クロルピクリンに係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集について  2018/10/24-11/22 https://form.cao.go.jp/shokuhin/opinion-1071.html その1  文字数制限のため9分割して投稿します。 【総括意見】わたしたちは、いままで、クロルピクリンのヒトの健康被害がやまないた め、農薬登録を廃止するよう農水省らへ求めてきました。その中で、貴委員会が農薬評 価書を開示していないため、早急な評価を求めてきた経緯があります。  このほど、農薬評価書案が提示されましたが、いちばんに感ずるのは、これで、クロ ピクの直接被曝をうける使用者や受動被曝をうける使用地域の住民・生活者の健康被害 が防止できるかということです。  食品からの残留農薬としての摂取のみを考えた貴委員会の健康影響評価と、クロピク の揮散が圃場被覆で防止できるとする農水省・環境省の指導だけでは、健康被害は防げ ません。あくまで、EU並みの登録廃止・販売禁止を求めます。  以下は、農薬評価書記載事項に関する意見です。 その2 の【意見1】につづく *** その2  【意見1】クロルピクリンは、その使用によるヒトの健康被害が最も多い農薬の一つで あり、ヒトの健康影響評価は、食品からの摂取を重視するのでなく、水や大気からの摂 取の影響も評価すべきである。   [理由]1.食品安全委員会は、食品でのクロルピクリンの残留のみを重視し、残留試験 事例(55作物67品目で193件、うち社内試験94件)を示し、いずれも検出限界以下(多く は<0.005ppm)であり、クロルピクリンは食品に残留じないとしている。  同剤は作物の栽培前の圃場処理使用されるが、これらが、地下水を汚染し、被害を与 えたこともあるし、別途、水道水の塩素処理によっても生ずることも知られているのに、 水からの摂取は評価されていない。さらに、処理圃場周辺では、大気に揮散し、住民の 健康被害もあとをたたない。   <参考1>反農薬東京グループの作成資料    毒ガス兵器そのものが農薬として使用されている。被害は周辺住民に多い。     http://www5e.biglobe.ne.jp/~ladymine/kiji/chlo180214.doc その3 の【意見1】 [理由]2につづく ****147 その3  【意見1】 [理由]   2、環境省が公表している「化学物質の環境リスク評価第10巻」にあるクロピクの 資料には、吸気毒性は、急性試験だけでなく、ラットやマウスの3週間、78週間、107週 間の長中期試験がある。  ラットの107週吸入試験で、0.5 ppm 以上の群の雄で生存期間が有意に短くなり、その 無毒性量は0.018ppmであった。ヒトの吸気毒性についての評価がたりない。    【意見4】の [理由]2−6も参照。 【意見3】急性神経毒性試験(ラット)の50 mg/kg 体重投与群で、毒性所見なしとされ ているが、農薬抄録では、雌の自発運動量カウンドで、投与7日目に影響がでたが、 一 過性のものとして、関連性について、詳細な検討がなされていない。 その4 【意見4】につづく *** 169 その4  【意見4】吸入毒性の評価が不十分のまま、ADIは0.001mg/kg体重/日とすることに反対 である。   [理由]1、マウスの78 週間経口発がん性試験において、雌雄で肺の細気管支肺胞腺 腫及び癌並びにハーダー腺腺腫、雌で前胃の扁平上皮乳頭腫及び癌の発生頻度増加が認 められたが、発生メカニズムは遺伝毒性によるものとは考え難いとされた。他の発がん 物質や放射性物質が存在した場合や、ガン患者への影響が不明である。    2、ラットでの90日間亜急性吸入毒性試験で 雌雄の無毒性量は0.011ppmである。 安全係数を100とし、50kgの成人が一日15m3の空気を吸うとして、体重あたリに換算 すると、この量は0.0002mg/kg体重/日となる。    3、Fischer 344 ラットによる13 週間吸入試験ではNOAEL が0.67 ppm(ばく露状 況で補正:0.12 ppm(0.87 mg/m3))とされた。 その5の 【意見4】の [理由]4につづく **** 52  その5  【意見4】の [理由]   4、ラットの 13週間吸入試験で、 NOAEL、0.3 ppm、 CD-1 マウスの13週間吸入試 験で、LOAEL0.3ppmとされた。   