第一部
授賞式開幕〜助演男優賞発表

舞台下に設置されたオーケストラの演奏に乗って第76回アカデミー賞授賞式が開幕。
高さ3mほどの踊り場にショーン・コネリー
が登場し、開会の辞を述べる。「映画は単なる娯楽でなく、人類を1つに結ぶ大きな力です。さあ今夜も映画の魔力を存分にお楽しみあれ。」

中央の巨大スクリーンに映し出されるのは、劇場の椅子に座り映画の開始を待つ観客たち。観客の一人としてビリー・クリスタル登場おもむろに脇のビデオカメラで録画を始める。場内爆笑。 続いてスナック菓子のオマケの指輪をはめるとスクリーンの中に引きずり込まれる。恒例のパロディ・ムービーの始まりだ!

まずは『ターミネーター3』。全裸のクリスタルが炎の輪の中で体を折っている。「アイル・ビー・バック!」とホスト復帰を高らかに宣言する。この後、昨年話題になった作品の中に次々とクリスタルが登場し、映画のキャラクターと掛け合いを演じる。その一部を紹介すると・・・。
『マスター・アンド・コマンダー』のジャック・オーブリーと共にマストの上に立つクリスタル「僕は君に投票したよ!本当だって!だから下ろして!」

『ファインディング・ニモ』の草食鮫たちと会話するクリスタル『Gigli』のDVD版は劇場版より2時間も短く なるんだって!」

『〜王の帰還』のゴラムに扮するクリスタルが池に映るもう1つの人格と対話している。「授賞式に行きたくないよ。だって悪魔が待ってるんだよ。」「悪魔って?」「(ミラマックス会長の)ワインスタインだよ。」

『恋愛適齢期』ニコルソンに裸を見られて慌てるクリスタル。同じく裸のキートンが現れ、場は騒然。

『ラスト・サムライ』のオールグレン大尉に扮するクリスタルが、真田広之に首を切られそうになると、「オーケーごめんなさい。野球賭博に関わったことを認めます。」。(殿堂入り候補の元メジャーリーガー、ピート・ローズ氏にひっかけたジョーク。野球ファンのクリスタルらしい。)。

再び『〜王の帰還』から、ミナス・ティリスの壮絶なバトル・シーン。レゴラスに扮するクリスタルは縦横無尽の大活躍。そこへマイケル・ムーアが現れ、カメラ片手に怒号を響かせる。「無意味な戦争は止めるんだ!恥を知れ!ホビット!」。その後、あの大きな象(何て名前?)に踏み潰されるムーア。(昨年の授賞式でのスピーチ「Shame on you!Bush!」は保守派のアカデミーにとっては迷惑千万なのだ。承知で今回のパロディ出演を受けるムーアに拍手!)

アラゴルンに扮したクリスタルが馬に跨って颯爽とミナス・ティリスを駆け上がっていく。バックではパロディ・ムービーの締めを告げるナレーション。「Overwork, underpayな(働きの割りに貰いの少ない)クリスタルが帰ってくる!Return of the Host!(ホストの帰還)」 見事な着地。
ラストにはガンダルフに扮したジャック・ニコルソンがゲストで登場。何とも豪華な結末。

ムービーが終わると、壇上にクリスタルが登場。「今宵は僕がみなさんのマスター・アンド・コマンダー(略してMC)として式を進行します。明朝までお付き合いください。とまずは軽くジャブ。場内大うけ。やっぱりクリスタルの司会は華がある。

そして早速出ました、恒例のオスカー・ナイト・ソング!

「♪It’s a wonderful night. It’s Oscar, Oscar Oscar, who will win?」。4年ぶりのクリスタルの歌声が懐かしい。作品賞候補を紹介するクリスタル得意のメドレー・ソングの始まりだ。と思いきや、メドレーの前に小ネタをはさむ余裕ぶり。シャリーズ、君は初ノミネートだったね?ホストへのチップを忘れずに!」、「ケイシャ、13歳だって?僕が始めて司会をしたのも13年前。ずいぶん世の中変わったよ。当時と言えば、ブッシュが仕掛けたイラク戦争が終結した直後で経済は悪化の一途だったんだから。。きわどいジョークに会場は大爆笑。クリスタルも得意のすまし顔で反応を楽しんでいる。

