クロルピクリン等の使用についての質問と要望(2020/08/17)  【回答】は、2020/09/07 消費・安全局農産安全管理課農薬対策室 ---------------------------------------------- *** 以下、質問・要望と【回答】  酷暑とコロナの中、農薬危害防止のためのご努力に感謝いたしております。今後ともよろしく。 ところで、貴省は、3月11日に発出した通知「元消安第5645号」で、クロルピクリンの 使用実態等に関する調査実施要領を示され、その結果を、7月15日に、「2消安第1758 号」で公表されました。  クロルピクリンに関するこのような調査は初めてではないでしょうか。貴省の決断に 敬意を表します。  また、この間、5月15日には、『令和2年度 農薬危害防止運動の実施について』の実施 要綱中でも、クロルピクリン対策への言及がありました。この件については、私たちが 緊急要望し、6月30日に、ご回答を受理しましたが、納得いくものではありませんでした  今回は、7月15日の貴省調査報告について、【1】の質問と要望を致します。  同調査には、いろいろ不明の点があり、また、先に、私たちが貴省に対して行った要 望に対する6月30日の貴省ご回答を含め、従来から私たちが主張してきたクロルピクリン 規制とかけ離れた方針が示されているため、ご回答のほどよろしくお願いします。  関連して、広島県尾道市からの当グループの質問に対する回答について、お伝えしま すので、市に対して、【2】のご指導をお願いいたします。  尾道市のケースは、クロルピクリンの被覆や、周辺への事前周知がいいかげんな他の 多くの地域の行政がやっていることではないでしょうか。地域の行政が動かなければ、 被害を何とか減らしたいと、あちこちにお願いしている被害者、とりわけ化学物質過敏 症患者はどこへ訴えればいいのでしょうか。  貴省発出の「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」(以下、遵守省令と いう)や通知「住宅地等における農薬使用について」(以下、住宅地通知という)の遵守強 化につなげるためにも、広島県や尾道市など地方自治体による現場指導は重要です。そ の際、個別使用者に対し、地方自治体が直接、立入検査や対面指導すること、農薬販売 者による遵守すべき情報の提供・伝達も徹底させてください。 --- クロルピクリン等の使用についての質問と要望(2020/08/17) --- 【1】「被覆を要する土壌くん蒸剤クロルピクリンの使用実態等に基づく適正な取り扱 いの徹底について」(消安第1758号)に関する質問と要望 <1−1>調査結果に関する質問  貴省は、前記調査の実施に際し、使用実態、指導実態について、詳細な記載様式をお 示しになりながら、『産地及び都道府県の特定につながる情報を除き、各都道府県担当 者に共有します』『産地及び都道府県の特定につながる情報は、不開示情報とし、調査 の個票を含め、公表しません。』とされています。  作物名やその生産地、農薬使用状況は 秘密事項ではありません。  クロルピクリンの都道府県別出荷量は、農薬要覧で公表されており、 貴省が発出している「農薬危害防止運動について」や「住宅地等に置ける農薬使用につ いて」には、指導事項として、『農薬の散布に当たっては、事前に周辺住民に対して、 農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類及び農薬使用者等の連絡先を十分な時間的 余裕をもって幅広く周知すること。』とあります。また、『病害虫に強い作物や品種の 栽培、病害虫の発生しにくい適切な土づくりや施肥の実施、人手による害虫の捕殺、防 虫網の設置、機械除草等の物理的防除の活用等により、農薬使用の回数及び量を削減す ること』との記載があり、クロルピクリン使用の低減・代替化が求められてもいます。  産地や作物が不明なままで、農薬削減や住民の健康被害防止につながるとは、とても 思えません。  なぜ、産地や作物名を不開示事項としたのか、まず、説明してから、以下の(1)〜(10)の  質問に答えてください。  (1) 回答は47都道府県全てからありましたか。回答県数と回答がなかった県名を教え て下さい。広島県は私たちの質問に、クロルピクリンに関して、今までもこれからも調 査はしないと回答してきました。このことは国に報告済みとのことです。これに対して 貴省はどのように対応しましたか。  【回答】 本調査に対し、全47都道府県から回答がありました。    個別の県の回答に関しては、お答えできません。  (2) クロルピクリンを使用している県毎に、どこで、どういう作物にどのくらい使用 されているか、作物別に、使用量、栽培及び防除面積を把握しておられますか。判明し ておれば、当該データを一覧でお示しください。  【回答】 作物別の使用量、面積等は把握していません。  (3) クロルピクリン使用によって周辺住民が大気や水系汚染で健康被害を受けたり、 農作物・家畜・鶏などが被害を受けた例は過去にも多くあります。これらについて質問 しなかったのは何故ですか。  貴省がすでに、危被害発生件数を把握しておられれば、2000年以後の事例発生件数を 県別・内容別にお示しください。  【回答】 本調査は、 クロルピクリン剤の使用実態や、現場での指導方法について総   点検することでしたので、使用に伴う被害の事例等は調査していません。   クロルピクリン剤をはじめ、農薬の使用に伴う事故・被害の発生状況については、   以下の当省ウェブサイトで公表しています。    https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_topics/h20higai_zyokyo.html  (4) まとめにある「産地」の定義は何ですか。基準は生産量ですか。面積ですか。ど ういう条件だと「産地」になるのか具体的に教えてください。  【回答】 「各地域の単位農協や部会の防除暦、主要な法人の栽培体系等、各都道府県   が把握し得る営農に関する情報に基づき、クロルピクリン剤の使用が見込まれる地   域」を「産地」としています。  (5) 「根菜類」「その他の野菜」などという言い方ではなく、「ナガイモ」「ニンジ ン」などのように作物名で公表すべきと思いますが、いかがお考えですか。  【回答】 クロルピクリン剤の使用実態や、現場での指導方法についての傾向を見るに   は、個別の作物名ではなく、作物の種類で分けた方が良いと考えます。  (6) 結果を「個人、法人、産地および都道府県の特定につながる情報を除き」公表す るとありましたが、何故、そういう情報を公開しないのですか。  現在、クロルピクリンの使用は禁止されていませんから、使用しても違法というわけ ではありません。最低、都道府県名くらいは公表すべきだと思いますが、いかがですか。  【回答】 各産地におけるクロルピクリン剤の使用実態や、現場での指導方法について   調査するには、都道府県名も含め、産地の匿名性を確保した方が、より正確な調査   結果が得られるものと考えました。  (7) 被覆をしない理由として回答のまとめでは、   ・鎮圧すれば被覆しなくてもいいと誤認。   ・被害防止対策等の理解不足。   ・大規模産地で被覆作業が間に合わない。   ・強風で難しい。   ・使用者が理解していない。   ・使用者の危険意識が希薄。   ・指導内容が届きにくい農業者がいる。新   ・規使用希望者は情報の入手が難しい。   ・コスト。   ・被覆資材や方法の変更が容易でない。   ・被覆が努力義務にとどまっているため指導がすすまない。   ・代替資材は高価で作業能率も悪い。   ・被覆資材の揮散防止効果に具体的な根拠がない   などがあげられています。各項目ごとの件数と該当する県名を教えてください。   また、「使用者の危険意識が希薄」という回答がありますが、クロルピクリンの毒性や被害例などの情報をきちんと使用者に伝えるべきと思いますが、どうお考えですか。  【回答】 個別の産地の回答に関することはお答えできません。   本調査結果を踏まえて、クロルピクリン剤の適正な取扱いについて改めて指導しました。  (8) クロルピクリン使用の最低条件の被覆すら守らせることができないのであれば、 使用禁止など規制を強化すべきと思いますが、どうお考えですか。  