■食品安全委員会 残留農薬に関する食品健康影響評価指針(案)パブコメ   開始:2019年05月22日 締切:2019年06月20日 反農薬東京グループの【意見】 2019/06/20投稿 ★その1 文字数制限のため8分割して投稿する。  わたしたちは、食品中の残留農薬の摂取を出来るだけ減らすことを求めて、いままで、農水省、厚労省、食品安全委員会の提案に対して、多くの意見を述べてきた。  そのひとつである、2014年2月の「農薬の登録申請時に提出する試験成績及び資料に係る関係通知の改正案に関する意見募集」では、予防原則の観点から、OECDドシエ様式の問題点を指摘したが*1、今回の食品安全委員会が提案した指針は、OECDガイドラインに沿ったものであることは否めない。  *1:<参照>反農薬東京グループの2014年のパブコメ意見         http://www5e.biglobe.ne.jp/~ladymine/kiji/pcno140303.txt   以下に、評価指針(案)に沿って意見を述べる。 【意見1】第2 目的 について   本指針は、食品からの農薬摂取が主になっているが、農薬と同じ成分が、飲料水、大気、土壌などから経口、経気、経皮経路により摂取されることを無視してはならないこと、を追加する。 その2の【意見2】につづく   ★その2 【意見2】第3 定義 について   農薬の有効成分と同じ化学物質を含む製品が多々あることを明記すべきである。  たとえば、ひとや動物用医薬品、防疫用や家庭用殺虫剤、食品添加物や殺菌剤、しろあり防除用殺虫剤や木材防腐剤、工業用殺菌剤、不快害虫用殺虫剤や虫よけ剤、非植栽用の農薬登録のない除草剤、などは、身の回りで使用されており、食品に付着して経口摂取するだけでなく、経気、経皮的にも摂取される。これらも農薬と同等にあつかうべきである。 【意見3】第4 残留農薬の評価に関する基本的な考え方 について  (3-1)要請者から提出された試験成績は、科学的資料であるにも拘わらず、要請者の財産として、非公開になっている資料が多い。すべて、公開すべきである。これは、【意見4】にも共通する。 その3 【意見3】(3-2)につづく ★その3 【意見3】の  (3-2)評価に用いる試験成績等に、メーカーと無関係な一般研究論文を含めるべきである。  (3-3)インポートトレランス制度による残留基準設定のために、申請される資料には、毒性試験成績とともに、残留試験成績が含まれるが、その際、国内では、適用できない使用方法がみられることがある。たとえば、ポストバーベス用殺虫剤や収穫をし易くしたり、圃場利用の便宜のために収穫前に使われる除草剤である。このような農薬は、収穫物への残留量が高くなる恐れ大きい。また、特定の農薬に耐性の遺伝子組換え作物も然りである。国内残留値を上回る農薬使用方法を認めるための、インポートトレランス制度であってはならない。  (3-4)非遺伝毒性発がん物質については、閾値ありとして、ADIが設定されるが、当該物質が、すでにがんを発症している患者への閾値かどうか不明である。また、他の発がん物質や放射性物質の影響下での、発がん性評価も不明であり。このような農薬は出来るかぎり摂取すべきでない。 その4 【意見3】(3-5)につづく ★その4 【意見3】の  (3-5)人体実験は。倫理上問題がある上、成人が対象となることが多いが、妊婦、胎児や幼小児、高齢者、農薬に感受性の高いひとなどを対象にできない以上、実施すべきでない。また、人体実験データがあると、安全係数が種差は勘案されず、個体差の10だけとなるのもおかしい。 【意見4】第5 評価に必要な資料、試験成績等の考え方 について  (4-1)別表の毒性試験に、発達神経毒性試験、発達免疫毒性試験を明記する。  (4-2)人体組織(血液、尿、毛髪、脂肪ほか)中の、農薬やその代謝物の調査や疫学調査の結果も評価の対象とする。  (4-3)申請者の資料内容に疑義があり、公表するよう国民からの請求があった場合、資料の公表を義務付け、科学的な検討を行う。  (4-4)申請者の資料だけでなく、申請者と無関係ない一般学術論文も検討対象とする。