************************************************** 住宅地等における農薬使用についての要望と質問その3 ***************************************************        2019年9月18日 広島県知事  湯崎 英彦  様 農林水産局農業技術課 御中  6月9日と7月14日に、湯崎知事と農林水産局農業技術課宛に「住宅地等における農薬使 用についての要望」を提出した反農薬東京グループです。一回目の回答は6月27日、二回 目の回答は8月9日に受け取りました。どうもありがとうございました。  しかしながら、回答は依然として曖昧で、本当に住宅地通知を理解しているのか、こ の通知を県民に広く知らせようとしているのか私たちにはわかりませんでした。この件 について、今後も質問と要望を続けたいと思います。  今回は、緊急を要するクロルピクリン規制に関する要望と化学物質過敏症患者への支 援、また、これ以上患者を増やさないための方策などについて質問と要望をいたします。 県民の健康と命に関わる重要問題であり、平和都市広島の名誉に関わる問題でもあるの で、早急にしっかり検討していただきたいと思います。回答は10月10日までに下記へお 願いいたします。     =================================================       ★★★反農薬東京グループ★★★ URL http://home.e06.itscom.net/chemiweb/ladybugs/      ================================================== *** お尋ねと要望 *** 【1】クロルピクリンの規制及び住宅地通知等について  既に、何度も指摘していますが、土壌くん蒸剤クロルピクリンは、化学兵器禁止条約 で表3A剤であり、日本の化学兵器禁止法では、トリクロロニトロメタンとして第二種 指定物質の毒性物質です。  平和都市を標榜する広島で、化学兵器の成分と同じものを一般人が農薬として使用し ていることについて、広島を訪れる諸外国の人はどのように思うでしょうか。  要望に対する二回目の回答では、農薬危害防止運動についての講習会案内を、関係す る25団体に、3万枚送付され、参加者は約500名となっています。しかし、同運動のポス ターにある、住宅地周辺への周知や、くん蒸剤の周囲への拡散防止は、依然として守ら れていません。      さらに、わたしたちが一番驚いたのは、クロルピクリンに関して、広島県はどこで、 何に、どのくらい使われているか一切知らないと回答されていることです。  この件の回答は以下の通りです。  <県の回答>   「2017年における,クロルピクリンの使用状況(どのような作物に,いつ, どこで)について 大変申し訳ありませんが,広島県では,把握していません。」  どのように指導しているのかという質問に対しては   「クロルピクリンの使用方法やガス抜きに関する指導状況について農薬使用者 に対し,農薬販売業者等を通じて,クロルピクリンの農薬使用基準の遵守の徹底を指導 しています。」でした。  使用実態を知らないで、漫然と使用基準を守れと言っても、違反したことすら把握で きないではありませんか。  このような実態を改善するために、私たちは以下の提案と質問、要望をします。 <質問1> 広島県内における農薬販売業について、お尋ねします。 県内の農薬販売店舗は、いくつありますか。そのうち、毒劇法による農業用毒劇物の販 売者はいくつですか。   後者については、届出のある販売店舗の所在地を教えてください。  ]<回答> 広島県内の農薬販売届出店舗は,1,742店舗です。毒劇物に関する検査・ 指導につきましては,担当部局が異なりますが,毒劇物のうち農業用毒劇物の販売者は, 新規農薬販売届出申請時点で農薬取締法権限移譲市町(12市5町)を除き16件です。  なお,販売店舗の所在地は公表しておりません。 <要望1>  クロルピクリンで、使用者の個別指導ができる体制を作ること。そのためには、県内 のどこで、何に、どれくらい使っているか調べることが重要不可欠です。 (1)県内のクロルピクリンの使用状況を調べて教えてください。  地域ごとに、何の用途で、どの程度(使用面積、使用量。使用者数など)使用されて いるか教えてください。  クロルピクリンは劇物に指定されていますから、農業上必要な毒物又は劇物のみを取 り扱う販売業者の登録が必要で、都道府県は販売業者を指導する立場にあります。