前節での、新会計基準の労働債務の計算法方がいわゆる米国財務会計基準87号(FAS87)といわれるものであります。さらに、掛金の計算に用いられた考え方が単位積立法(単位積増法)といわれる年金数理の財政方式です。この財政方式は今後、新会計基準に基づく労働債務を計算する時点で、現行の財政方式にとって変わられる事になるといわれています。
留意すべき点は、年金財政方式での責任準備金の算出は将来法(将来の給付金と掛金の現在価値で算出)に基づいたのに対し、会計基準では、既に労働の役務を提供したという時点で債務が発生したとみなす、発生給付債務といういわば過去法に基づいている点であります。
将来法であれば、将来の掛金を大きく見る事で、責任準備金を見かけ上小さくする事が可能ですが、過去法では見かけ上の工作はできません。
また、FAS87では年金債務の評価は時価で行うという事になっています、この債務を決定するのに使われる割引率は、財政方式のような予定利率を使うのではなく、リスクゼロの債券、具体的には米国財務省証券の期間別利回りを参考に決定します。
債券利回りを参考にする意味は、債券の現在の取引価格の計算方法が、将来半年ごとに支払われる利札(クーポン)と元本の現在価値での合計という方法であり、年金債務が一定の年金給付を定期的に支払う債務の現在評価と同じ考え方に立脚するからです。
FAS87号の観点は(1)事業主の観点から、年金基金を見て「『年金の経済的価値』を厳密に捉え、これを事業主の債務として評価する」ことと、(2)従業員の観点から「『従業員の受給権保護』を行うためには、常時、資産の売却可能価格(公正市場価格)で年金債務の時価を賄えるようにしておかなくてはならない」、という両方の立場をもっている。
累積給付債務:ABO(Accumulated Benefit Obligation)とは現在の給与水準で行った場合の将来の給付債務である、企業会計上の積立不足はこのABOより年金資産が不足している場合に発生する。
予測給付債務:PBO(Projected Benefit Obligation)とは、将来の昇給を織り込んで、(従って給付自体も金額が増える事を意味します)給付債務を認識する評価法です、こちらの方が現実的であるという事で、FAS87ではPBOが年金債務の計算の基本となっております。
年金の積立不足問題は、FAS87の評価法を前提に考えると