イラク自衛隊派遣問題(12/14、TV朝日サンデープロジェクトの討論を見ての感想)

今日の放送は、イラクへの自衛隊の派遣を閣議決定した後だったので、特に興味を持って見ました。期待が大きかっただけにやや失望したので、このメールを書いています。

まず、冒頭のイラク取材から帰国したばかりの青山ジャーナリストの報告は興味深かった。サダムタワーでさえあの程度の警護しかできていない、面をおさえるどころか点さえもろくに守れていない状況は、「非戦闘地域」という政府のいう概念にますます疑問をいだかせた。 しかし、さらに興味深かったのは、ワシントンの国防省の高官が土曜日に私服で取材に応じて語ったというメッセージです。つまり、

1、イラクの自衛隊はゲリラの攻撃に会い先のイタリア軍以上の犠牲が出る可能性がある。
2、自衛隊を守るアメリカ軍にもさらに被害が及ぶことへの懸念
3、自衛隊の実戦での弱さを北朝鮮を含む世界にさらす危険

以上の点から自衛隊の派遣に否定的だったこの人のコメントには重要な意味があるのではないでしょうか。 石破長官にこれに対するコメントを田原さんが求めなかったのは非常に残念でした。国民が関心があるのは、今、自衛隊を派遣することが本当にイラク市民の役に立つのか、日本の国益にかなっているのか、という点です。 2人の外交官の尊い犠牲の上に、さらに自衛隊員の犠牲を重ねるのではないか。 ゲリラに標的を与えイラク国内の混乱と戦闘を加速させるだけではないか、と懸念しているのです。 憲法に合致した判断かという議論ももちろん別のレベルで必要でしょうが、まず派遣した場合想定される事態をシミュレーションし、そのリスクとメリットを是々非々で徹底的に議論することが、今、政治家とメディアに求められているはずです。政府が説明していない、といわれるのはそのことです。

もう一つ、今日の番組での与野党代表の議論で感じたのですが、もう政党の立場にこだわって発言しても、説得力をもたない。 遠からず政界再編は起こるでしょうし、既にあやふやになっている政党の立場を超えた、政治家一人一人の意見を私は聞きたいと思います。 最後の方での、自民党の武見議員の発言は説得力があった。 自衛隊を派遣しなければならないとしても、まずリスクの少ない海空を出す、陸自は慎重に。 そして、陸自も出すときは、与野党を含めた国民の合意が必要だという考えは、政治家として責任感に基づく現実的な発言だと思います。 国連主体だとか、憲法の制約とか、そうした旧来の政党の立場の影に隠れて、自分の意見をいわないような政治家は説得力がありません。 イラク派遣問題は、自衛隊員を含む国民の命という、個人の最も根源的な権利に関わることです。 東京でテロでも起きたら、日本中は大騒ぎになるでしょう。 小泉政権など一瞬にふっとぶかもしれない。 でも、国民の不満を権力で押さえつけるような行動に出てくる輩がいたりしたら、日本は60年、70年安保で経験したような混沌とした状況に陥るかもしれない。 経済が悪くても、年金の給付が少し下がっても、すぐに命を取られることはありません。 先の総選挙では、イラク派遣問題が一番の焦点にならなかった。 これはおかしな事です。 私は、自衛隊の派遣には納得していませんし、このまま議論もなく派遣が進むことだけは絶対に避けて欲しい。

もう少し、自分の考えをいわせていただきますと、政府は、日米同盟の重要性と中東での石油に絡む国益を念仏のように繰り返していますが、イラクに自衛隊を出すことが本当に国益にかなっているのか。 日米関係を損なわずに日本がイラクの復興に協力する別の方法があるのではないかと思います。 イラクに自衛隊を出すことが唯一の協力とアメリカ政府が言っているとすれば、それはあまりに強引だ。日米の戦後50年以上の歴史で培われた協調関係はその程度のものだったのかと失望してしまいます。

