【書き下ろしショートストーリー】

>>>ジーザスの再来

その男は裕福な家庭に生まれ、世のため人のために役立つ人間になる事を志し熱心に勉強に励んだ。

「世の中とは不公平な物だ。私のように恵まれている者もいれば 、明日の食べ物に困る人間もいる」
いつしか男は世の中の矛盾を感じるようになってゆく。

正義の心を持ったその男は異国に不法に侵略してくる大国と戦うことを誓い銃を取った。
やがて、大国はその男に屈し兵を撤退させた。
しかし、戦いで勝って得たものなど何もなかった。いや、そればかりか失うものの方が大きかった。
男もその周りの義勇兵や難民となった民衆も虚脱感だけが残った。

だが、男には休息の時など与えられなかった。今度は別の大国が彼の祖国に土足で踏み入って来て巧妙な手口で利潤を吸い上げるようになった。大国が発行した紙と資源を交換すると言う仕組みの不合理なものだったが、 その紙はいつの間にか人間の心や肉体を動かすものにすり替えられていた。
やがて紙の力は絶対だと信じ込む人間だらけになり、気が付くと人間は紙に支配されるようになったのである。

男は考えに考え抜いた末、自ら結論を導いた『今の世界は間違っている』と!
かなり心は痛んだが、全人類の警告のため無惨な報復をした。
ここまでしなければ気が付かないところまで人類は傲慢になっていたのだ。

その行動に大国や民衆は怒り狂い、その為に多くの罪なき者までが犠牲になった。
やがて、男は自ら責任を取るため裁きの場に出ることを決意した。
しかし、人々は復讐という正義の名の下に、男を報復したがれきの場所に十字架で貼り付けた。
男にとって最も屈辱的な刑になるはずだった。

だが、その姿に人々は誰もが自分の目を疑った。
そこで民衆が見た者はまさに『ジーザスの再来』そのものであった。
世界の人々は、その姿に今の自分たちの愚かな行動に気が付き反省をした。
2000年前も確かにそうだった。
そして、あれから2000年という月日が平和に生きるという、人類の本来の目的から離れてしまったことを。
神が再び忠告に現れたのだ!人間に悟りを開かせるために!

十字架に縛られた男の姿に人々は神のメッセージを受け取り、長い呪縛から解き放たれ目を覚ますことが出来た。
人間が本来持っている純粋な気持ちを取り戻す事が出来たのだ。
富める者が貧しい者を助けるようになった。
母なる地球に敬意を表すようになった。
世界に平和が帰ってきた。いや、初めて本当の平和を人類は手に入れることが出来たのである。
すべてを失う一歩手前で、神は再び人類を救ったのだ。

傲慢になりすぎた愚かな人間というなの動物を神は見放すことは無かった。

神の最後の忠告に人間は二度と愚かな行為をしなくなり、今まで培ってきた英知をすべての生物の共存共栄の、そしてその母体である地球を守るためにすべてのエネルギーを費やした。いつの間にか紙の魔法も溶けていった。

すべてを失う一歩手前でジーザスは再来したのだ!人類をまた一歩成長させるため。
人類はそれに見事に答えた。成熟した判断を下したことによって。




【この物語はフィクションです。登場する人物にモデルなどはありません。たぶん】

 

 

 

  

 
 
 
 
   
 
 
 

 

       

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'01 11月>>>

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