シネマ大全 さ行・ス

 スパイダーマン・3 2007年 アメリカ

彼は決意する、“自分”に挑め。ヒーローとしての活躍がようやく世間に認められ、ニューヨークの市民から愛される存在となったスパイダーマン。私生活では、MJとの結婚も秒読みに入り、ピーター・パーカーの人生は絶好調だった。しかし、警察からもたらされたある衝撃的な真実が、ピーターの心をかき乱す。最愛の伯父・ベンを殺した真犯人が別に存在し、その男=フリント・マルコが刑務所を脱獄し、現在逃亡中であると。激しい怒りに燃え、復讐心を募らせるピーター。
そんなピーターに、ある謎の黒い液状生命体がとり憑く。その黒い液状生命体は、スパイダーマンの衣装を黒く染め、パワーもスピードも今までと比べられないほど強力な“ブラック・スパイダーマン”へと変化させてしまい、同時に、ピーターの心まで黒く変化させて行く…。


スパイダーマンを演じるトビー・マグワイアは、ちょっとオッサン顔になり、MJ役のキルスティン・ダンストは、以前の芋ネエチャンから洗練され、美しくなった。
この2人の顔が、段々と似て来たのが面白い。
フリーのカメラマンであるピーターの“取材合戦”と、スパイダーマンが悪漢と戦う“空中戦”の数々は、かなり楽しませてくれる。


突然、大きな音がして、敵が襲って来る“脅し”は、監督が自らプロデュースした映画「THE JUON」(清水祟監督)の影響を明らかに受けているし、今回のヒールである“サンドマン”が巨大化したシーンは、ジャミラが大魔人になったみたいだ。
スパイダーマンが、途中で自暴自棄になり、グレてしまう所は、映画「スーパーマン3〜電子の要塞」にそっくりだが、また善人に戻る“お約束”もご愛嬌。


神ならぬ、内気なピーターという青年の成長物語でもある「スパイダーマン」シリーズだが、今回が一番楽しめた。観客とは、実に身勝手なもので、パート1が当ると、パート2には、前作の3倍の面白さを、パート3には、第一作の5倍の面白さを求めるものなのだ。

日本的要素を多く取り入れながら、“芸達者な”サム・ライミ監督は、充分に期待に応えてくれた。
しかし、所々に、映画の“踊り場”みたいなシーンがあったら、もっと良かった。
パワフルなアメコミが原作でも、観客は、本来のピーターと同じく生身の人間だからだ。


2007.06.14)