東広島市内での公共の場での農薬使用中止についての要望                   2020年6月15日 東広島市長 高垣広徳 様 生活環境部 環境対策課 御中  新型コロナウイルスの感染対策など、様々な課題解決のためのご努力ありがとうございます。  私たちは、農薬をはじめとする化学物質による環境汚染・健康被害を出来るだけ減らそうと運動している市民団体「反農薬東京グループ」です(下記ホームページ参照)。  ご存じのことと思いますが、今年も6月1日から8月31日まで農水省、環境省、厚労省の主催で「農薬危害防止運動」が全国的に展開されています。三省の局長による連名通知「令和2年度農薬危害防止運動の実施について」の実施要綱には、今年度の重点指導項目として、 (1)土壌くん蒸剤を使用した後の適切な管理の徹底、(2)住宅地等で農薬を使用する際の周辺への配慮及び飛散防止対策の徹底等があげられています。  (1)は主にクロルピクリンを指しています。(2)は「住宅地等における農薬使用について」という農水省、環境省の局長通知の遵守を求めています。  東広島市市民より、農薬使用に関して、下記の要望と提案、農薬毒性解説を受け取りました。これに対するご回答をお願いします。  また、当グループからも、東広島市での公共の場での農薬散布について、下記の質問と要望をしますので、6月26日までに、ご回答くださるようお願いいたします。  (1)貴市が管理する公共施設(保育園や幼稚園、学校、病院、公園、運動施設、道路、街 路樹・植栽など)での農薬使用状況を教えてください。    2019年度実績一覧(使用場所・施設名、使用時期、使用目的、使用農薬と使用量)でお願いします。  (2)貴市では、公共施設で農薬を使用する場合、だれが(施設の管理者、市の担当部署を明示してください)、どのような方法で、農薬散布計画の事前通知をして、市民に散布周知をしていますか。  (3)市民の健康被害・環境破壊防止のために、街路・公園など公共の場所で農薬の散布、使用は止めて下さい。 *** 東広島市市民よりの具体的な要望と提案 ***  これまで農薬散布のチラシを見つける度に東広島市へ散布しないよう、抗議の電話をかけていました。東広島市建設部維持課は「この時期に街路樹・植栽などで、一匹でも害虫を見つければ、すべての街路樹・植栽に殺虫剤(有機リン系殺虫剤)を自動噴霧器で一斉散布するのが最も効果的で、安上がりな害虫対策だ」と主張し続けてきました。  この主張は明らかに環境省「公園マニュアル(平成30年3月改訂)」・農水省・環境省の「住宅地等における農薬使用について(平成25年4月26日)」の通知(以後、「住宅地通知」と表記する)に違反する行為です。市民の健康と生活環境の保護のために是非、農薬の散布は止めてください。  「公園マニュアル」・「住宅地通知」では、初めに「農薬を使用しない管理」次に「農薬以外の物理的防除の優先」そして、止むを得ず「農薬を散布せざるを得ない場合は、飛散しない農薬」を使用する、です。それでも万が一飛散する液状の「農薬を自動噴霧器等で散布せざるを得ないときは」 1、公園など、散布地近辺に遊具などがある場合は、遊具の移動、遊具の移動ができない場合はシートを被せる。(私は東広島市高美が丘で、これらが実施されているのを見たことがない。) 2、散布する際は樹木・植栽全体への散布は可能な限り避け、病害虫の発生部位等へのスポット散布に留める。(東広島市が実施している、街路樹・植栽全体、つまり、散布受託業者の受け持ち区域、長い場所で数キロ、短い場所で数百メートル全域の街路樹・植栽、公園等に全面的一斉散布するのは「公園マニュアル」・「住宅地通知」が想定していない、論外の行為です。) 3、散布区域に人が立ち入らないように対策を講じる。公園等では立看板・コーン・ロープ等で散布区域を区分けして、散布区域に人が気づかずに立ち入ることがないように配慮する。(散布受託業者の受け持ち区域の数キロから数百メートルを、また、公園を全面的立ち入り禁止措置するのは不可能です)   しかも、やむを得ず飛散する液状の「農薬を散布する」のは害虫の発生したかぎられた一部分のことで、2、でも述べたように全面的散布は論外と言わざるを得ません。