【回答】 本調査結果において、ほとんどの産地でクロルピクリン剤の使用時の被覆は   完全に実施されていると回答があり、各都道府県において、被覆の徹底や住宅地等   周辺での被害防止対策について、地域において様々な取組が行われていることが報   告されました。   本調査結果を踏まえて、クロルピクリン剤の適正な取扱いについて改めて指導しました。  (9) 住宅、畜舎等の隣接ほ場で処理を実施する場合については、使用禁止ではなく、 下記の要件を満たせば、実施可能となっています。  それぞれの項目の具体的な内容、及び、項目ごとの実施件数を、県ごとに教えてくだ さい。また、万一、実施を怠ったことが危被害の原因となった件数を県ごとに教えてく ださい。  a) 周辺住民への説明や事前周知(周知手段ごとに、県別数値をあげる)、 b)被覆の徹底、厚さ 0.03 mm 以上又は難透過性の被覆資材の使用    (厚さ0.03mm以上と以下に、また難透過と非難透過性にわけて)、 c) 近隣に揮散しないよう丁寧な被覆(被覆方法を実施形態別にわけて)、 d) マルチ同時施用機の使用(同機の使用の有無にわけて) e) 適度な土壌水分(水分の含有率ごとにわけて)  f) 地温に応じた被覆期間の確保(地温ごとの被覆期間にわけて)、 g) 住宅地等が風下となる時間帯を回避(風下に向けた使用の有無にわけて)、  h) ガス抜き確認の徹底(ガス抜きまでの期間や確認の方法にわけて)  i) 廃容器や残液の不適切な投棄による危被害についての件数もおねがいします。  【回答】 本調査ではこれらの項目の実施状況やクロルピクリン剤の使用に伴う被害の   事例について調査していません。 (10) 現時点での外国で規制状況を、規制条件、規制理由とともに、教えてください。  【回答】 クロルピクリン剤について、欧州では登録がないこと、米国では緩衝地帯の   設定等の規制が設けられていることを承知しています。   規制の理由については、それぞれの規制当局にお尋ねください。 <1−2> クロルピクリンの使用規制についての要望  【回答】 本調査結果において、ほとんどの産地でクロルピクリン剤の使用時の被覆は   完全に実施されていると回答があり、各都道府県において、被覆の徹底や住宅地等   周辺での被害防止対策について、地域において様々な取組が行われていることが報   告されました。   本調査結果を踏まえて、クロルピクリン剤の適正な取扱いについて改めて指導しました。  ただし、以下の個別項目については回答はありませんでした。  (2-1)クロルピクリンは禁止してください。   既に多くの国で使用が禁止されています。貴省も代替方法を勧めています。被覆の必要性ばかりを力説してもあまり意味はありません。クロルピクリンの毒性や被害者の声を使用者や行政にきっちり明確に知らせるべきです。クロルピクリンは、農薬事故の原因農薬として、貴省が唯一毎年名前をあげられている農薬です。 これだけの毒性を持ち、被覆したからと言って決して安全ではなく、作業者自身、周辺住民、その他第三者などに、被害を与えているクロルピクリンは禁止すべきです。  (2-2)直ちに禁止出来ない場合は、禁止するまでの間、以下の対策を実施することを求めます。   1)住宅地周辺でのクロルピクリンの使用禁止、代替法の義務付   2)クロルピクリン使用ほ場周辺住民の健康調査   3)10a以上のほ場でクロルピクリン処理を実施している地区での環境調査   4)現在努力規定である被覆を義務規定にする   5)クロルピクリンなど劇物農薬は、使用者に免許制度を導入   6) 使用者に、使用計画を出させ、周辺への通知を義務づけ   7)残液や廃容器の回収実態調査を行い,農協、商系ごとにリサイクル率は何%か明らかにして公表。さらに、処理システムを構築   8)貴省は、本年の「農薬危害防止運動について」で、『国は、各都道府県等での取組の効果を検証し、優良な取組事例等を 全国レベルで共有することにより、農薬の適正使用に係る指導を充実させるとともに、次年度以降の運動の実効性をなお一層高めるよう努めるものとする。』と記載されています。   