J-18:401k阻害要因

    経済環境、制度環境などから401(k)を促進する材料はあるものの、一方では401(k)の制度導入を困難にしている環境もあるこの点をまとめてみたい。

    1. 有効な運用手段が無い
     401(k)は従業員が自己責任のもとで、自分の資産を運用する事が原則であるが、現時点では有効な運用手段が無い事が一番の問題である。低金利により金利商品は全面的に運用成果は望めず、98年度は株式相場も不調、円相場の一時的な上昇で外貨建て資産も目減りし、98年度の企業年金の運用成果は史上初のマイナス運用になる見通しまで報道された。
     従業員にとってはこの様な環境下では積立不足の問題はあるものの、企業が支払を約束する確定給付型年金を選択するであろう。

    2.導入コストの問題
     401(k)の制度を維持するのに係るコストは企業、従業員の誰が払うかは別として次の三つになる、@制度の管理費用、A金融商品の販売手数料、B金融商品の運用手数料、そしてこれらのコストの支払原資は最終的に年金資産の運用益で賄う事になる。しかしながら現在のように運用成果の低迷が続けば、制度を続けるほど年金資産を減少してしまう結果になるので、税制優遇のメリットも踏まえても、ある一定水準まで運用成果が期待できなければ、401(k)の導入は進みにくいであろう。
     また、運用益は年金の資産規模に比例するので、小規模な企業、制度を開始して日が浅い企業などは運用益があまり多く期待できず、従って小規模企業での普及は当初は進みにくいのではないだろうか。

    3.従業員拠出の問題
     日本の企業年金は歴史的には退職一時金の積立手段から発展してきた物である、従いほとんどの企業年金は企業拠出が基本である(厚生年金部分も代行部分以外は企業拠出が原則である)日本で401(k)を導入する場合、従来の企業年金からの移行と、退職金一時金の積立制度からの移行が考えられるが、どちらも全額企業拠出が原則である。
     米国から制度だけを真似ると401(k)は従業員拠出とそれに見合った企業拠出を行う事になると想像されるが、仮にその制度にした場合、今まで拠出していなかった従業員の拠出は当初は抵抗感があるのでは無いだろうか?
     しかし、制度が定着していくに連れ、退職後資金準備は公的準備、企業準備、個人準備となり公的準備は公的年金から、企業準備は企業拠出分、個人準備は従業員拠出分となり、今までの個人年金市場が401(k)に吸収される可能性が大である。

    4.自己責任の考え方
     横並び意識の強い日本人としては、同僚より資産が目減りしているとか、同僚より勝っているとか気にしなくて良い事まで気にしてしまいそうである。このような気質の従業員が多い企業では401(k)プランの導入は難しいのではないか?
     401(k)プランの利用者は自己責任の考え方を原則とする。自己責任とは結果が他人と違っていても言い訳をせず、事実を受け入れる覚悟があるということだ。またその背景には強い自己所有の概念がある、自分の所有分であるからこそ、自分で管理するという考え方、また自分で決断したからこそ、どのような結果も受け入れるというリスクを取るという考え方が根底にある。
     しかしながら、日本では商慣行や法制上、自己責任が発揮されるケースが少ない。例えば証券会社の『とばし』などという、自己責任と相容れない慣行がつい最近まで横行していた、また金融機関が融資取引に際して取引先に連帯債務や連帯保証を要求するなどというリスクヘッジをしていることも、銀行が融資リスクをとらない結果として債務者の許容範囲を超える融資をする事になり、債権が不良化すれば金融機関、債務者、連帯保証人全員が苦しむ事になる。年金の受託者責任も厚生年金基金の理事が連帯で責任を負うこととなっており、どの理事の責任かを明確にするような立法趣旨ではない。

    以上のように現時点ではいくつかの導入阻害要因はあるものの、いずれ、経済環境の変化、社会慣行の変化などを通じて、この要因は減少してくのではないだろうか?

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