| 彼らは燃え尽くしたか?(日本代表のトルコ戦について) | |
| 日本サッカー代表チームの戦いが終わった今、妙にあっさりとWCが終わったように感じている人もいるだろうし、お隣の韓国のベスト4躍進に熱くなっている人もいるだろう。 18日午後3時半という観戦に適さない時間帯だったばかりでなく、社外のミーティングで後半最後の15分だけを冷たい雨音を聞きながら車中でのラジオ観戦となった自分たが、試合終了の無念のホイッスルを聞いて、急速に冷めていく自分に特に疑問も感じなかった。 ところが、夜10時半を過ぎて自宅に帰ってTVを見ると韓国とイタリアの死闘が続いていた。韓国の驚異的な粘りと執念。 最後に韓国の木拓(?)、アンジョンファンがヘディングシュートを決めた瞬間、ブラウン管の前で大きな感動のシーンが繰り広げられた。 作家の沢木耕太郎が、AERAに今回のWCの観戦記を連載している。 沢木氏はトルコ戦を観戦した後、冷たい雨の降り続く仙台の友人の料理屋でTVを見ていた。 「勝ったか。 しかし、私は横でOOO氏が目を潤ませて言葉も出ないほど感動しているのに驚いた。 私は感動よりも悔しさの方が先にあった。改めて日本が負けたことが残念だったのだ。」 「どうして残念だったのか、8強に残れなかったからか。 勝てる試合だったからか。 ...。 それもある。しかし、私にはそれ以上に、日本の選手たちが立ち上がれなくなるほどに戦い抜いたという満足感を抱けなかっただろうということが残念だったのだ。 彼らはトルコとの試合ですべてを出し尽くしただろうか。 もう一歩も動けないというほど動きぬいただろうか。」 自分もベスト8を決めた韓国についてはどちらかというと沢木氏の気持ちに近かった。 しかし、昨日、韓国がPK戦の末スペインを破り、ベスト4に進出する試合を見て、またそれを応援するサポータと韓国民の姿を見て言いようのない感動に捉えられ始めた。 これはもう、単に選手の技術とか身体能力の問題を超えている、と。 これは単にピッチ上の選手だけでなく、韓国国民全体の熱さの違いを感じさせる。 ソウルの市庁舎の前の何万人というサポーターの人だかりが、東京にはあっただろうか。 セネガル戦の延長戦からPKに進んだ死闘を観客席で見守る金大中大統領の視線には、急速に求心力を失った小泉総理の「にわか観戦」のパフォーマンスとは本質的に異なった真剣さと愛国心が感じられた。 失われた10年やデフレの中でもがき、小泉改革も頓挫しそうな中で、WCの日本代表の思いがけない予選リーグの活躍でにわかに盛り上がった感のある日本と、世界のトップリーグの仲間入りを果たすのだという韓国民の思いの深さの違いが、順々決勝の日本対トルコ戦と、韓国対イタリア戦の大きな違いとなって現れたのではないか。 この4年間、世界のリーグで戦って来た若い日本の選手は、中田英をはじめ、小野、稲本など一つの「個」として自立し、たくましい日本人の姿を見せてくれた。 Flat3を基本とするトルシエサッカーもひとつの到達点に達していたといえるだろう。 しかし、日本人には南米の選手のような自分で局面を切り開き、ゴールに突っ込んでいくような、強い意志と技術がまだ欠けているというのは、敗戦のあと、岡田武前監督や中田自身の弁でも指摘されている。 韓国の選手が日本人より自立した精神をもっているかは知らないが、今回の韓国チームには、単に代表チームとしての「チームワークの良し悪し」とか、「個人技と組織プレーの融合」だとかいった机上の議論を超えた力がある。 それは、人間が一つの目標に向かって一丸となって無心で立ち向かう時の、勇気と大胆さと判断力のすばらしさを見せている。 精神は単なる身体能力を超えた偉大な力を我々に付与する、と感じる。 沢木耕太郎は、韓国のこの「超」燃焼が日本になかったことが残念だったのだ。彼は友人と言葉少なに飲み続ける。 「雨は依然として降り続いていた。 「やませ、ですね。」と友人が言った。 三陸地方一体は、初夏に冷たい北東の風が吹いて冷たい雨や霧をもたらし、冷害の原因になる。 そうなのか、と私は思った。 やませの冷たさが日本の8強入りの夢を奪ったのか、と。 もしこの日が晴れていたら、そして初夏の暖かさにつつまれていたら、もしかしたらスタジアムには青い海ができ、ピッチの日本代表はもっと自由に戦い、もしかしたらもっと熱い試合が出来たかもしれないと。」 まさに作家沢木の面目躍如たる締めくくりで、おもわず「やられた」となるくだりだが、確かに日本の雨は冷たいのが定番だ。 夏の短い東北の風土を思いやり、あの日のスタジアムを思うとやはり冷たい雨、やませの雨だったように思う。 果たしてアフリカや南米の選手なら、もしくは今の韓国選手たちなら、あの雨を熱いシャワーのような歓喜の雨に変え得ただろうか。それは知る由もない。 2002.6.23 |
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