農薬やクロルピクリンなどを使用しない優良事例の調査を国が様式・期限を決めて早急に行うこと   9)貴省の施策はクロルピクリンの適正使用の指導に偏っています。前記調査で判明した優良事例を全国的に共有化し、クロルピクリン使用削減と代替栽培法を拡大するとりくみ施策を作成し、その普及に重点をうつすこと 【2】広島県尾道市への指導についての要望  反農薬東京グループは、昨年からクロルピクリンを始め、様々な農薬散布により被害 を受けている方から相談を受け、広島県と尾道市に質問と要望を繰り返してきました。  尾道市の相談者は化学物質過敏症でもあり、微量の農薬など化学物質にさらされると、 呼吸困難など非常に強いダメージを受けます。当該被害者は診断書も提出し、尾道市も このことは。十分承知しているはずですが、行政としての指導を放棄しているように思えます。  農薬使用やクロルピクリンに関する尾道市への要望と回答については、記事n03104をお読み  いただければ、わかると思いますが、わたしたちは、結局のところ、市の回答 は「なにもしない」  という意志表示だと受け取りました。  尾道市は、クロルピクリンやその他の農薬による市民の健康被害を防止する立場で あるにもかかわらず、農薬使用実態を調べもせず、市内の使用者に事前周知の実施を強 く求めることもなく、国や県との連携を図りながら、法令順守の徹底を図ると言うだけ で、具体性がありません。  尾道市に対しては、国からも是非、同市内の農薬使用者、とくに劇物指定のあるクロ ルピクリン使用者に対し、遵守省令の第一条(農薬使用者の責務)の二項『 人畜に被害 が生じないようにすること。』に基づき、下記の指導をするよう、求めてください。  (1) 市内のクロルピクリン使用者は、何名おり、どのような製剤を、どのような作物に、いつ、どの程度、使用しているかを、調べて、公表させること。   (2) 住民の健康被害が発生しないよう、期日を決めて、クロルピクリンの代替化を求めること。  (3) クロルピクリン使用をやめるまでは、市が、使用者に使用計画を前以て届けることを義務づけ、住民が健康被害をうけることのないよう、事前周知を行うこと。  (4) 市は、被覆の徹底、処理中からガス抜き後にいたるまでの大気汚染防止と健康被害防止対策(退避場所の設定も含む)を、使用者の責任で実施させること、  (5) 市は、使用者が指導事項を遵守しているかどうかのフォローのため、農薬使用者が記載した使用履歴の帳簿のチェック、使用者の圃場の立ち入り調査(処理状況、被覆状況だけでなく、風速・風向への対応措置、廃容器・残液の処理、大気や水系の環境調査をも含む)を行うこと。  (6)上記、事項を、使用者が認めない場合、市は、クロピリンの使用をやめるよう求めること。  (7) 万一、クロルピクリン使用地域で、住民や通行者が、刺激臭を感じるケースや住民の健康被害が発生した場合、使用者に市への通報義務を負わせ、市は、使用者にクロルピクリンの使用を禁止させること。  以上について、農水省は。直接、尾道市に出張指導を行い、内容実施を徹底させてください。  なお、貴省からすでに、尾道市へ指導のアクションをとられていましたら、その内容と経緯を教えてください。  【回答】「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」(平成15年農林水産省・   環境省令第5号)第6条において、「農薬使用者は、住宅、学校、保育所、病院、   公園その他の人が居住し、滞在し、又は頻繁に訪れる施設の敷地及びこれらに近接   する土地において農薬を使用するときは、農薬が飛散することを防止するために必   要な措置を講じるよう努めなければならない。」と規定するとともに、「住宅地等   における農薬使用について」(平成25年4月26日付け25消安第175号・環水大土発第   1304261号農林水産省消費・安全局長、環境省水・大気環境局長通知)において、   住宅地等で農薬を使用する者が遵守すべき事項を示し、都道府県に協力を要請する   とともに、市区町村に対する周知・指導をお願いしています。  なお、(1)から(7)の個別項目については、農水省の回答はありませんでした。