イラク戦争を回避せよ

どう考えても今回のアメリカの武力行使は正当な根拠があるとはいいがたい。 先週のブッシュ大統領のワシントンでの記者会見の模様をウェブキャストで見たが(http://www.whitehouse.gov/media/index.html)、「イラクの武装解除のためにアメリカが武力を使用することに対し世界的反対デモが起きているのはなぜか」、「戦争の世界経済に与える影響の甚大さはどうするのか」、「イラク攻撃がイスラム過激派をして更なるテロに走らせ反ってアメリカの安全は脅かされるのではないか」、こう言った質問がメディアから繰り返しなされるのに、ブッシュ大統領はただ、アメリカの安全のためだ、イラクは武装解除していない、と繰り返すのみで、質問に全く答えていない。 イラクと9.11同時テロの関連を示す証拠もなく、イラクに大量破壊兵器が残っている物証も示すこともなく、、49分の記者会見で納得いく回答は全くされていなかった。 論理的実証的な言論を欠き、時折「えー」と言葉に困るような様子で、最後は聖書を持ち出すような大統領を戴いて、世界世論に反して戦争をすることに多くのアメリカ国民も疑問、羞恥、怒りを感じているのは間違いない。大量破壊兵器を持ってイラクを侵略するのは、アメリカではないか、という気さえしてくる。

今日のTV朝日の「サンデープロジェクト」は、イラクの駐日臨時代理大使が出演し、いわば国際社会の被告人的立場におかれているイラクの心情、考え方を生の声で聞くことができた。 イラクの立場としては、「今は査察にはフルに協力している」、「米英が武力行使すればイラクの主権の侵害でありこれは侵略戦争である」、「誇り高きイラク軍隊は決して投降などせず最後まで国を守るために戦うであろう」、というのだ。また、アメリカの目的がフセインの打倒にある以上、国境から700キロ近い補給線が延びた中で、バクダッドを包囲しフセインを捕らえるという地上戦は、湾岸戦争時の半分の15万人程度の地上部隊では、容易ではない、という専門家の意見も聞かれた。 戦争が2ヶ月以上に渡れば、世界の経済は、原油価格の高騰などから大幅なマイナス成長となるという米国シンクタンクの予測もされている。 デフレに悩み株価が20年前の水準にまで下がった日本の経済へのインパクトも計りしれない。

アメリカが国連の安保理での武力行使容認の新決議の否決を押して、もしくは決議なしに開戦に踏み切る場合(残念ながら90%以上その公算が強いが)、国連の安保理システムは事実上崩壊したことになる。 第二次大戦後、戦勝国オンリーが常任理事国になり運営されてきたシステムが歪んだものであったにしても、二度の世界大戦の経験から、また核兵器という人類の存亡に関わる大量破壊兵器を持った国々の自制と秩序の維持のために国連は曲がりなりにも機能してきた。 ソ連の崩壊で唯一の超大国となったアメリカが、短慮の大統領の暴走で、世界平和維持の秩序と均衡を破られる影響は決して小さくない。 欧州とアメリカが代表する自由競争に基づく資本主義経済は、確かに飛躍的な技術革新を生み、グローバルな経済発展を導いて来た。 が、その反動として、富の偏在、アジアや中東などの異なった文明や文化をもち、民族も異なる地域、国家との対立や不均衡を生んでいる。 とにかく競争に勝ち、豊かになればいいという利己主義と物質主義が、経済格差の問題のみならず、温暖化などの環境問題を深刻にし、人類の持続的成長に大きなアラームを鳴らしていることを我々は知っている。

今回のイラク問題の背景に、言語や宗教の違う国家や民族に対する理解と寛容の欠如があり、安易な「善悪」の差別に向かうとアメリカ大統領の無知があるとすれば、あまりに不幸である。何百年間に渡り、隣国との戦争と平和を繰り返した歴史を知る、フランスやドイツがアメリカの行動に反対するのはもっともなことに思える。 アメリカが唯一の超大国ではあるが、その大国が暴走する危険に対し、チェック機能を働かす義務が国連はもとより、日本を含む世界の有力国にはあるはずだ。 日米安保条約によって地域の集団安全保障を得ている日本にはアメリカ追随しか選択肢がない、という意見には同意しかねる。日本がアメリカの「真に尊敬される友人」になるには、もっと言うべきことははっきり言わなければいけない。 また、日本の安全保障がアメリカなしでは成り立たないというのであれば、政府はそのことをはっきりと国民に説明し、そこから国民は日本国の安全保障という問題を真剣に考えなければいけない。 日本の世界第二の経済力を考えても、国連をはじめアジア圏における外交、真に国際社会で平和秩序維持に貢献するべきなのではないか。 

軍事評論家の田岡俊治の分析が正しいとすると、戦争がバグダットの市街戦にもつれる可能性は充分ある。 その場合、多くのイラク市民、兵士の生命が危険にされされる。国連の推計では50万人近い生命が失われるという数字もある。 なんとしても戦争を回避してもらいたいし、そのために一人一人が声をあげねばならない。(2003.3.16