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その1
【意見】骨子案には、農薬散布等による生活環境や自然環境への悪影響を防止し、人の
健康や生態系・生物多様性を保持し、SDGsの達成を目指すため、茶の栽培にできる限
り農薬を使用しないことを明記することを求める。
[理由]1、農水省は、日本型GAPを推奨しているが、これは生産性の向上が重視され
た施策であり、農薬についていえば、登録された使用どおり、適正に使えば、設定され
た残留基準をこえることがなく、そのため、ADIを超えることがないという論理であ
る。一方、国際GAPでは、気候変動や環境問題を重視し、農薬使用によって、生活環境や
自然環境に出来る限り影響をおよぼさないことが求められる。
2.日本で、茶に使用される農薬の種類が海外にくらべ多く、その使用量も多いた
め、輸出相手国の残留基準をクリアできないケースがある(参考資料1)。
3、農水省ガ2014年に公表した「農産物輸出促進のための新たな防除体系の確立に
必要な輸出相手国の残留農薬基準値の調査」では、残留基準超えはみとめられていない
が、これは、基準が外国に比べ、高いせいである。(参考資料2)
4、農水省は、2015、16年に茶についての「輸出相手国の残留農薬基準値に対応し
た病害虫防除マニュアル」を作成し、国産でも、海外の残留基準をクリアできるよう
栽培方法を指導しており、いわば、国内向けと輸出用の2重の使用基準となっいる。
一方で、輸入相手国の残留基準を、インポートトレランスにより、日本なみの高
い基準にすることを求めている。これは、相手国の農薬使用状況や環境・生態系を配慮
しておらず、SDGsに反する行為である。
5、わたしたちは、国内流通茶も輸出品なみに低農薬にすべきと考え、以下のように
主張してきた。
『調査で茶に検出された農薬はすべて、日本の残留基準以下で、食品衛生法違反には
なりませんでした。しかし、表1に示したように、輸出想定相手国の茶の残留基準と比較
すると、EU残留基準を超えが16農薬で30検体、台湾の残留基準超えが7農薬で26検体あり、
輸出用としては不適合でした。
さすがに、日本の場合も何十ppmという残留基準ギリギリの検体はありませんでしたが、
諸外国に比べ、高濃度で、多種の農薬が残留しているお茶を平気で飲んでいることにな
りますから、茶経由の農薬摂取量が多いことは間違いありません。
輸出するために、栽培に使用する農薬の残留値を低くする前に、国内で流通するお茶
についても、海外並の残留基準を超えないようにすることが先決と思います。
その2 にある表1につつく
***
その2 受付番号 202003100000980596 からのつづき
表1 茶葉中に検出された農薬と残留基準比較
表1の説明。茶の種類別の数値にある*:検出範囲にある最大値に対応する茶葉があっ
たことを意味する。**はアセフェートの代謝物
農薬名 検出範囲 検出率 残留基準 ppm 茶の種類別検出数
ppm % 日本 台湾 EU 抹茶 てん茶 かぶせ 玉露 煎茶
アセタミプリド 0.12 3 30 2 0.05 0 0 0 1* 0
イミダクロプリド0.01-0.03 15.1 10 3 0.05 0 0 1* 1* 3
インドキサカルプ 0.05 3 - 0.05 0.05 0 0 0 0 1*
エチプロール 0.05 3 10 - 0.01 1* 0 0 0 0
エトキサゾール 0.02-0.19 9.1 10 1 15 1 0 0 1* 1
クロチアニジン 0.02-5.9 21.2 50 5 0.7 0 0 1 1* 5
クロラントラニリプロール
0.01-0.07 18.2 50 2 0.02 0 1 0 0 5*
クロルフェナピル0.006-1.15 87.9 40 2 50 3 1 2 2 21*
ジノテフラン 0.05-5.8 54.5 25 10 0.01 3 1 3 2* 9
ジフェノコナゾール 0.23 3 10 5 0.05 0 0 0 0 1*
シフルメトフェン0.01-0.06 15.2 15 5 0.01 0 0 2* 0 3
スピロメシフェン0.01-0.02 12.1 30 - 50 0 0 1 0 3*
チアクロプリド 0.02-1.4 36.4 30 - 10 3 0 1* 3* 5
チアメトキサム 0.03-0.23 6.1 20 1 20 0 0 1 0 1*
テブコナゾール 0.02-3.5 33.3 50 10 0.05 1 0 0 2* 8
トリアジメホン系 0.1 3 1 - 0.2 0 0 0 1 0
トルフェンピラド0.03-0.35 12.1 20 10 0.01 1 0 0 1 2*
ピリプロキシフェン0.02-0.05 15.2 15 5 0.05 0 0 0 0 5
ピリミホスメチル 0.02-0.5 42.4 10 0.05 0.05 0 0 1 1 12*
フェンブコナゾール0.03-0.33 15.2 10 5 0.05 1 0 1 1 2*
フェンプロパトリン 0.03-0.05 6.1 25 10 2 1 0 0 0 1*
フルフェノクスロン0.02-0.54 24.2 15 15 15 1 0 1 0 6*
