シネマ大全 た行・ト

 ドレスデン、運命の日      2006年 ドイツ

1945年、冬のドレスデン。若い看護婦アンナは、負傷兵を救うために必死で働いていた。
多忙な毎日の中では、若い外科医との婚約でさえ心待ちにできないほどだった。
ある日、アンナは1人の兵士が病院に隠れているのを見つける。ドイツの脱走兵だろうと思い、そのまま匿う。後に彼が負傷したイギリス兵だと知るが、それでも彼を見捨てることはできなかった。
この勇ましく若いイギリス兵と恋に落ち始めていたからだ。
イギリス軍によるドレスデン空襲が始まり、アンナは命がけでロバートを守ろうとする。
大爆破は去るが、ドレスデンは廃墟と化す。しかし、彼らの辛い体験はまだ終わっていなかった…。


アンナとロバートが、他に何人もの負傷兵が眠る大部屋の病室で愛し合うシーンがある。
“まさか、犬じゃあるまいし。んな、アホな!”
と最初は思ったが、段々と、“いや、これは、もしかして有り得るかもしれない”と思えて来た。
そう。ここでは、死は、生=性の直ぐ隣にあるものなのだ。
そういう場面では、人は、モラルを越えて求め合うのではないか?

アンナと、その婚約者&ロバートを巡る三角関係の行方は?と思っていると、やがて始まったドレスデンへの強烈な空襲によって、全てがぶっ飛んでしまった。

大ヒット作『トンネル』で、一躍その名を轟かせたローランド・ズゾ・リヒター監督によるこの作品は、1000万ユーロという莫大な製作費をかけ、実際にドレスデンの市内及びその近郊で撮影された。

ラストは、S・スピルバーグ監督の『シンドラーのリスト』を思わせる、胸に迫るものがある。
戦乱の中でのラブ・ストーリーというよりは、空襲の本当の意味での恐怖とサバイバル、戦争の愚かさ、巨大な空しさを描いた感がある力作。
私も、この美しい地方都市・ドレスデンに行ってみたくなった。
そして、この、問題だらけだが、とりあえずは平和な国・現代のニッポンに住む幸せを噛みしめた。

(2007.4.22)