WJ表紙のリョーマさん風な壁。男のロングマフラーはなあ。


Genius157 1回戦突破!! / 桃城 武




 よく親とか教師とか言うだろう、『天才は99%の努力と1%の才能』って。
 だから頑張れよって。
 でもさあ、『天才は〜』ってそもそも言ったヤツはこう続けたらしいぜ。
 『だから才能が重要だ』。
 つまりヤツは天才に努力しろよって言いたかっただけで、
 別に凡人が頑張りゃどうにかなるとは全く言ってない訳だ。

 そんでもってこの言葉ってのは穿って聞けば要はさ。

 凡人はどうあっても天才に負けるってコトだ。


 笑ってこちらを見上げた越前を見たとき、こんな事を思ってしまったオレをどうか許して欲しい。誰に請っているわけでもないのだが。





 崖っぷちの試合で越前の勝利。どちらかというと、圧勝。
 オレらは喜ぶというより呆気に取られた。その直ぐ後に皆で越前を囲んだ。勿論オレも。ニ、と笑った越前に笑い返す。スゲエな良くやったなと。本心からだ、心から越前の勝利が嬉しかったし二回戦に進めることに嬉しいというよりホッとした。嘘じゃない。それでも。
 凄まじい目で越前を凝視する氷帝の日吉が悔しかった。
 日吉は二年で、レギュラーで。校の勝敗を左右する大事な試合で、負けて。来年の氷帝をつくるはずが、崩れて。ネットの向こうに整列した彼が越前をギリと睨みつける泣きそうに潤んだ目。
 それが羨ましくて、悔しかった。
 だって日吉は二年で、学年は関係ないって言ったってオレと同じ学年。フツウ考えたら、アイツが意識するべきはオレだろう。越前より、むしろ、オレだろう?
 勿論、日吉が対戦したのは越前だし負けたのも越前で、その越前を睨みつけるのだから筋は通っている、道理なのだ。それは、分かっている。だからオレがこんなことを思っているのは単なる僻み根性ゆえ。
 そしてその僻みは、オレが日吉と戦っても勝てないだろうと分かっているからだ。
「アレが本来の彼のベストテンションなのかもしれない」
 不二先輩が堅い調子で呟いたのを思い出す。まさか、と思った彼の台詞はあながち間違ったものではないのかもしれないとゾクリとする。四月の初め、お遊びで試合った時にも桁外れに強いと感じた。
 でも、これほど差をつけられるとは思ってもみなかった。





 階段状に並ぶベンチの一角にある、二年バックの山積みを崩して自分のモノを探しながら、ついさっきを思い出す。
 挨拶も終わりコートから離れる途中、並んで立っていた越前は年相応に上機嫌を顔に出していた。オレはいつも通りにソレを茶化す、そしてまだ随分下の方にある頭をぐちゃぐちゃにして彼の勝利をもう一度称えた。越前は笑う。中学生の一つ違いはでかい、笑顔はとても幼く見えた。弟妹に近いものを感じて和んだ。
 それでも越前がオレのずっと先に居ることに嫉妬や屈辱や諦め、そんなものがドロドロと込み上げて胸が苦しい感じがした。笑ったまま、それぞれ荷物を取りに分かれることは出来たが、弱い上に卑屈な自分が嫌だと思った。
 なんというか、

「偽善者」

 正にそのとおり。じゃなくて。
「なっ!んだよイキナリ失礼なヤツだな!」
「失礼も何もそのまんまだろが、ボケ」
 後ろから唐突にケンカを売ってきたのは見なくても分かる、マムシこと海堂。オレが後ろに放ったバックの一つがヤツのだったらしく、わざとらしく地面についた部分を払っていた。何時もに増して目付きが悪いのはそのせいだけではなさそうだが、イキナリ『偽善者』と言われたら、こっちだって軽くいなせるものじゃあない……偶然にせよ、図星であるだけに、一層。
「お前、笑ってんのキモチワリーんだよ。笑顔がスゲエ汚ねぇの」
 何を言い出すのかと睨みつけたまま少し黙ると、海堂は調子に乗ったのかなんだか知らないが、珍しく饒舌に言葉を続けた。