「公園マニュアル」・「住宅地通知」が農薬の散布に言及しているのはその対象を「住宅地に近接する農地」をも含めているからです。  上記の1、2、3からも「学校 保育所 公園 病院 街路樹このような所で」大量に飛散する農薬の一斉散布はできないはずです。  高美が丘3丁目・6丁目調整池に面した桜並木(距離20〜30m)は付近の住民からの防除要請(散布受託業者の話)は、発生害虫が人畜無害なモンクロシャチホコ(東広島市では9月初旬頃から発生)であり、人への健康被害は全くない事をよく説明して理解を求める。  または、モンクロシャチホコが増殖して、その食害が拡大する時期はほぼ一定しているので「飛散しない農薬(カプセル入り)」を選択し8月頃、桜の樹幹に薬剤を注入する。  飛散する農薬散布は全く必要ありません。私の観察ではモンクロシャチホコは枯れ散る寸前の桜の葉を食害するだけで、来春の開花には全く影響はありません。  街路等の雑草対策も殺虫剤散布と同様で、「農薬以外の物理的防除の優先」をして実施する。事実、街路等の植込み区画(ブロックで囲われている部分)は人手による除草が実施されている。主に街路の両端部分に除草剤(枯葉剤)を自動噴霧器で散布している。この部分は人手・機械除草が最も行いやすい場所です。 【提言】  「学校 保育所 公園 病院 街路樹このような所で、」農薬の一斉散布はしなくても樹木・植栽管理はできます。  以前、私は東広島市へ抗議電話のなかで、「殺虫剤散布をしてから剪定をするのではなく、先に街路や公園の樹木・植栽の剪定を5月下旬か6月上旬に行えば殺虫剤散布はまったく必要ないのではないですか」と提案しました。  害虫の発生している(または、発生するかもしれない)葉を先に刈り取るのです。  丁度この時期は剪定の時期でもあるのです。チャドクガ・イラガその他の害虫発生を予防出来るのも、剪定の方法にかかっています。チャドクガ・イラガ発生の予防を優先するのであれば、3月下旬から4月上旬頃にツツジ系以外の樹木・植栽の剪定をおこない、6月上旬から開花の終ったツツジ系の剪定をする。  環境省はチャドクガが発生する木の種類は決まっているので、発生しにくい木に植え替えるよう求めています。  また、東広島市の農薬散布受託業者の話では、「月に一度、樹木点検をおこなっている」とのことです。これを、害虫の発生がほとんどない冬期はやめて、4月から9・10月迄を月に2度、樹木点検をおこなう。そうすれば、害虫や雑草発生の早期発見・早期対応・農薬を使用しない物理的防除にも役立ちます。  また、農薬散布受託業者が正確に虫を判別できるか疑問です。テントウムシの幼虫を害虫と思い、強力な農薬を散布した事例もあります。  また冬季(12月~3月)に街路の植込み区画を人手除草しているのを見かけるが、これを雑草の繁茂する8月・9月前後に振り替える、これらは東広島市への提案です。  市民の健康被害・環境破壊防止のために、街路・公園など公共の場所で農薬の散布、使用は止めて下さい。  東広島市で散布された農薬(殺虫剤・除草剤)の有害性・危険性と広島市南区・中区の現状を簡単に記したものを添付します。お忙しいとは思いますが何卒ご高覧ください。 *** 使用農薬の毒性についての解説 *** 【殺虫剤】  高美が丘で散布された殺虫剤は「有機リン系」と「合成ピレスロイド系」です ◎有機リン系殺虫剤(神経系阻害剤)。商品名として、スミチオン・オルトラン・マラソン等があります。この有機リン系殺虫剤は植物・微生物を除く、神経があるすべての生物に有害です。昆虫の神経と人の神経は基本構造が同じであり、人にとっても非常に毒性が強い神経毒農薬です。EU(欧州連合)では2009年から使用・販売を禁止しました。  <スミチオン乳剤の危険有害性情報>   ・強い眼刺激、・発がんのおそれの疑い   ・生殖機能又は胎児への悪影響のおそれ   ・神経系、呼吸器系、肝臓、中枢神経、腎臓の障害   ・長期にわたる、又は反復ばく露による神経系、呼吸器系の障害   ・水生生物に非常に強い毒性    (住友化学・住化スミチオン乳剤・安全データシートより抜粋)    ※安全データシートは法律で義務付けられている文書です。     農薬メーカー作成の安全データシートを見ただけでも、害虫以外に人に対して強い毒性があるのが分かります。  ◎合成ピレスロイド系殺虫剤(神経系阻害剤)。商品名としてベクトロン・トレボン・サニーフィールド等がある。この農薬も有機リン系と同じ「神経まひ」を起こす。しかし、有機リン系とは異なる作用で「神経まひ」を起こす。 【殺虫剤が私たちの健康におよぼす危害】  <大気への農薬の残留>   これらの殺虫剤が街路・街路樹・公園などに散布されると、3日から一週間程度は大気中の殺虫剤残留値が散布直後の濃度と同じか、それ以上の濃度が検出されます。雨が降っても、風が吹いても農薬の残留値はほとんど低下しません。これは「気化しやすい農薬、土ぼこりに吸着した農薬、雨や霧に溶け込んだ農薬などが、大気中に長い間残留しているからである。」(「農薬毒性の事典」第2版 三省堂より抜粋)  <児童の発達障害(自閉症・注意欠陥・多動性障害など)との関連>   文部科学省が2016年(平成28年)5月1日付、公立小・中学校の通常の学級に在籍している全児童数の6.5%程度(16人に一人、全体で63万人)が発達障害児童であると公表しました。   公表された調査資料から通常の学級に在籍して、発達障害対応教育を受けている児童数は平成18年には9,792人、10年後の平成28年には59,129人で、10年間に6倍も急増しています。特別支援学級在籍者の発達障害児童数も3倍に増加しています。年々、なぜ急増しているのでしょうか?  ・「2012年11月、米国小児科学会は政策声明を公表し、米国の政府や社会に『脳の発達障害や脳腫瘍など、農薬による子どもの健康被害』を警告した。」(「発達障害の原因と発症メカニズム」黒田洋一郎 他著・河出書房新社より抜粋)  ・「2015年に国際産婦人科連合が『農薬、大気汚染、環境ホルモンなど有害な環境化学物質の曝露が流産、死産、胎児の発達異常、がんや自閉症などの発達障害を増加させている』と公式見解をだしています。」(「地球を脅かす化学物質―発達障害やアレルギー急増の原因」木村−黒田純子著・海鳴社より抜粋)  <最も脆弱な胎児・乳幼児について>」   「妊婦が農薬に曝露すると、これらの農薬は子宮内の胎児に直接到達することがある。   発達期の胎児は農薬の有害な影響に対して特に脆弱である。   子宮内で高濃度の農薬に曝露した子どもでは認知発達の遅れ、行動への影響、先天異常などの健康への影響が報告されている。また、農薬の曝露と小児白血病の発生率の間には強い相関関係がある。   農薬の曝露の増加が複数のがん(前立腺がん、肺がん、その他)やパーキンソン病、アルツハイマー病などの神経変性疾患の発生率上昇を示す複数の研究結果もある。   農薬が体内の正常な内分泌系および免疫系の機能を妨げることを示唆する証拠も得られている。」(グリーンピース ジャパン 2015年「農薬と健康 高まる懸念 要旨」より抜粋)  <「平成16年度厚生労働科学研究補助金 健康科学総合研究事業」>   平成16年(2004年)度、厚生労働省から1,800万円の研究補助金を受けた研究報告書の冒頭には「体内の種々の酵素の働きが、有機リンにより阻害され、酵素本来の役割が果たせなくなるため、精神・神経の極めて重要なバランスを司る生理学的活性物質が代謝されずに体内に蓄積もしくは欠乏し、様々な精神・神経の異常や障害を引き起こして来ることは、もはや疑えない事実である。   これらの最新の研究成果をもとに、国民、とくに脳機能の発達段階にある幼児、子供、思春期男女の将来を考えると化学物質、とくに有機リン及びカルバメート系農薬、殺虫剤などは、使用をやめる方向での検討が緊急に必要である。」(「微量化学物質によるシックハウス症候群の病態解明、診断、治療対策に関する研究」より抜粋)とあります。  