検査数値 と 参考データ
 

検査数値 と 参考データ


 

肝機能検査
項 目 正 常 値 数値が増減すると 参 考 説 明
GOT 5〜40U ↑肝疾患、心筋梗塞 肝、筋細胞に存在する酵素。
GOT>GPT:心筋梗塞、アルコール性肝炎
GPT 5〜35U ↑肝疾患 特に肝細胞に多い
GPT>GOT:ウィルス性肝炎
LDH 50〜400U ↑急性肝炎、悪性貧血、
急性心筋梗塞、ガン
すべての組織に存在する酵素で、5種類の
分画があり、それにより鑑別診断
TTT
チモール
5U以下 ↑慢性肝炎以外に急性A
型肝炎、高脂血症など
TTTとZTTは共に慢性肝炎の診断に使い
ますが、肝臓が悪くないのに多少上回って
いる人がいます。特に女性に多いので
総合的に判断すべきです。
ZTT
クンケル
4〜12U ↑慢性肝炎、肝硬変、
慢性感染症
ALP
アルファフォイス
ファターゼ
KK法3〜12U
国際単位80〜240U
↑胆汁の通過障害(黄疸)
骨疾患、妊娠
ALPは肝、腎、骨、胎盤に存在し、胆汁に
排泄される。成長期の小児では高い。
LAP 30〜70U ↑胆汁の通過障害、妊娠 LAPも細胞に含まれている物資札で胆汁
に排泄される。
γ−GTP 60U以下 ↑アルコール性肝障害、
脂肪肝、慢性肝炎
アルコール性肝炎の早期発見に有効
胆汁の通過障害でも上がる。
総ビリルビン 0.2〜1.2mg/dl ↑黄疸 ビリルビンは老化赤血球が壊れて血色素
が変化したもので、胆汁の成分です。
赤血球が大量に壊れたり、胆汁の通過障
害があると血管に入って黄疸になります。
直接ビリルビン 0〜0.4mg/dl ↑胆石症、胆道ガン、
膵ガン
間接ビリルビン 0.2〜0.8mg/dl ↑急性肝炎、溶血性黄疸
ChE 0.8〜1.1 ↑脂肪肝、肥満
↓慢性肝炎、肝硬変
ChEは肝臓で作られる酵素で、低下は
肝障害に進んだことをあらわします。


肝機能の検査として、一般には、GOT、GPT、γGTPの3つの名前がよく知られています。
GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)とGPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)は、ともに肝細胞内に存在する酵素です。
通常、その血中濃度は低いレベルで安定していますが、何らかの原因で肝細胞が破壊されると、肝細胞内のGOTやGPTが血中に逸脱し血中濃度が上昇します。
つまりGOTとGPTは、肝細胞の破壊を反映します。
具体的には、肝炎、肝硬変、脂肪肝などでGOTとGPTが上昇します。
ただ、GOTとGPTは、肝臓だけに存在する酵素ではなく、筋組織などにも存在するため、筋疾患や心筋梗塞でも上昇します。
また、LDH(乳酸脱水素酵素)も、肝細胞の損傷により血中に逸脱してくる酵素ですが、こちらも肝障害への特異性は低く、筋疾患、心疾患、悪性腫瘍、血液疾患などでも上昇します。
GOT、GPT、LDHは、肝機能障害を含む幅広い疾患をスクリーニングする場合に有効です。
ちなみに最近では、GOTをAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、GPTをALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)と呼ぶことが多くなってなっていますが、ASTやALTは国際的に使用されている呼称(略称)です。
将来的には、我が国でもAST、ALTの呼称が一般的になると思われます。
γGTP(γグルタールトランスペプチダーゼ)も、GOTやGPTと同様、肝臓に存在する酵素ですが、こちらは肝障害や胆道の閉塞を原因とする胆汁排泄障害によって異常高値を示します。
γGTPは、肝で合成されて一部が胆道から胆汁中に排泄されるため、胆汁排泄が障害されるとγGTPが肝内に逆流し、血中に移行して血中濃度が上昇します。
具体的には、胆道系疾患、肝炎、肝硬変、肝細胞癌などによって胆汁排泄が障害された場合にγGTP値が上昇します。
γGTPが高値を示す場合は、その原因が肝・胆道の疾患にほぼ特定できます。
肝胆道系疾患のスクリーニング検査として、医療機関における一次検査や健康診断でしばしば使用されます。
γGTP以外に、胆汁うっ滞を反映する検査値としてアルカリホスファターゼ(ALP)があります。
ALPは全身に分布する酸素ですが、胆汁うっ滞が起きるとγGTPと同じメカニズムで、血中ALP濃度が上昇します。
ただALPは、骨形成が盛んな時期にもその血中濃度が増加するため、骨折の治療期や妊娠後期、骨悪性腫瘍などでもその値が上昇します。
そのほか、甲状腺機能亢進症や慢性腎不全など、様々な疾患で上昇するため、幅広いスクリーニングを目的に行われます。
肝機能障害が進行した場合に出現する症状の一つに黄疸(おうだん)があります。
黄疸とは、血中のビリルビン濃度が異常に上昇した状態で、その結果として、目の強膜や結膜、などにビリルビンが沈着し黄色化します。
一般に、血液検査でビリルビンの測定が行われる場合には、血中の総ビリルビン濃度と併せて、直接ビリルビン濃度と間接ビリルビン濃度も測定されます。
この三つの検査値を知ることにより、肝機能障害の有無や、黄疸の原因が推定できます。
間接ビリルビンは、アルブミンと結合して血中に存在するビリルビンのことです。
ビリルビンは、大半がヘモグロビンの代謝により産生され、アルブミンと結合した状態で血中を循環します。その後、ビリルビンは肝に取り込まれ、グロクロン酸抱合されて胆汁中へ排泄されます。
この抱合された後のビリルビンが、直接ビリルビンに相当します。
ビリルビン代謝に関連するどの過程が障害されても血中総ビリルビン濃度は上昇し得るが、「間接」と「直接」のどちらがより増加しているかを調べることで疾患を推測できます。
例えば、胆汁の排出障害が起きている場合には、肝での抱合後にビリルビンが逆流して血中に移行するので、直接ビリルビン濃度が上昇します。
一方、間接ビリルビンが上昇する場合は、なんらかの原因で大量に溶血(赤血球膜からヘモグロビンが溶出すること)が起き、肝臓での代謝(抱合)が追いつかないことを意味している可能性があります。
具体的には、直接ビリルビンの上昇により、肝硬変や急性肝炎などのよる肝機能障害や、胆道癌、膵頭部癌、胆石などによる胆道の閉塞、薬剤性肝炎や細胆管性肝炎などによる肝内胆汁うっ滞などが疑われます。
間接ビリルビンの上昇は、先述の溶血のほか、グルクロン酸抱合に関与する酵素の活性が低い先天性疾患でも起こります。一般に、新生児期にはこの酵素の活性が低く、間接ビリルビン上昇による黄癌が起きますが、通常は約2週間で自然消失します。

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