで引き伸ばそうと思って・・・あと、飲み会もどうしても行きたくて


「・・・こう言っちゃなんですが・・・
そこまで白々しい状況作っておいて、どうして単なる仮病じゃいけなかったんですか?」









だって、それじゃ普通過ぎてつまらないでしょ?


なら、ささやかでも笑いが取れそうな選択肢を選ぶ・・・それがプロの玄人(バイニン)ってもんだろ?


「・・・そんな自己満足のためにわざわざ風邪まで引きますか貴方って人は・・・」


大人になって何時の日か、こう言うくだらない事が大事だったって思える日が来るんだよ・・・


「・・・そんな人生で嬉しいのかお前?」


「ピアノをまた弾いてね」って言われたぐらい嬉しいね


大体、わざわざ喉を潰すのも楽じゃなかったんデスヨ?
明け方にみんな巻き込んでJAMプロジェクトメドレーとかやったり


「・・・それができるんなら余裕で合宿にも行けた気もしますが?」


いやぁ、不思議だねぇ。最初はほんとダルくて、飲み会でもちょっとフラフラしてたんだけど

なんかみんなで騒いでるうちにどんどん元気になってきて・・・
まるでみんなが僕に元気を分けてくれたような気になってきたんだよ! 代わりにみんなはもうぐったりしてたけど


どこのヴィクターだお前は


後輩が入れたキングゲイナーを振り付け付きで一緒に熱唱した後、連荘で「覚悟完了!」を入れた時は、

みんなから「自殺行為だ」だの「超Mだ」だのと散々言われたよ・・・流石に歌った後机に突っ伏したし
普段から腹式呼吸を心がけてるから、喉より先に腹筋が痛くなって大変だったよ・・・ただでさえ風邪で節々痛いのに


「・・・どうしてそこまで生命力を無駄遣いできるのかが疑問でなりません」


まぁ、その後も頑張ってペニシリンのロマンスとか熱唱したけどね♪


「一般曲か?」


「いえ、アニメ『セクシーコマンドー外伝すごいよマサルさん』の主題歌です」


まぁ、そのおかげでこのドラゴンボイスも手に入れて、

まったく怪しまれることなく合宿をお休みするお電話をいれられたわけですよ♪

あとは時間的に余裕もできた事だし、のんびりと卒論の中間発表レポートを作れば万事解決ですよ


「・・・以上、被告による弁明を終わります」


え? まだそれ続いてたの?
いつの間にかおじさんも匣から出てたからもう済んだ話だと思ったのに?


「問答無用のジャッジメントタイム!!」


「『アリエナイザーに対しては、スペシャルポリスの要請により、
遥か銀河の彼方にある宇宙最高裁判所から判決が下されるのだ』」


いや、思いっきり樫の木おじさんの声真似じゃねぇか!
遥か銀河の彼方どころか、目の前で口パクパクさせやがって!!







「その通り 我らは死の天使の代行人である!!
これより宗教裁判を行う!!
被告!!『梁山泊管理人』!!
被告!!『大吉マスター21』!!
判決は死刑!! 死刑だ!! 死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑死刑!!
お前は哀れだ だが許せぬ!!
実を結ばぬ烈花のように死ね!! 蝶の様に舞い蜂の様に死ね!!」




おい、宇宙最高裁判所はどこに行っちゃったんだ?


うおお! 茨が! なんかよく分からん茨が巻きついてきた!
えぇい、死ぬたびにワケの分からんパワーアップしやがってこのミディアン(化け物)め!!


「なんだあの人。やればできる人だったんじゃあないですか



ちょwwwwお前らマジ最悪wwwwww





〜しばらくお待ち下さい〜



「そして一つの悪は滅び・・・町に平和が訪れました」


「さて、次は俺をムリヤリ匣に詰めてくれた件だが・・・」


「第二審いきますか? 受けて立ちますよ。それこそ第三審どころか百審ぐらいまで


「だが、百一審目で勝てば俺の勝ちだ! いくぞ、決闘裁判第二審開始!!」


「・・・まぁ、いつも5回戦目辺りで貴方がマジ泣きして終わるんですけどね」