政府の研究補助金を受けた研究ですら、「有機リン系」「カルバメート系(神経系阻害剤)」農薬の使用を禁止すべきだと述べています。EU(欧州連合)が使用・販売を禁止した2009年に先立つ、2005年に日本政府・社会に向けて、その研究成果を公表しています。  【予防原則】  EU(欧州連合)では2009年から有機リン系殺虫剤の使用・販売を禁止しました。これは「回復不能な被害」を引き起こす危険性がある場合に科学的因果関係が十分に証明されていなくても、その農薬を規制するということです(予防原則)。  ドイツ、フランスでは農薬散布従事者などにパーキンソン病が職業病として認められている。  【除草剤(高美が丘で散布されたものについて)】  <1、グリホサート>   現在の除草剤の主なものは商品名、ラウンドアップ、サンフーロンなど、グリホサート剤を主成分としています。この除草剤は、どのような植物でも枯らしてしまう非選択性除草剤です。  ◎発がん性・発がん物質の指摘  ・2007年1月、フランスの最高裁判所はラウンドアップの散布後「生分解して、きれいな土壌を残す」というモンサント社の広告を虚偽広告と判決しました。  ・2015年3月、グリホサート剤を世界保健機関(WHO)の下部組織の国際がん研究機関(IARC)が5段階ある分類のうち、上から2番目の危険度である「人に対して毒性や発がん性の恐れがある(グループA2)」と公表しました。  ・2017年6月、同じく米国カリフォルニア州環境保健有害性評価局(OEHHA)が発がん性物質として公表しました。グリホサート剤の開発メーカーであるモンサント社は「発がん性はない」と訴訟を起こしたが、カリフォルニア州最高裁判所で敗訴しました。  <2、MCPP >   フェノキシ系の除草剤。芝生によく用いられる。  ・「マウスのオスにMCPPを投与すると、睾丸DNA合成阻害がみられる。妊娠マウスにMCPPを投与すると、体重1s当たり300mg以上の投与で胎仔毒性が、体重1s当たり400mg以上の投与でマウスの仔に骨格奇形がみられる。  ドイツの研究ではラットの実験で、MCPPの免疫系への影響がみられた。」(「農薬毒性の事典」三省堂 第2版より抜粋)  <3、アシュラム>   スルファニルアミド系/カーバメート系の除草剤。高美が丘では芝生に散布されたものと思われる。商品名として、アージランがある。  ・「マウスの慢性毒性試験で、メスに肝臓がんの発現がみられた。アメリカ科学アカデミーはアシュラムを発がんの危険度の高い農薬としてあげている。EPA(アメリカ環境保護庁)はアシュラムをヒトに対して発がんの恐れのある農薬にあげている。」(「農薬毒性の事典」三省堂 第2版より抜粋)  <4、フラザスルフロン>   日本芝に使用される除草剤。石原産業(株)が開発した。   商品名、カタナ、シバゲンDF、複合剤でツバサがある。  シバゲンDFの危険有害性情報  ・発がんのおそれ  ・呼吸器系の障害  ・長期にわたる、または反復ばく露による肝臓、呼吸器系または肝臓の障害  ・水生生物に非常に強い毒性   (石原産業株式会社・シバゲンDFの安全データシートより抜粋)  【広島市南区・中区の現状について】   今年5月、広島市南区・中区に街路樹等への農薬散布の問い合わせをしたところ南区では「令和元年5月以降、南区全域で街路樹等への薬剤散布を中止した」、そして「薬剤散布をしなくても目立った虫害はない」と言う回答を得ました。   昨年の同じ時期に南区の維持管理課担当者に住宅地通知の存在を知らせたところ、「住宅地通知の存在を知らない」というものでした。その後「街路樹や花壇、緑地帯への農薬散布も今年は取り止める、減らす」「今年減らしたり、止めてみて問題がなければ、来年からは一切中止しようと思う」でした。   そして今年問い合わせしたところ、上記の回答でした。中区でも南区からの住宅地通知の情報共有で「散布をできるだけ止めて、樹幹注入にして飛散を減らし、八丁堀の花壇では散布自体を止めた」。ただ「平和大通り等のバラ花壇のみ薬剤の散布をしている」という現状です。  以上