アメリカに協力して自衛隊を出さないと、北朝鮮が万一日本に危害を加えそうになってもアメリカが助けてくれない、という意見も聞きます。 本当にそうなのでしょうか。高村元外相が番組で言ったように、核を搭載しているかもしれないノドン200発が日本に向けられていて、アメリカが守ってくれなかったらどうするのか、といわれます。 では、アメリカはこれまでの東アジアの安全保障戦略を変更してしまっていて、日本の有事に日本を守ってくれなくなったのでしょうか。 在日基地も縮小するのでしょうか。 もしそうなら、それこそ日本は、自衛権を含めて自国の安全保障をどうするのか、憲法改正を含め国民的な議論をしなければならない。 しかし、私を含めて国民はそうは思っていないでしょう。

今のブッシュ政権はあまりに視野が狭く独善的です。 確かに9.11は、アメリカに対してとてつもない衝撃だったでしょう。 しかし、テロリストの疑いがある所は、先制攻撃するというブッシュ政権の考えは、あまりに世界の人種や宗教、文化の多様性を無視した暴論です。 アメリカがそんな国になってしまうのは、世界にとって不幸です。 日本は、良識あるアメリカを目覚めさせ、自国と世界の安全保障の道を探って欲しい。 アメリカはあまりに強大で、日本はアメリカを敵視して生存することは不可能です。 政治家、メディア、そして国民の一人一人がしっかり考え、対立を恐れずに意見を述べていくことが、国民と日本国家の真の独立のために、必要になっているのではないでしょうか。

最近のアメリカのメディアも表立ってブッシュ政権を批判していない、と言われます。メディア王マードックの支配下に入ったCNNは、10年前に湾岸のときの鋭さが見られず、政府の情報操作に加担しているといわれるFOXTVが、視聴率ナンバーワンになっている。 NBCもGEの傘下にはいったらしい。私はかつて日本企業から派遣されアメリカに5年近く駐在し、湾岸戦争はアメリカで経験しました。 あの戦争は、確かに石油のためとは言われましたが、クウェート侵攻という明らかな主権侵害があり、国連の全会一致を受けた派兵だった。 ブッシュ父は戦争を避けるためのできるだけの努力はしていたと毎朝NYタイムズの記事を読みながら思いました。 ベトナム戦争報道やウオ−ターゲート事件の追及など、権力のチェック機能としてアメリカのジャーナリズムは、誇るべき成果を上げてきた歴史があります。 そのアメリカも、90年代の繁栄の裏では、金融第一の市場経済主義の行きすぎで、winner takes allというル−ルがはびこり、社会的な敗者や弱者が置き去りにされてきた。 アメリカの知人に聞くと、ブッシュ政権には反対するが、伝統的なリベラリスト、民主派は声を上げにくい状況だと言います。 アメリカにとっても来年の選挙で誰を大統領に選ぶかは、大変重要でしょう。私は、アメリカ在住中に、言論を含めた個人の自由、機会の平等に裏付けられた自由な競争、他人の尊重と家族の絆の重視といった価値観をアメリカ市民が尊重しており、それらを守るために多くの努力していることを知る機会がありました。 今でもその人たちを信じたいし、アメリカは必ず軌道修正してくると信じています。 そうなることが、世界にも必要です。来年1月のニューハンプシャーから、大統領選挙人獲得のための選挙運動が始まります。 ブッシュのイラク政策への民主党候補からの攻撃も激化し、反戦ムードが盛り上がることは多分間違いありません。

最後に、9日のイラク派遣の閣議決定を受けた小泉首相の記者会見では、海外メディアは参加していなかったのはなぜでしょうか。官邸付の番記者が中心だったのでしょうが、毎晩のニュースで活躍する各局のキャスターの方にこそ、その場で質問して欲しかった。 欧米には、経済なら経済、外交や安全保障ならその分野をライフワークにした記者がたくさんいます。 あの場での記者の質問は、経験と知識の不足のせいか、質問してもフォローがなく、私達が聞きたい内容が全く出てこない。 見ていて非常に不満でした。 国民の声を盾に、政府や政治家に対するもっと厳しい追及をお願いしたいと思います。

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