立入 検査もできます。適正な使用をしない購入者へ販売させないよう指導することもできます。  現在、毒劇物の 製造者、販売者は、毒劇法の第四条(営業の登録),第十条(届出)に より登録・届出が必要です。 (2)クロルピクリンの使用者にも、県への届出を求めてください。  県の条例・要綱・要領などの正式文書を制定し、届けを提出させ、住宅地ちかくでの 使用規制など厳格に管理することも、指導することもできるはずです。  クロルピクリンの事故が多いことは、農水省も認めています(農薬事故報告で唯一成 分名を公表している)。しかし、現行の農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省 令(以下、遵守省令という)では、第六条(住宅地等における農薬の使用)及び第八条 (被覆を要する農薬の使用)は努力規定にすぎません。クロルピクリンによる農薬被害 者を出さないために、(1)(2)を早急に検討してください。 (3)県は、国に、劇物農薬使用者の届出、遵守省令、住宅地通知の内容を義務づけるよ う、求めてください。 <要望2>上記要項等ができるまでの間、幼稚園、小学校などや住宅地の近くではクロル ピクリンの使用をやめるよう強く指導してください。クロルピクリンは非常に毒性が強 く、吸入すると様々な症状がでます。使用中はもちろん、被覆後も大気への揮散はつづ き、被覆をはがす時には再度揮散し、また、井戸水などの水系汚染でも人の被害がおこ ります。最近では、低濃度で長年吸入しているとぜんそくなどの慢性毒性もあることが わかってきました。使用している農家の人も既に被害を受けている可能性もあります。  住宅地通知では、「(7)農薬の散布に当たっては、事前に周辺住民に対して、農薬使 用の目的、散布日時、使用農薬の種類及び農薬使用者等の連絡先を十分な時間的余裕を もって幅広く周知すること。その際、過去の相談等により、近辺に化学物質に敏感な人 が居住していることを把握している場合には、十分配慮すること。また、農薬散布区域 の近隣に学校、通学路等がある場合には、万が一にも子どもが農薬を浴びることのない よう散布の時間帯に最大限配慮するとともに、当該学校や子どもの保護者等への周知を 図ること」とはっきり書かれています。   <要望3>  クロルピクリン販売者には、購入・譲渡者に、レジなどで、使用上の注意事項、被覆 の必要性、周辺への周知を行い、上記指導を聞かない不適格者には販売しないよう、厳 格に指導してください。   <農薬危害防止運動についての実施要綱>には下記の記載があります。 『4 農薬の適正販売についての指導等  (1)農薬販売者に対する指導  (2)農薬販売者への立入検査等による指導  農薬販売者を対象として、関係法令に基づく立入検査等を実施し、無登録農薬の販売 の取締り及び適正な農薬の販売に関する指導を行ってください。特に毒劇物たる農薬の 販売業者に対しては、別記3「毒劇物たる農薬の適正販売強化対策」を周知徹底してく ださい。』 <要望4>下記の関連事項の実施を求めます。 (1)遵守省令、住宅地通知について、広報誌やHPで知らせるだけでなく、自治体が 管理する施設に文書をおいたり、自治会の回覧で、だれでも入手できるようにしてくだ さい。 (2)貴県や県内自治体が管理する学校、その他の公共施設、水田や圃場周辺の通学路、 散布個所に近い住宅地等には、農薬使用計画を表示するための立て看板を設置し、農薬 使用者に掲示するよう指導してください。 (3)農薬危害防止運動についてのポスターを農業関係の施設だけでなく、学校、公共 施設、農薬販売所、鉄道駅、自治体掲示板などに、掲示してください。 (4)除草剤も、遵守省令や住宅地通知の対象になることを、県民に周知させてください。 (5)登録農薬と同じ成分で登録のない、市販の除草剤については、住宅地通知や遵守 省令は適用されず、わたしたちは、農薬除草剤と同等な取り扱いを求めていますが、農 水省は、問い合わせがあれば、助言するという姿勢です。貴県はどのようにお考えです か。  現状のままでいい/農水省と同じく助言する/農薬除草剤と同等の指導をする/  /国に、当該除草剤を農薬と同等に取り扱うよう申し入れる  /県の要領等を制定して、強く指導する。のいずれでしょうか。 (6)県及び自治体が、所管する施設での植栽管理、道路管理において、業者と結ぶ契 約の仕様書には、「農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令」及び通知「住宅 地等における農薬使用について」の遵守を必ず明記してください。