もう5年も前の話になるが、僕はとある南青山にある空間クリエイティブの会社で仕事の打ち合わせをしていた。
そこの社長が、しきりに『しかし、似てるなぁー!』と言うので『誰にですか?』と聞くと
そこの仕事をしている照明クリエイターのYとのこと。かなり斬新な照明効果で、引っ張りだこだという話だった。
『今度、合わせてあげるよ。確か年も丹下さんと同じぐらいだから気が合うと思うよ!』
その場は業界で言う社交辞令ぐらいに感じてた僕は『その時はよろしく』などと言っていたのだが・・・。
ある日その社長から電話があった。
『今、Yが東京にいるんだけど遊ばない?』律儀な人だなぁーと思いながらも、特に予定も入っていない僕は指定された店に行った。
そこには、クリエイティブ会社のスタッフに混じっていかにもアーティストという風貌の男がいた。
どちらとも無く『初めまして』と挨拶をして目を合わせるとと次の瞬間
『ウソだろー!!』いい年をした男二人は抱き合っていた。
Yと僕は20才の頃、自他共に認める親友だったのだ。それもハンパじゃなく気が合う仲だった。
【類は友を呼ぶ】そうかー!やはりいい年になってもそこの社長が『似てるなぁー!』と言う意味も何となく解った。
しかも、同じようなフィールドにいるとは!
そこで、僕が二十歳の頃、何を考え何をしていたか?振り返ってみる。

 

その頃の僕は籍こそ大学に置いていたが、バイト三昧の日々を送ってた。
家は出ていて目黒の風呂無し・共同トイレの家賃1万何千円というアパートで一人暮らしをしていた。
まぁ、アパートに帰っても寝るだけなので、冷蔵庫はおろかTVさえも持ってなかった。
バイト先が日焼けサロンだったからシャワーはいつでも浴びられるし、日焼けマシーンで寝ると朝には真っ黒になっていた(笑)
親からの援助などあるわけでもなく、いわゆる貧乏学生だった。その日暮らしの!
当時の日焼けサロンは芸能人やモデルぐらいしか使わず、今の日サロとはかなり違うモノであった。
オーナーは水商売には長けていたが、若者相手の商売はずぶの素人同然だった。
そこで、僕はオーナーと交渉とした『売り上げを伸ばすから伸びた分だけ時給を上げてくれと』
半信半疑のオーナーは「まぁ、この若造にやらせてみるか」といった感じで任せてくれた。
僕は遊び仲間を集めて、ティッシュに、店の地図や割引券をつけたモノをハチ公前やスペイン坂で配らせた。
今では、当たり前のティッシュ配りも当時は斬新な手法だったのだ。
そして、美容院・アパレルショップ・ディスコ・カフェバー等とタイアップして今で言うフライヤーのようなモノを置かせて貰ったりした。
結果は、あっという間に出た。売り上げ前月比40倍という驚異的数字をはじき出した。
それからは、雑誌などで話題の店として取り上げられ、マシーンを何台入れてもお客さんに待たせるようになり、
となりの、オーナー所有のクラブも日焼けサロンと化した。
そこで、バーテンをやっていたのがYだった。Yをはじめクラブで働いてた女の子達も、
店が無くなるのだから違う店に移ると思ってたが、Yが代表して僕とオーナーに話に来た。
すでに、Yとは友達だったので、すんなり話は通った。
そして【日焼けサロン&BAR】となり、僕が昼の部の店長、Yが夜の部の店長となり、時代のスポットを作った。
お金も20才には不相応なほど貰っていたが、Yが言ったのか僕が言ったのか覚えてないが、二人とも安定が嫌いだったのだろう。
お互い、後継者を決めてその仕事は辞めた。将来、もっと面白い店を出そうと約束して。
そして、5年前の再会から、またYとは連絡を取っていない。
しかし、いつかどこかでまた合うだろう。Yとはお互いに暗黙の了解のような気がしている。
Yと僕は1日しか生まれた日が違わない。スタートも同じ永遠のライバルなのだ。
男同士の関係はそんなモノだ。そして二十歳の頃の夢や友は大事な財産なのだ!
成人式って便宜上の区切りで、その日を境に大人になるわけじゃないけど、
確実に君たちの時代は始まったのだ!

最後に僕から一言。
若者よ『失敗』を恐れるな!それを避けた時、すでに君は敗北者になっているのだ。
そして、若いときの『失敗』は決して無駄ではない!
それは君の経験として必ず生きてくる。
 
そして、後日談。1/21になんとYから連絡があった!このサイトでYのことを書いた事も知らないのに!
あれから、5年。色々なことがあったとの事!本人のプライバシーの関係もありここには書けないが、まさに『ジェット・コースター』のような人生だ!朝方までうちの近所のBARで話し込んだ。改めて同じような運命を違う場所で体験していたことに驚いた。
『お互い年をとったなぁー!』と言いながらも、目の輝きは二十歳の頃のそれと全然変わってない。持つべきモノは自他共に認める親友だ!!
       

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