風が吹くときが、何よりも好きだった・・・。


++風花++

風が吹く度に、視線を感じた。
初めは、気のせいだと思っていたけど。
風が吹く度、痛いほどの視線が肌を焼いた。
だから、強い春風の吹いたあの一瞬、視線の方を初めて見た。

笑っている・・・後輩の姿。

体が、火照り始めた。視線の主が彼だと知って・・・。
「鳳」
名前を呼んだけど聞こえないフリ。随分と可愛くない。
「鳳っ」
「わぁっ!宍戸さん!!」
憎らしいくらいデカイ図体が、驚いたふうにこちらを向く。
全てが演技。騙されてはいけない。
「・・・何見てんだよ・・・」
か細い声で、尋ねる。どうせ、鳳には聞こえているから。
「・・・何がです?」
わからないという態度。それでも目は楽しそうに笑っている。
「・・・なんで風が吹く度に俺の方見てんだよ・・・」
「ああ・・・そのことですかぁ」
笑いながら、耳打ちされた。
「・・・だって、風が吹く度にさらさら舞うんだもの」
「何が」
「宍戸さんの・・・あ、違う。俺の宍戸さんの綺麗な髪が」
何も、訂正することはないだろう。
「俺は物じゃない」
少し機嫌が悪くなって、ぶっきらぼうに言い放つ。
「そりゃそうですけど・・・。いいじゃないですか、俺なんだから」
そう駄々をこねながら首筋に顔を埋めて。
軽く跡をつけられた。
「・・・んっ・・・」
目眩しそうな程、こいつに囚われる。
抵抗しないのをいいことに、鳳の手が太股にまでのびる。
「・・・駄目」
「・・・なんでですかぁ、宍戸さぁーん・・」
悲しそうに、頬を擦り寄せてくる。
「駄目なもんは駄目」
少し鳳に勝てた気がして・・・楽しい気分になったから。
笑いながら練習に戻った。


どうしても、掴めなかった。
捕まえたと、喜んだ途端に貴方は僕の腕から擦り抜けてしまう。
今も、そう。
「・・・捕まえたと・・・思ったんだけどな・・・」
自嘲の笑みすら浮かぶ。
不意に、宍戸さんがクルリと振り返り走って着て耳打ちをされた。
「・・・今日・・仕事の都合で・・居ないから。親。」
「だから・・・・」
「だから・・・泊まりに来い」
そう言って。また走って行ってしまった。
貴方が側にいないのは寂しいけれど・・・。
とても・・・この現実は幸せだと思います。

捕まえたと思ったら、擦り抜けてしまう。
擦り抜けたと思ったら、捕まっている。
風花のように、限りなく自由な貴方を束縛できるのは。
世界に唯一無二、俺だけですよね。宍戸さん。


イグルミリツ

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イグルミリツさまより戴きの鳳宍戸!!
べた甘でvvとかいう図々しいリクに快く快諾して下さったリツさまに感謝!!
ガキっぽくも独占欲丸出しな鳳が切なくヨイですよ〜ホント★
リツさま、とってもオイシイSSを有難う御座いました!

20020414
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