この場合、GLPに対応した試験施設か否か、ガイドライン等で規定された試験方法であるか否かで、当該研究を検討対象から排除してはならない。 その5 【意見4】の(4-5)につづく ★その5 【意見4】の  (4-5)複数の同類毒性試験成績があり、ADIやARfDの評価値が異なる場合や新たな試験成績や研究報告が明らかになった場合、当該試験成績を公表し、国民の意見を聞くべきである。→ この項は【意見6】にも関連する。 【意見5】第6 評価 について  (5-1)食品からの摂取がADIの80%を超えないこと絶対視すべきでない。       (5-2)ADIについては、水からの寄与を10%として、水道水の目標値が決められ、   さらに、ADIの10%を大気ほかからの摂取にわりあてている理由が不明である。   その根拠を明白にし、経口、経皮、経気的摂取について、科学的な評価をすべきである。  (5-3)農薬使用者や散布地周辺住民は、食品からの摂取以外に、散布中の直接又は受動被曝による取り込みも加算されるので、その評価をすべきである。  (5-4)動物実験から、ヒトへの影響を評価する場合の安全係数は、種差10、個体差10とされているが、妊婦や幼小児の場合、年齢差を安全係数に加えるべきである。 その6 【意見5】の(5-5)につづく ★その6 【意見5】の  (5-5)化学構造が類似し、同じ機序で作用する農薬は、グループ化してADI評価すべきである。神経伝達物質であるアセチルコリンの分解阻害作用のある有機リン剤については、いままでのパブコメでも求めてきた。  (5-6)複数の農薬による複合毒性の評価を行うべきである。たとえば、水道の監視項目では、個別農薬だけでなく、検出された総農薬で評価される。  (5-7)ARfDの評価の場合、国民全体区分と妊婦区分で、数値た異なる場合があるが、発達神経毒性や発達免疫毒性、環境ホルモン作用のある農薬は、幼小児区分も妊婦と同様にすべきである。 【意見6】第7 評価の見直し について  同一毒性試験成績をもとにした、ADIやARfDが外国の評価値と異なる場合や新たな試験成績や研究報告が明らかになった場合、当該試験成績を公表し、国民の意見を聞くべきである。 その7の【意見7】につづく ★その7 【意見7】残留基準の設定について  厚労省の実施する食品別残留基準の設定においては、食品安全委員会が評価する当該農薬の毒性試験と残留試験成績の評価が重要であるが、現状では、以下のような問題がある。市場流通食品の残留実態に即した残留基準を設定することを求める。  (7-1)食品安全委員会が設定したADIは、絶対的数値とされ、食品からの摂取がその80%を超えなければ、安全とされているのは科学的根拠がない。  (7-2)理論最大一日摂取量TMDIは、農薬の残留基準×食品別平均摂食量の総和を、体重で除した数値であるが、食品別の摂食量は、フードファクターや国の実施する食品摂取頻度・摂取量調査の特別集計業務報告書が根拠となっており、あくまで、平均的なもの過ぎない。  体重の軽い人が、個人の嗜好で食するため、このような平均的数字で、安全性を議論することは、科学的とはいえず、数字の遊びとなっている。 その8 【意見7】の(7-3)につづく ★その8 【意見7】の  (7-3)TMDIは国民全体、幼小児、妊婦、高齢者区分で算出されるが、TMDI/ADI比は、全ての農薬において、発達途上にある幼小児は、国民全体の約2倍になっている。このことを問題視する姿勢がみられない。  (7-4)同上比が80%を超える場合は、残留基準よりも低い暴露残留量をもちいてEDIを算出し、EDI/ADI比で、80%より低くみせている。  ちなみに、わたしたちは、残留基準値の設定に、残留実態を配慮し、これに即した基準にすべきだとしている。  (7-5)短期摂取量ESTIにおいては、個々の食品ごとの多量摂食量に残留基準を乗じて算出し、ESTI/ARfD比が100%を超えなければ安全としているが、ここでも、残留基準より低い暴露残留量もちいて、100%以下とした計算が多々みられる。  ちなみ、わたしたちは、個々の食品についてESTI/ARfDは【誤20%→正10%】を超えないことを求めている。 以上