フルベンジアミド 0.01-0.47 30.3 40 - 0.02 0 1 0 1 8*
フロニカミド 0.17-0.34 18.2 40 5 0.05 0 0 0 0 6*
ベノミル系 0.02-0.23 6.1 10 - 0.1 0 0 0 1 1*
メタミドホス** 0.03 3 5 0.25 0.02 0 0 0 0 1*
メトキシフェノジド0.03-0.11 9.1 20 10 0.05 0 0 0 1 2*
ルフェヌロン 0.01-0.33 18.2 10 5 0.02 1 0 1 0 4*』
■以下の資料は、当グループが、国産茶の残留農薬に注目し、機関誌てんとう虫情報でもとりあげてきた記事である。
参照資料1:
茶製品の残留農薬分析結果〜国産茶に、複数のネオニコ系農薬検出例も/台湾への輸出で残留違反は13件
参照資料2:
農水省発表の茶の残留農薬調査〜検出率97%、すべて3成分以上残留、14成分検出の煎茶も
参考資料3;
茶の残留基準をどうクリアーするか、農水省が輸出用の栽培マニュアル公表〜無農薬栽培を進めれば、
国内でも海外でも安全・安心
**** 資料2の記事の一部を下記に転載する***
★4府県の茶葉33検体をドイツで分析
茶葉については、輸出相手国での残留基準を超える場合にストップされる恐れがある
ため、2013年度の残留実態調査として、慣行農法による茶の栽培地(静岡県、京都府、福
岡県、鹿児島県)における一番茶の製茶が選ばれました。茶は最大で5回収穫されますが、
最も残留が少ないとされるのが一番茶だそうです。
分析された製茶の種類は、抹茶(3検体)、てん茶(1検体)、かぶせ茶(2検体)、
玉露(4検体)、煎茶(23検体)の合計33検体。分析農薬は461成分で、輸出がめざさ
れているEUを想定し、ドイツの分析機関で実施されました。
★28種の農薬が検出された
調査した33検体で、煎茶1検体をのぞき、32検体から28種の農薬が検出されました。検
出範囲と検出率、茶の種類別検出数を、日本、台湾、EUの残留基準とともに、表1に
示しました。茶の種類別の数値にある*は、検出範囲にある最大値に対応する茶葉があっ
たことを意味します。
検出率が、一番高いのは、殺ダニ剤として使用されるクロルフェナピル(商品名コテ
ツ)で87.8%(検出範囲: 0.006-1.15ppm)でした。ついで、ジノテフラン54.5%(同0.05-5.
8ppm)で、そのほか30%を超えたのは、ピリミホスメチル42.4%(0.02-0.5ppm)、チアクロ
プリド36.4%(0.02-1.4ppm)、テブコナゾール33.3%(0.02-3.5ppm)、フルベンジアミド30.
3%(0.01-0.47ppm)でした。
検出値が高かったのは、いずれも玉露で、ネオニコチノイド系殺虫剤のクロチアニジ
ン5.9ppmやジノテフラン5.8ppmが目立ちます。そのほか、1ppmを超えたのは、殺菌剤テ
ブコナゾール3.5ppm、ネオニコ系のチアクロプリド1.4ppm、クロルフェナピル1.14ppmで
した。
また、日本の茶の残留基準は表1のように10ppm以上のものが多く、基準超えはみられ
ません。
表1 茶葉中に検出された農薬と残留基準比較 −[理由]5にあげた表と同じ
★複数農薬検出 10種を超える煎茶多数
次頁の表2に示すように、33検体のうち、32検体すべてから3種以上の農薬が検出され
ました。検出率は97%で、3〜5種の農薬が検出された茶が全体の約64%でした。中には、
12種や14種の農薬が検出された煎茶もありました。
製茶の際に、収穫畑の異なる茶葉がブレンドされていることも考えられますが、茶の
栽培に、いかに、多くの農薬が使用されているかの証しと思われます。
表2 検出された農薬数別の検体数
検出 抹茶 てん茶 かぶせ茶 玉露 煎茶 合計
農薬数
0 1 1
3 1 7 8
4 1 1 5 7
5 1 1 4 6
6 2 1 3
7 1 1 2
8 1 1 2 4
12 1 1
14 1 1
検体総数 3 1 2 4 23 33
★玉露では、半年以上前散布農薬も残留
玉露では、2検体について、摘採日までの過去一年間に散布した農薬散布履歴とその残
留値が調査されました。
表3−省略−に示したように、半年以上前に散布したり、散布実績のない検体を13年1
1月、12月に分析したところ、10種の農薬が検出されたケースがありました。特に、ネオ
ニコチノイド系のクロチアニジン、ジノテフラン、チアクロプリドが1.4〜11ppm検出さ
れており、残留性が高いことを窺わせます。ただし、いずれも、国内残留基準が高いた
め、流通に規制はありません。
表3 玉露の農薬散布履歴と残留量の関連 −省略−
報告では、散布実績がないにも拘わらず検出された農薬について、『隣接圃場からの
ドリフト、製茶工程の汚染等、農薬残留の問題は散布以外の場面でも生じることが示唆
された。』とし、『複数茶園での収穫物の混合が想定される場合には、全茶園での散布
履歴の把握が不可欠である』と述べて、茶の輸出には、まだ、問題が多いことが指摘さ
れています。
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