坊主頭のジム・キャリーが登場。何かを企んでいるようにいたずらっぽい笑みを蓄えている。すると開口一番、「バ〜〜ニャ〜ナムナム。バ〜デ〜ナムナム。」と意味不明の言葉を話し始める。場内、少々反応に困っている様子。「ア〜〜レ〜バニャニャ%★※&・・・僕は何を言ってるんだ!?」 トボケた様子のキャリー。 ここでいったん真面目になって、今回名誉賞を授与されるブレイク・エドワーズを紹介する。「彼は僕の人生に大きな影響をもたらしました。『暗闇でドッキリ』はコメディとして完璧。僕はクルーゾー警部の弟子になった気分で家族全員を襲ったものです。13年上の姉が義兄と寝ているベッドも襲撃しました。姉は傷ついたけど感じやすくなりました。」 真面目に話しているかと思ったら、やっぱり悪ふざけが飛び出す。場内大爆笑。 キャリーの一人舞台が終わると、紹介VTRが始まる。ブレイク・エドワーズといえばやっぱりピーター・セラーズ。まずは『暗闇でドッキリ』のドタバタシーンから。ピンク・パンサー・シリーズで有名なエドワーズ監督だが、シリアスなドラマも監督している。その『ティファニーで朝食を』と『酒とバラの日々』が紹介され、彼のもとで名演を見せたオードリー、ジャック・レモンの若き日々がスクリーンに蘇る。妻のジュリー・アンドリュースを主演に迎えた『ビクター/ビクトリア』ではミュージカルに挑戦。性別を偽る踊り子を演じたアンドリュースの迫力あるパフォーマンスが展開される。他、『パーティ』『テン』など、基本的にはドタバタ・コメディが中心のフィルモグラフィが次々と紹介される。名誉賞という重々しい名前からは想像もつかない軽妙な作品の連続だが、彼のような監督がその栄誉に浴すということは、アカデミーで軽視されがちなコメディという分野への正当な評価を表している。そのことが実に感慨深い。 VTRが終わり、いよいよエドワーズの登場。彼はすでに舞台袖にスタンバイしているが、包帯でグルグル巻きにされた左足にはギプスがはめられ、車椅子に座ることを余儀なくされている。晴れの舞台なのに怪我しちゃうとはツイてないのね・・・と素直に信じかけた瞬間、エドワーズの車椅子が暴走!猛スピードで舞台を横切り、反対側の壁をブチ破る。これがエドワーズお得意のドタバタギャグだとわかり、場内は爆笑の渦に包まれる。名誉賞を受け取る時にこんな子供じみたパフォーマンスを見せるなんて・・・素敵すぎる!!老いても血気盛ん、人を笑わせることが大好きだという信念が伝わってくる。 大破したスチロールの壁からよろよろと登場するエドワーズ。黒のタキシードは埃をかぶって、どこからどう見てもコントの爆破シーンの後のようだ。突然の"事故"に大慌てのキャリーに導かれ、ステージの中央へ。ここで場内は本日初のスタンディング・オベーションだ。「持っててくれ」とキャリーにオスカー像を預けると、「アカデミーの奴ら、僕にはくれないんだよ」とすかさず応酬。コメディに生涯を捧げたエドワーズ監督が名誉賞を授与されるなら、キャリーがオスカー像を手にする日もそのうちやってくるかもしれない、とチラリ思う。ついでに、今年ビル・マーレイが受賞すれば出来すぎたシナリオかな、とも。
埃だらけの上着を脱いだエドワーズ監督。白髪に眼鏡、すっかり小さくなってしまった体躯は一瞬、現役を退いた者の寂しさを漂わせるも、スピーチが始まればまだまだ現役のエンターテイナーであることが証明される。 「今まで出会った全ての人、そう、全ての人のおかげで私はここにいる。」 ポケットに両手をつっこんだまま、さらりと言ってのけるエドワーズ。「最初に思い出すのは、『パーティ』の撮影現場にいた小柄な男だ。彼はシャベルで象の糞をすくいながらこう歌っていたよ。『ショウほど素敵な商売はない』って。」 場内爆笑。 「(中略)つまり、このシャベルの男からアカデミーのみなさんまで、そして両親と、出鱈目なボキャブラリーのソプラノの英国人美女も(アンドリュース)、サンキュー。」 90秒のスピーチの中に笑いのエッセンスを詰め込み、飽くまで優雅に語るエドワーズの姿はこれまで名誉賞を受けてきたどんな先人たちにも劣るものではなかった。コメディ映画の未来に光あれ。 ビル・マーレイ登場。踊り場の手すりに寄りかかってリラックスポーズ。イタリアで撮影中の新作の役作りか、真っ白な髪が老いを感じさせて少々淋しいが、余裕のパフォーマンスにまだまだ衰えはない。 「東京での撮影4日目、一部スタッフが、監督の意図がわからないからと、丁重に辞意を表明した。しかし、丁重に断られた。」 "丁重に"という単語をことさら強調する。場内、大いに沸く。「今でも監督を変えるべきだったと思っている仲間はいる。でも彼女はアメリカ人女性として初めて監督賞候補になった。」 カメラ、ソフィアをクローズアップ。場内拍手。 『ロスト・イン・トランスレーション』の紹介VTRへ。マシュー南の姿が全世界に放映されるかとハラハラしていたが、全く別のシーン。少しホッとする。マシューは好きだけど、日本人以外が彼のお笑いを理解できるはずがない。まだ作品は未見だが、彼を含め、日本がどのように描写されているのか、確かめるのがちょっと怖い。 続いてスカーレット・ヨハンソンが登場。緑のドレスはけばけばしく、アップにした髪と朱々と塗りたくられた口紅との相乗効果をもって、弱冠20歳の彼女をまるで30過ぎのベテラン女優に見せる。笑みを蓄えながら優雅を装って歩く姿からは、映画で見るような瑞々しさはまるで感じられない。堂々たる今年のワースト・ドレッサー候補だ。しかもそんな姿で、「私は35年間メイクをしてきました。」・・・なんてジョークを飛ばすものだから、会場も反応に困る。悲しいまでのノー・リアクション。この経験が若いヨハンソンのトラウマにならなければいいのだが。 気を取り直して、「この賞は1981年に誕生しました。」とメーキャップ賞の歴史を紹介。そう、実はメーキャップ賞は現在の24部門の賞の中で最も最近誕生した賞なのだ。(ちなみにその後、映画のスタントを称える賞の設立が提案されたが、こちらは却下されている。) 候補作品の紹介VTR。『〜王の帰還』では、ウルクハイなどのモンスター・メイクではなく、フロドやアルウェンなどに施された、劇中では目立たなかった仕事が紹介される。でもアルウェンのメイク完成品を見ると、デジタル補正で全体がボヤけているのであまり意味をなしていないようにも思える・・・。VTRだけで判断するなら、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジョニー・デップや、ジェフリー・ラッシュの荒れた肌、ボロボロの歯といった細かい仕事のほうが目を引いた。 受賞は『〜王の帰還』のリチャード・テイラーとピーター・キング。キングは鋭角に剃りこまれたモミアゲがまるで特殊メイクのよう。感謝の言葉もそこそこにテイラーとバトンタッチ。テイラーは2度目のスピーチなのにキングより長く喋り、ついにはオーケストラに退場を促されてしまう。 |