「思ってもいないコト、言うんじゃねぇよ。悔しいんなら悔しいって顔すりゃイんだ。喜ぶフリなんかすんな、馬鹿じゃねえの」

 頬の辺りがカッとなった。
 馬鹿って言ったとかそんなんは今はモウどうでも良くて(何時もなら交戦準備だが)、ただ海堂に読まれていたことが酷く恥ずかしい、屈辱、みっともない。ヒトのことなんか何も気にしてない、人付き合いを知らないショーガネーヤツ、と思っていた海堂に読まれたことにオレは凄い驚いてそして気が立って、悔し紛れだと自分でも半分分かりつつ海堂に怒鳴った。
「うるっせえよっ!オレはお前みたいに自分のことだけ大事大事してる人間とは違げーんだよっ、自分が原因で周り振り回すなんでゴメンだねオマエと違って!」
「はあっ!?んじゃテメエは今の自分がイイと思ってんのかよウスラボケ、腹に汚物溜め込まれるとクセエんだよ、腐ってんのバレバレだ!吐き出されたほうがずっとマシだ大馬鹿野郎!!」
 これだけ大声を出し合っても、普段の行いが幸いしてか災いしてか誰も止めに来ない。むしろ、近くにバラバラといた部員たちは、トバッチリを食らってはたまらないと散っていった位だ。
 お互いが興奮して怒鳴って、荒くハアハアと息をつぐあいだに妙な間が出来てしまった。周りに人が居ないから、変な感じに静かになる。海堂を睨みつけてはいるものの、オレは何となく途方に暮れた気分で息を整えた。
 正面で同じく息を荒くしている海堂は未だ戦闘態勢。しかし長々怒鳴って言いたいことを吐き出したらしく、言葉を続ける様子はなかった。つまり、オレがどうでるのかを待っていた。
 オレは視線は反らさないまま海堂の言葉を反芻して、そして、舌打ちしたい気分になる。海堂のが分があるのは初めに『偽善者』よばわりされた時から分かっていて、今更つくろうえば余計みっともないコトになるのは自明。
 けれど、海堂に「わりぃ」とか「さんきゅ」とか、そんな言葉を吐くのは、想像するだけで虫唾が走る。
 双方唸るように睨みあいながら、沈黙が流れ。
 オレは目を逸らした。
「……ホントはお前が悔しいんだろ…」
 正真正銘悔し紛れ、に言う。綺麗なこと言ったって、テメエだって嫉妬とコンプレックス塗れてなんだろ、今が怖くて来年が怖くて自分に自身がなくて仕方ないんだろう。そんなことを敗北宣言込みで極ひかえめに言ってみたのだが、言葉の陰の言葉は全てダイレクトに自分の気持ちだと瞬時に気付く。
 あーあマジでみっともない、と思ったら。
「当たり前だろ。んなコトも分からなきゃいっぺん死んで来い」



 海堂の身長はオレより3センチ高い。
 差は随分と大きいらしい。



つまり今回の感想は
「手塚さんも立海も六角も越前ヒイキし過ぎじゃあっ!!!」てこと。
なんですが、その鬱積を薫さんに語らせるのは如何なものかと考えた末、じゃあエセレギュラーの桃にやってもらおうと。


そもそもですね、来年は薫さん(と桃も一応な)の年なのですよ3年ですよ?トップですよ?
何故に越前が出張りまくる道筋が出来ているのです。
原因は分かってます、
髪形のうっとうしいフケた怪我人が妙なこといったからです。
しかし彼をパッシングするとワタシが危険なので今回はスルーします。しかし、彼は
尊敬する先輩の真似っこしてるだけだから非難するのも可哀相でしょう。
そう、この
2年に対する不遇の源は や ま と とか言う故人のせいなのです。
まったくもう。




ほんとのほんとは「コノミのばかー!!!!」ですが。
ミチルが(ばかで)カワイカッタので。
泣く鳳が(ヘタレで)カワイカッタので。
跡部さまが(珍しく)おとこまえだったので。
まあ。


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