また、委託された業 者の実施状況の実地点検もしっかり、行ってください。 【2】化学物質過敏症患者への支援と化学物質過敏症患者を増やさない対策について  この件について県は二回目の回答で「化学物質過敏症の学習及び情報の周知徹底と, 広島県尾道市の化学物質過敏症患者様への対応について、尾道市の化学物質過敏症患者 様に対しては,国や市と情報共有するとともに,患者様の要望に応えられる部分から対 応しています。」というものでした。 <質問1>  まず、「患者様の要望に応えられる部分から対応しています」とのことですが、どの ような対応をしてくださったのか、教えてください。  <回答>尾道市の化学物質過敏症患者様への対応につきましては,尾道市の農薬取締 法担当課に対し,耕作者への講習会開催,講習会を活用しての農薬使用事前周知の徹底, 市・JAの広報誌を活用しての注意喚起を働きかけております。また,事前周知方法に つきましても,立て看板の設置や回覧板などを提案しております。  使用者が特定できているクロルピクリンの使用者に対しては,事前周知の実施を尾道 市に求めており,2戸の使用予定につきましては,市が使用時期を聞取り化学物質過敏 症患者様へご連絡しております。また,農薬安全使用についてのパンフレットを配布す るとともに,9月にJA営農指導員に対する農薬の適正使用と住宅地通知の徹底を図り, 今後,当該地域での耕作者や地権者に対する,国担当者を招いての講習会を予定してお ります。 <要望1>  この回答によると化学物質過敏症患者は一人しかいないかのように受け取られます。 しかし、尾道市には少なくとも2人の患者がいます。また、病気のことを知られて村八 分にされたり差別されることを恐れて病気を公表できなかったり、家族から公表を止め られている患者も県内にはいるのではないでしょうか。NPO化学物質過敏症支援センター によれば全国の患者数は70〜100万人とも推定されています。  他県の例を見ても、化学物質過敏症と自覚しないで苦しんでいる人も多くいます。化 学物質過敏症に関して、啓発をしてください。  まず、自治体職員を対象に化学物質過敏症の研修会を開いてください。というのは 前回もお知らせしましたが、患者に農薬のパッチテストを勧める非常識な職員がいまし た。幸い、勧められた患者は断りましたが、下手をすると傷害罪で訴えられる可能性も あった事件です。このようなことが起こらないよう、特に自治体職員への啓発が必要で す。化学物質過敏症に詳しい医師を招いて、早急に開催してください。 <要望2>  化学物質過敏症患者は、さまざまな化学物質に反応しますが、農薬は多くの患者が酷 い反応を示す物質です。そのため、農薬散布前に必ず通知をしてほしいと訴えています。  事前にいつ散布されるかわかっていると、万全とは言えなくてもそれなりに準備がで きます。ところが、事前通知はほとんどありません。必ず、事前に通知するよう、あら ゆる手段を使って通知するよう指導してください。これはひとり化学物質過敏症患者ば かりでなく、幼児や病人などにも役に立ちます。  農家の自主性に任せていたのでは、事前通知が行われない事は尾道市が平成29年に 講習会を開催したり広報に載せても、その後農家が事前通知を自主的に行った事が皆無 であることを考えれば全く効果がないことは火を見るより明らかです。通知の方法とし ては自治体が仲介する必要があります。  農薬の無通知散布により健康被害が出ていると訴えている患者の自宅周辺だけでも市 が情報を集めて患者に知らせるべきではないでしょうか。具体的には、各農家が尾道市 農林水産課に散布日程を1週間前までに伝え、市が患者にその情報を伝えるという方法 が考えられます。もしくは、尾道市が週に1回各農家に電話して散布日程をきき、1週 間分の情報を患者に伝えるという方法です。    湯崎知事は、これまでの私たちの要望をご存じでしょうか。  私たちは、最初から昨年改定された農薬取締法の国会採決時の付帯決議に「農薬使用 の際に、農薬使用者及び農薬散布地の近隣住民に被害が出ないようにするため、農林水 産大臣及び都道府県知事は農薬使用者(参議院は防除業者追加)に対して十分な指導及 び助言を行うこと。」とあるのに基づいて、知事に質問しています。必ず、知事にお伝 えしてください。もし、担当部署がきちんとお伝えしているのであれば、ひとこと、知 事のお考えをお聞かせください。  以上よろしくお願いいたします。  <全要望についての回答> 貴重なご要望をいただき,ありがとうございます。今回 いただきましたご要望は,必要に応じて今後の農薬取締法に係る指導業務の参考にさせ ていただきます。