5、Sprague-Dawley ラットの107 週間吸入試験で、NOAEL を 0.1 ppm(ばく露状況 で補正:0.018 ppm(0.12 mg/m3)とされた。     6、CD-1 マウス 78 週間吸入試験で、NOAEL を 0.1 ppm(ばく露状況で補正:0.01 8 ppm(0.12 mg/m3))とされた。  <参考2>環境省 「化学物質の環境リスク評価第10巻」にあるトリクロロニトロメタン    http://www.env.go.jp/chemi/report/h24-01/pdf/chpt1/1-2-2-08.pdf その6の 【意見5】につづく ****  その6 【意見5】吸入毒性の評価が不十分のまま、ARfDを0.5mg/kg体重とすることに反対である。   [理由]1、ラットの急性吸入毒性試験は、1.9ppmから20.6ppmの暴露濃度で行われて おり、死亡しなくとも様々な症状が観測されている。ヒトが1.9ppmのクロピク暴露でど のような症状を示すか不明である。    2、EUやカナダでは、ARfDは0.001mg/kg体重とされている。    3、住宅地でのクロピク被害者は、軽症の場合、眼や喉の痛み、頭痛を訴えてい る。このARfDで、吸入により、刺激中毒症状がでないのか    4、日本産業衛生学会(2006年版)の管理濃度は設定されておらず、許容濃度は (ばく露限界値、生物学的ばく露指標)0.1ppm=0.67mg/m3となっている。  <参考2> 評価書案の参照文献 38. EFSA Journal 2011; 9 (3):2084. その7 の【意見6】にづづく ***67  その7 【意見6】残留試験は 55作物67品目で193件(うち社内試験94件)で、クロルピクリン はいずれも検出限界以下、多くは<0.005ppmであった。  クロルピクリンの残留はないとされたが、同剤の組成の64.7%は塩素であり、処理土 壌で栽培した作物に塩素成分が、どのような化合物として、どの程度残留しているかを 示されたい。   [理由]1、食品安全委員会は、『植物体内運命試験は実施されていないが、クロル ピクリンで処理された土壌で栽培した植物体中に認められる放射性炭素は、自然の植物 体成分を構成していることを示唆する文献報告があり、クロルピクリンを分析対象化合 物とした作物残留試験ではいずれも定量限界未満であったことから、農産物中の暴露評 価対象物質をクロルピクリン(親化合物のみ)と設定した。』としている。    2、土壌くん蒸剤である臭化メチルやEDBを使用した場合は、無機臭素の残留基準 が設定された。 その8  の【意見7】につづく ***  その8 【意見7】クロピク中毒の症状として、以下があるが、それぞれの症状が出現する作用 機構とヒトと動物実験との作用差を教えてほしい。   ・症状 皮膚・粘膜刺激,腐食作用,酵素阻害   ・全身症状:頭痛,めまい,全身倦怠,悪心,嘔吐,鼻汁,咽頭痛,咳,喀痰,呼 吸苦,呼吸困難(ぜんそく様),肺水腫   ・神経症状:嗜眠状態,振せん,運動失調,複視,筋れん縮,てんかん様けいれん, せん妄,失語症   ・皮膚症状:水疱,びらん   ・眼症状:眼痛,流涙,結膜充血  <参考3> 「農薬中毒の症状と治療法」について(発行農薬工業会 2016年4月)   [理由]1、血圧や動悸、不整脈など循環器系の症状はでないか不明である。    2、  クロピクの分解過程で発生する窒素酸化物や、土壌中の運命の試験で見 出される分解物Bジクロロニトロメタンの気中濃度や大気中の挙動、ヒトへの影響も不 明である。    3.発達神経毒性については、【意見8】も参照。 その9 の【意見8】につづく *** その9 【意見8】クロピク使用地域での住民の疫学調査を実施して、公表すべきである。   [理由]アメリカの調査研究で、臭化メチル、クロピクくん蒸剤使用の8km以内の7歳 までの子ども(出産前被曝285、出産後被曝255)で、知能指数減少に、差を認められ、規 模の大きな調査をすべきとしている。  <参考4> Robert B. Gunierらの論文Environmental Research 158 (2017) 358.365    Residential proximity to agricultural fumigant use and IQ, attention and hyperactivity in 7-year old children   「農用くん蒸剤使用近接住宅地と7才の子供たちのIQ、注意と多動」 以上