改定農薬取締法施行に伴う関係政令の整備等に関する政令案意見募集
         18/10/04〜18/11/02


水質汚濁性農薬の指定ほか
受付番号 201811020000489418/489427
提出日時 2018年11月02日15時59分/16時22分
提出意見 文字数制限のため、2分割して投稿します。
本投稿では、水質汚濁性農薬に関する意見を述べる。

【意見1】2003年農取法の施行令で、水質汚濁性農薬に指定されているテロドリン(有機塩素系化合物)とロテノン(植物デリス根)、エンドリン、ベンゾエピン、PCPはいずれも、すでに登録は失効し、後の3成分は、化審法の第一種特定化学物質であり、販売禁止農薬でもある。農薬としての使用出来ないこれらが、完全に回収され、現在も残留している農耕地がなく、かつ、農薬以外の用途で使用されないことが確実ならば、改定農取法政令で、5成分の薬剤を除くことに同意する。
 
【意見2】シマジン(CAT)は、現在、単製剤7件が登録されており、2016年の成分出荷量は11.5トンである。
 CATについては、早急に、ADIを評価し、水質汚濁に係る農薬登録保留基準を設定、さらに、改定法にもとずく、「生活環境動植物」への影響を評価すべきである。
 水質汚濁性農薬指定は、同剤が登録削除されるまで、継続する。また、植栽に用いられないCAT含有非農薬除草剤があれば、農薬取締法を準用する。

  [理由]1、CATの水質汚濁防止法による排水基準は0.03mg/L、水道法監視項目目標値0.003mg/Lとなっているが、水質汚濁に係る農薬登録保留基準は設定されておらず、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準は170μg/Lである。
   2、上記登録保留基準の設定資料では、以下の記載がある。
   『各生物種の LC50、EC50は以下のとおりであった。
   魚類[1](コイ急性毒性)          96hLC50 > 41,700 μg/L
   魚類[2](ヒメダカ急性毒性)【文献データ】 96hLC50  > 4,630 μg/L
   甲殻類等[1](オオミジンコ急性遊泳阻害)  48hEC50  > 98,600 μg/L
   藻類[1](ムレミカヅキモ生長阻害)     72hErC50 = 250 μg/L
   藻類[2](イカダモ生長阻害)        72hErC50 = 172 μg/L
 
   魚類急性影響濃度(AECf)については、魚類[2]の LC50(>4,630μg/L)を採
用し、不確実係数 10 で除した>463μg/L とした。
   甲殻類等急性影響濃度(AECd)については、甲殻類等[1]の EC50(>98,600
μg/L)を採用し、不確実係数 10 で除した>9,860μg/L とした。
   藻類急性影響濃度(AECa)については、藻類[2]の ErC50(172μg/L)を採用
し、172μg/L とした。』
   3、土壌汚染対策法で指定されている特定有害物質であり、土壌溶出量基準と地下水基準は0.003mg/L 以下 となっている。
   4、登録後60年たつのに、食品安全委員会はいまだ、健康影響評価をしておらず、ADIが設定されていない。ちなみに、CATの水道法目標値0.003mg/Lから、体重50kgのヒトが一日に水2Lを飲むとして、ADIを逆算すると、0.0012mg/Kg体重/日となる。
   5、EUでは、CATの発がん性評価を『ヒトに対する発がん性が疑われる物質』に区分している。域内での農薬登録はなく、ADIも設定されていないことを鑑みると、改定法による再評価制度を適用して、登録をやめるべきで農薬である。

その2の【意見3】につづく

その2 受付番号  201811020000489418  からのつづき


【意見3】現在登録されている農薬について、水質汚濁に係る農薬登録保留基準、水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準、ADIなどの低い農薬を選び、水系に検出されている成分を水質汚濁性農薬として、新たに指定すべきである。
  [理由]1、ネオニコチノイド類やフィプロニルなどに対し、感受性の強い水生生物(ユスリカ、コガタシマトビケラなど)への影響が問題視され、すでに、登録保留基準の強化がはかられている。
   2、ネオニコチノイド類は、国内の多くの河川水に検出されており、ヒトの尿中にも検出されている。
   3、我々が登録削除を求めているフィプロニルは、EUでは2017年に登録失効した。そのADIは0.00019mg/kg体重/日。水産動植物の被害防止に係る農薬登録保留基準0.024μg/Lであり、ミツバチでの半数致死量0.006 μg/頭である。
   4、EUでは、ネオニコチノイド類が、水系や蜜源植物を汚染し、ミツバチや野鳥の繁殖に被害をあたえるため。本年末までに、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサムの開放系での使用を禁じようとしている。
 われわれは、アセタミプリド、スルホキサフロル、ジノテフラン、チアクロプリドを含め、ネオニコチノイド類の国内での使用規制を求めている。


【意見4】2003年法では、「広範な地域で相当量使用されている農薬で、その使用が水産動植物に著しい被害を発生させるおそれがあるもの」、「水質を汚濁して人畜に被害を及ぼすおそれがあるもの」を水質汚濁性農薬に指定するとされていた。条文にあった「水産動植物」は改定法で「生活環境動植物」となり、環境生物への影響範囲が拡大されることになった。早急に対象となる生物種やその試験方法を決めるべきである。
 「生活環境動植物」の選定においては、試験に供する水産動植物の種をふやし、かつ、個別種への毒性評価だけでなく、食物連鎖を配慮した生態系全体への影響評価を行うべきである。
  [理由]1、水生生物の種をふやすだけでなく、両生類、トンボやミツバチなど陸生生物、ミミズなどの土壌生物や微生物、鳥類その他への影響評価が必要である。
   2、農薬使用時期に減少した種が、食物連載でその種の上位にある他の生物の生育に影響をあたえる点にも留意すべきである。
 たとえば、水稲育苗箱用の殺虫剤の成分は水田水系に移行するが、そのひとつフィプロニルは、赤トンボのヤゴに直接作用し、死においやるのに対し、イミダクロプリドは、ヤゴが餌とする他の水生生物を殺し、食物連鎖を絶ちきってしまう。いずれも、トンボの個体数を減らすことになる。
 また、食物連鎖上位の野鳥については、魚類など水生生物が農薬で減少して餌が不足したり、農薬が残留した餌を摂取することで繁殖に影響を受けたりして、個体数が減少することになる。


【意見5】水質汚濁性農薬を指定した場合、都道府県知事が定める使用地域規制範囲については、新登録か既存登録農薬かに関係なく、「水生動植物」を「生活環境動植物」としたことを、出来るだけはやく、規制に反映させることを求める。
  [理由]現行事例として、愛知県の例をつぎに示す。
   水質汚濁性農薬等適正使用指導要領、
   http://www.pref.aichi.jp/nogyo-keiei/jizoku/H29qa.pdf#page=76
   CAT又はシマジンを含む除草剤については、県内全域で使用を自粛する
   CAT以外の水質汚濁性農薬は、下記の使用規制地域一覧で、市町村ごとに3段階の規制区分を実施している。
   http://www.pref.aichi.jp/nogyo-keiei/jizoku/H29qa.pdf#page=78
  
以上