J-17:401k促進条件

    1990年代に入ってからの年金の積立不足問題をはじめとして、現在の代表的企業年金である確定給付型年金の問題から、日本でも401(k)タイプの年金(日本型401(k))の導入が検討されてきておりますが、現時点で401(k)制度を導入促進の要件と促進が難しい要件を整理してみたい。

    促進要件

    1.運用低下と積立不足
    確定給付型年金は給付額を従業員へ約束するものであり、現在のように低運用になってくると実質利率が常に予定利率以下になる現在の年金数理上の掛金ではどうしても積立不足が発生し、この不足金を埋めるために、年金掛金が上昇する事になります。
    企業経営者としては、掛金上昇は実質的な経営のコストアップになり、損益計算書を悪化する事になる。なお且つこのコストアップは企業経営の努力ではいかようにもカバーしきれないものであり、本業の業績が厳しい昨今、資金計画にも大きな影響が出てくる。401(k)は企業決算に反映されない。

    2.会計基準の変更
    2001年3月より導入される年金会計では、企業が従業員へ支払約束する年金給付額の現時点での時価による債務がその支払準備金である年金資産より少ない場合は、給付債務の積立不足という事で、企業会計上負債計上する必要が出てきます。この事により、上記の1.と、相乗して運用低下時は貸借対照表をも悪化してしまいます。
    さらに、この年金債務を計算する方法は、単位積立法という年金数理の手法ですから、貸借対照表を作成する上で、これらの適正な数値を算出する事が義務づけられるとここでも年金維持管理のコストが発生してきます。

    3.雇用の流動性
    米国の1980年代は相対的に国民経済の生産性、競争力が低下し、その対策に大幅なリストラを行い、各企業では適正水準まで雇用調整が行われた。その際に日本と比較されるのが米国は雇用の流動性が高い労働市場であるという表現がなされた。今の日本でも職場内に潜在的失業が多くいるとされ、雇用の流動化を促す圧力が存在する。日本において雇用の流動化を妨げている要因は二つあり、(1)退職金の累進性と(2)年金の通算不可(非ポータビリティー)である。
    401(k)は各自別に残高が把握されているので、ポータビリティーがある、ただし、制度全体でポータビリティーを持たせる場合は、IRAなどのように401(k)を採用していない企業へ転職する場合、または長期の失業をする場合でも年金資産を守る制度が必要である。

    ところで、雇用の流動性は確定給付型年金の財政を悪化する要因になる、特に次の条件が重なった場合、従業員が減少する事は母体企業の負担が一層過酷になる。

    @ 過去勤務債務の規模が大きく、償却が進まない。
    A 年金制度が成熟して、受給者が、現役従業員に対して相対的に多い
    B 受給権の確定した年金資産について、予定利率が実勢利回りより相当高く、今後とも利差損が発生し続ける場合。
    C 給付を終身年金で受けている場合

    4.少子化・老齢化
    平均寿命の伸びは厚生年金基金など終身年金を採用しているところでは、年金の財政を悪化する要因になります、この事は財政再計算を経由して掛金負担を高める事になります。
    また少子・老齢化は世代間扶養を前提としている公的年金の国民の負担を高め、世代間負担の不均衡と制度維持の限界を露呈しております。このことから、公的年金の財政方式を賦課型から積立型へ移行する提案もなされております。
    積立型の財政方式が採用されるならば、私的年金と同等の制度になるわけですから、公的年金の負担規模縮、私的年金の負担規模増大を通じて、401(k)の制度選択へと向かう可能性が出てきます。

    5.直接金融市場の活性化期待
    米国では加熱気味といわれるくらい、株式市場が活性化されているが、これは401(k)でミューチュアルファンドが普及し年金資金が資本市場へ流入しはじめた事がきっかけと言われている。そこで、金融界から、401(k)への熱い期待が高まっており、証券会社、銀行、生命保険会社などが提携して401(k)についてのシステム開発をしている。

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