さあいよいよメドレーのスタート!まずは『ミスティック・リバー』だ。歌の中でクリスタルはひたすらイーストウッドをいじり倒す。「♪イーストウッドは何でもこなす。猿と共演もしたし、作曲も製作も自分でやる。『ベンチャー・ワゴン』では歌も歌ってたけど、もう二度と歌わないでね」

続いて『ロスト・イン・トランスレーション』「27日間で撮りあげたって?君のパパがマーロン・ブランドを起こすのにかかった時間より短いよ。」

『〜王の帰還』のメドレーが始まる前にジュリー・アンドリュースに詫びを入れるクリスタル。(彼女は名誉賞受賞の夫ブレイク・エドワーズに付き添って会場入りしている。)謝ったのは、彼女の代表作『サウンド・オブ・ミュージック』から名曲"My Favorite Things"をフィーチャリングしているためだ。 ブリトニーJ-Loジャネット・ジャクソンの名前が飛び出すゴシップ満載のジョークが矢継ぎ早に繰り出され、最後に「♪監督、いい映画だけど長すぎるよ。昨日ダウンロードするのに一晩かかった。」と海賊版ネタに続く版権ネタを披露。場内大爆笑。

『シービスケット』ではハナ差(by nose)負けにひっかけてまたしてもピート・ローズのネタ。クリスタルにとっては昨年の十大ニュースに入るくらいの事件だったのかも。ジョークの内容よりもクリスタルの熱唱ぶりに場内大歓声。

『マスター・アンド・コマンダー』ではラッセルをいじり倒すかと思いきや、意外と静か。これといった爆笑ギャグも飛び出さないまま、メドレーは締めに入る。

決して上手ではないんだけど、声量があってリズム感のいいクリスタルの歌が終わってしまうのが悲しい。両膝をついて歌い切ったという表情のクリスタル割れんばかりの拍手。やっぱり授賞式はこうでなくっちゃ。

クリスタルがオーケストラの指揮者、マーク・シェイマンを紹介する。彼はクリスタルの代表作『シティ・スリッカーズ』で見事なスコアを作曲した御仁だ。今回の大役抜擢はクリスタルの推薦か?

約20分に渡るオープニングを終え、いよいよ式は各賞の発表へと移行する。最初の発表はいきなり今回の目玉、助演男優賞だ。

プレゼンターのキャサリン・ゼタ・ジョーンズが真っ赤なドレスを着て登場。孔雀の羽をイメージした衣装のようだが、見方によっては魚のウロコのようにも見える。ただ、ジョーンズ本人は昨年妊娠中のパンパンに腫れ上がった体に比べるとかなりシェイプアップされており、美しい。授賞式前のレッド・カーペットでエスコート役のマイケル・ダグラスが急に老け込んだように見えたのは、彼女に生気を吸い取られたからか?

「候補者は発表を待つまでの数秒間、極度の緊張に襲われるものです。」 あなた方の気持ちはわかるわよ、とばかりに早速受賞者の名前を発表する。「オスカーの行方は・・・ティム・ロビンス 渡辺謙さん、残念。まあでも相手が一世一代の名演を見せたキャリア豊富な苦労人では落選もやむなし。謙さん自身も発表の瞬間は笑顔でウンウンと頷く。

名前を呼ばれたティムは緊張状態から解放され、爽やかな笑顔を浮かべながらスーザン、隣に座る息子と抱擁を交わす(さらにその隣にもう一人息子らしき子供が座っていたのだが、抱擁せず。無関係?)。続いてショーンイーストウッドと抱擁した後、壇上へ。

スピーチでは、まず他候補者4人を称える。「いつかあなた方4人と共演したい」。偽らざる気持ちだろうが、もし実現すれば国際色豊かなすごい作品になりそうだ。続いてイーストウッドと共演者に感謝し、スーザンと子供たちに愛の言葉を送る。NYで上演中の舞台『Embedded』の共演者に今夜の不在を詫びる時でさえ、興奮状態のティムの顔はほころびっぱなしだ。

ところが、「もう1つだけ」と前置きして始まったスピーチで彼の顔が真剣になる。「映画で私が演じたのと同じ境遇にいる被害者のみなさん、助けを求めること、カウンセリングを受けることは恥ではありません。それが暴力の連鎖を止める大きな力となるのです。」と訴える。場内から拍手。政治的な発言は飛び出さず、映画のテーマに沿った平和へのメッセージで締めくくったティムのスピーチはとても好感が持てた。